MENU

発達が気になる子を保護者に伝える共有方法と第三者支援の使い方

発達が気になる子について、保護者にどう伝えるか。保育園や幼稚園、こども園の現場では、担任も主任も園長も、この場面で言葉を選びあぐねることがあります。保護者を傷つけたくない、不信感を持たれたくないという思いがあるほど、何をどこまで伝えてよいのか迷いやすくなります。

保育士や園は、子どもを診断する立場ではありません。だからこそ、断定はできないけれど園で気になっていることをどう言葉にするか、という難しさがあります。

伝える目的は、保護者を説得することではありません。園で見えている事実を、子どもの育ちを一緒に考えるための材料として共有することです。保育士経験者55名への自社アンケート(うち引用許諾53名)でも、保護者対応で困った経験があるという回答は全員にのぼり、自由記述には伝え方に迷う声も見られました。

発達が気になる子について、保護者への伝え方を変えるか、第三者である心理士を介在させるか。園長・主任・運営者がその判断を進められるよう、伝える前に園内で整理しておきたいことと、第三者を介在させる場面の考え方を整理します。

この記事は以下の専門家によって執筆・監修されています。

執筆・編集責任:吉田克彦(合同会社ぜんと代表 公認心理師、精神保健福祉士)

  • 不登校の家族支援25年以上、3000家庭以上の支援実績
  • スクールカウンセラー歴20年以上。小学校、中学校、高校(全日制、定時制、通信制)全ての校種で勤務経験あり。
    →詳しいプロフィールはこちら

医学監修:友常祐介(社会医学・産業衛生指導医、労働衛生コンサルタント、医学博士)

目次

伝える目的は、説得ではなく園で見えている事実の共有

保護者に伝える目的は、発達の課題を認めさせることでも、療育を受けさせることでもありません。園で見えている子どもの様子を共有し、家庭と園で同じ情報をもとに育ちを考えられるようにすることです。出発点をここに置くと、言葉選びの方向が定まりやすくなります。

診断的に言い切らず、園で見えている様子を共有する

園は診断をする立場ではないため、「発達障害ではないか」といった診断的な言い切りは避けます。代わりに、園で実際に見えている様子を具体的に共有します。同じことを伝える場合でも、言い切る方向と事実を共有する方向では、保護者の受け止め方に違いが出やすくなります。

避けたい方向共有したい方向
診断名のように言い切る園で見えている様子を共有する
保護者の対応を責める園での困りごとを一緒に考える
すぐに療育を迫る必要に応じて相談先を一緒に確認する

事実を共有する姿勢に立つと、園の心配を一方的に伝えるのではなく、家庭での様子も含めて一緒に考える対話につなげやすくなります。

保護者を責めず、子どもの育ちを一緒に考える入口にする

伝える場面は、保護者の関わり方を問う場ではありません。保護者の多くは、わが子のことを誰よりも気にかけています。園からの共有が「対応が足りない」という指摘に聞こえると、関係がこわばってしまいます。

園で見えている様子を、子どもの育ちを一緒に考える入口として共有する。この姿勢を園内で共有しておくと、担任が一人で言葉を抱え込まずにすみます。

保護者に伝える目的は、園の見方を認めさせることではありません。園で見えている事実を共有し、家庭での様子も聞きながら、子どもの育ちを同じ情報の上で一緒に整理することです。

伝える前に、園で見えている様子を整理しておくと共有しやすい

保護者に伝える前に、園で見えている様子を整理しておくと、共有が落ち着いて進みます。担任の印象だけで話すのではなく、いつ・どんな場面で・どんな関わりで変化があるかを整理しておくと、保護者と同じ事実を見ながら話せます。

観察事実を土台にすると、感情的な対立を避けやすい

整理された事実を土台にすると、園の心配と保護者の受け止めが食い違ったときも、立ち戻れる共通の情報があります。主観のぶつかり合いになりにくく、感情的な対立を避ける助けになります。

整理すること
いつ起きているか活動の切り替え、集団場面など
どんな場面で起きているか音、人数、環境の変化など
どんな関わりで落ち着きやすいか声かけ、距離、見通しの伝え方など
家庭と共有したいこと園で見えている様子、困りごと、試している関わり

こうした整理は、保護者に伝えるためだけでなく、園内で担任・主任・園長が同じ情報を持つためにも役立ちます。

自由記述からは、発達や行動が気になる子について、保護者を傷つけずにどう伝えるか迷う声が読み取れます。だからこそ、担任の印象だけでなく、園で見えている事実を整理して共有する準備が重要です。

行動観察で整理したい場合は、記事2で確認する

園内の整理を、より客観的な視点で進めたい場合は、外部心理士の行動観察を使う方法があります。行動観察で何を整理できるのか、どの場面で検討するとよいのかは、それだけで一つのテーマになるため、別の記事で扱っています。

