あがり症、対人恐怖(不安障害 • 社交不安障害)

緊張しますよね?
人前に出た時、動悸や赤面、手や声の震えといった状態になり、うまく話せなくなると感じている人もいると思います。人前に立って自己紹介をしたり発表したりすることが苦手で、避けてしまうことはありませんか。あがり症、赤面症という言葉がよく使われ、性格の問題であると思われていることも多いですが、それは不安障害<社交不安障害>という病かもしれません。社交不安障害は、対人恐怖、社会恐怖とも呼ばれています。人前で注目を浴びるかもしれない状況、恥ずかしい思いをするかもしれない自分の行動、自分が低く評価されることに対して強い恐怖を感じるのが特徴です。

 

世界保健機関の国際疾病分類(ICD-10*)では、
1.比較的少人数の集団内でほかの人から注視される恐れを中核とする、
2.社交場面を回避するようになる、
3.ある場面に限定されている場合と、家族以外のほとんどすべての社会状況の場合もある、
4.自分が低く評価され批判されることに対する恐怖と関連している、
5.赤面、手の震え、吐き気やむかつき、尿意頻回の症状が出ることもある、
6.赤面等の症状のせいで不安になっていると思い込んでいる、
7.パニック発作の症状に発展することや、ひきこもり社会から完全に孤立することもある

  

    といった診断のガイドラインが示されています。

 

社交場面の回避とは、人前に出る場面や状況を避けることをいいます。例えば、授業では当てられることがないよう隅の席を選び気配を消すように心がけている、職場でのスピーチが当たらないよう違う仕事で席を外すといった工夫をしている等。知らない人に会う状況や飲食している姿を人に見られる可能性がある場面も社交場面に入ります。6.赤面症等の症状のせいで不安になっていると思い込んでいる というのは、原因と結果を逆に捉えていることを指します。動悸や赤面、手の震えなどの症状は、不安や緊張を感じた時のごく一般的な反応です。不安や緊張を感じる場面は誰にでもあり、それらの症状が出るのもおかしなことではありません。しかし、不安から症状が出ているのではなく、症状があるから極度の不安になると確信している場合、「赤面さえしなければ不安にならない」「緊張(失敗)してはならない」と思い込んでしまい、より症状を呈しやすく悪化させやすくしてしまいます。

 

DSM-5(精神障害の診断•統計マニュアル第5版)の診断基準では、「社交状況のほとんどに常に恐怖や不安があるため、たまにしかならない人や場面が限定されている人は診断基準に当てはまらない」とされています。恐れている他者からの否定的な評価や判断については、現実より過大に評価してしまう傾向があるため、臨床家等の専門家の判断が適しています。社交状況を回避している場合と、強い不安や恐怖を感じながら耐え忍んでいる場合もあります。少なくとも6か月間続いており、恐怖•不安•回避によって、その人の普段の日常生活、職業的または学業的な機能、社会的な活動や対人関係が意味のある程度阻害されていることが診断の基準となります。

 

不安障害は、かつては性格や心理的要因が原因とされてきましたが、近年の研究で脳内神経伝達物質系が関係する脳機能異常があるという説が有力になってきています。十分には解明されていませんが、生物学的(身体的)、心理的、社会的要因がいろいろな度合いで関わっています。治療も薬物治療や認知行動療法を中心とした心理療法が基本となっています。不安障害に特化した統計データはありませんが、統合失調症やうつ等気分障害に次いで受診の多い疾患です。集団主義的な意義が強い社会や文化では、社交不安を訴える人が多くなる傾向があり、有病率自体は低く出る傾向がありますが、日本では社交不安を抱えている方は多いと思います。

 

ICD-11も発表、承認されており、日本でも導入へ準備が進められています。

 

【参考文献】
DSM-5(精神障害の診断•統計マニュアル第5版)
厚生労働省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html
厚生労働省こころもメンテしよう https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html
井豫雅臣著 『不安の病』 星和書店 2009