気になる子の行動観察で何を整理できるかを確認する

受け止めてもらえないときは、第三者である心理士が関わる選択肢がある

園が丁寧に共有しても、保護者がすぐには受け止められないことがあります。そうしたとき、園だけで抱え込まず、第三者である心理士に相談しながら整理する選択肢があります。保育士経験者55名への自社アンケート(うち引用許諾53名)でも、気になる子の保護者カウンセリングを心理士に頼みたいと答えた人は36名いました。保護者への関わりは、現場で意識されている相談領域です。

心理士は保護者を説得する役ではなく、整理と対話を支える役

ここで前提を明記します。心理士は診断を行いません。

心理士の役割は、園で見えている子どもの様子や保護者とのやりとりを整理し、保護者にどう共有するかを一緒に考えることです。医療・療育・行政との連携が必要な場合は、適切な相談先につなぐ前提で考えます。

心理士は、保護者を説得したり、園の代わりに発達の課題を伝えたりする役ではありません。園で見えていることを整理し、園と保護者が同じ情報をもとに話しやすくするための第三者です。園が保護者と向き合う関係そのものは、園が担う前提に変わりはありません。

保護者カウンセリングの範囲はサービス内容で確認する

心理士が保護者にどこまで関われるか、どのような形で相談できるかは、サービスによって範囲が異なります。

保護者カウンセリング、面談への関与、園との情報共有の範囲は、サービス内容によって異なります。導入前には、心理士が直接関わる範囲と、園が主体として対応する範囲を確認しておく必要があります。

保護者への関わりについて具体的にどこまで相談できるかは、サービス内容・料金のページで確認してください。

心理士は、保護者を説得するための存在ではありません。園で見えていることを整理し、保護者と同じ情報をもとに話しやすくするために、対話の土台づくりを支える役割です。

保護者への伝え方や第三者の関わり方に迷う場合は、対応範囲を確認したうえで相談できます。

保護者への伝え方を相談する

第三者を入れる場面と、まず園で関係を作る場面がある

第三者である心理士の介在は、すべての保護者対応に必要なわけではありません。第三者を入れて整理したい場面と、まず園内で共有を続けながら関係を作りたい場面があります。自園の状況がどちらに近いかを当てはめて考えると、判断が進みます。

第三者である心理士の介在を検討したい場面

次のような状況では、第三者を入れて整理する価値があります。

第三者である心理士の介在を検討したい場面まず園内で共有を続けたい場面
担任や主任だけでは伝え方の整理が難しく、対応が止まっている園と保護者の関係ができていて、園内の共有で前に進めている
園と保護者の受け止めにずれがあり、同じ情報で話しにくい伝えたいことが整理でき、園から共有する準備ができている
園だけで抱え込み、担任の負担が大きくなっているまずは園で観察事実を整理する段階にある

伝え方の整理が園内だけでは難しかったり、受け止めのずれが続いたりする場合は、第三者の関わりを検討する場面に近いといえます。

まず園内で共有を続けたい場面

一方で、園と保護者の関係ができていて、園内の共有で前に進めている場合は、まず園で観察事実を整理し、共有を続ける選択も現実的です。第三者を入れることが、保護者との関係を切るためのものにならないよう、関係を保ちながら整理する目的で考えることが大切です。

なお、保護者対応そのものを担任個人ではなく園体制で受けたい場合は、その考え方を別の記事で扱っています。

難しい保護者対応を園体制で受ける方法を確認する

第三者を入れる目的は、保護者との関係を切ることではありません。園と保護者が関係を保ちながら、事実や困りごとを整理し、子どもの育ちを一緒に考えやすくするために活用します。

第三者を入れるか迷う場合は、園が保護者対応の何に困っているのかを整理するところから相談できます。

園の課題を相談する

まとめ:保護者への共有は、診断ではなく事実を一緒に整理することから始める

発達が気になる子について保護者に伝えることは、診断を伝えることでも、説得することでもありません。園で見えている事実を、子どもの育ちを一緒に考えるための材料として共有することから始まります。保育士経験者55名への自社アンケート(うち引用許諾53名)が示すとおり、保護者対応で困った経験は多くの現場にあり、伝え方の葛藤は園に共通する課題です。

伝える前に園で見えている様子を整理しておくと、保護者と同じ事実を見ながら落ち着いて話せます。それでも受け止めてもらえないときは、園だけで抱え込まず、第三者である心理士に相談しながら整理する選択肢があります。心理士は保護者を説得する役ではなく、園と保護者が同じ情報をもとに話しやすくするための第三者です。

園として保護者への共有方法を見直すか、第三者の介在を検討するか。迷う場合は、まず園が何に困っているのかを整理し、保護者への伝え方について相談できるかを確認するところから始められます。心理士に何を頼めるかの全体像を確認したい場合は、導入判断ハブの記事もあわせて確認できます。

関連記事

保育施設に心理士を導入する判断基準を確認する

目次