「子どもが学校に行きたくないと言い出した」 「朝になると体調不良を訴えて起きられない」 「このまま学校に行けなくなったらどうしよう」
お子さんの不登校に直面すると、保護者の方は「なぜ?」「どうすれば?」と戸惑い、強い不安を感じます。
しかし、不登校は決して珍しいことではありません。文部科学省の調査によると、小中学生の不登校は約34万人、高校生を含めると約40万人を超えています。今や、どの家庭にも起こりうることなのです。
この記事では、25年以上にわたり不登校の家族支援に携わってきた公認心理師が、不登校について、定義から原因、具体的な対応、相談先、進路まで徹底解説します。
この記事でお伝えしたいこと
お子さんの年齢別の詳細は以下の記事をご覧ください。
▶【小学校低学年の不登校】原因・対応・よくある疑問を専門家が徹底解説
▶【小学校高学年の不登校】原因・対応・進路準備を専門家が徹底解説
▶【中学生】学校に行きたくない!原因がわからない理由と解決策
▶【高校生】「学校に行きたくないけど、特に理由がない」要因と対応策を解説
執筆・編集責任:吉田克彦(合同会社ぜんと代表 公認心理師、精神保健福祉士)
- 不登校の家族支援25年以上、3000家庭以上の支援実績
- スクールカウンセラー歴20年以上。小学校、中学校、高校(全日制、定時制、通信制)全ての校種で勤務経験あり。
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不登校とは
不登校の定義
不登校とは、どのような状態を指すのでしょうか。文部科学省は、不登校を以下のように定義しています。
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した児童生徒(病気や経済的理由によるものを除く)
この「30日」という基準は、困っている子どもや家庭を早い段階で適切な支援につなげるために設けられたものです。
ただし、30日はあくまで統計上の目安です。お子さんが登校をつらそうにしていたり、保護者の方が対応に困っている場合は、日数に関係なく早めに相談することをおすすめします。
不登校と似た言葉との違い
不登校に似た言葉がいくつかありますが、それぞれ意味が異なります。
不登校と登校拒否
「登校拒否」は、かつて不登校を表すために使われていた言葉です。しかし、「拒否」という言葉には「本人の意思で行かない」というニュアンスがあり、実態に合わないことから、現在は「不登校」という言葉が使われています。
不登校の子どもの多くは、「行きたくても行けない」という状態です。自分の意思で拒否しているわけではありません。
不登校と引きこもり
引きこもりは、学校だけでなく、仕事や社会参加を避け、6か月以上にわたって家庭にとどまり続けている状態を指します。
不登校の子どもがそのまま引きこもりになるケースはありますが、不登校と引きこもりはイコールではありません。不登校でも、家族との会話があったり、趣味の活動をしていたり、外出したりしている子どもも多くいます。
不登校と引きこもりの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
不登校と長期欠席
長期欠席は、年間30日以上欠席した児童生徒のことを指し、不登校よりも広い概念です。長期欠席には、病気による欠席、経済的理由による欠席、不登校などが含まれます。
不登校は、長期欠席のうち「病気や経済的理由以外」で欠席している状態です。
不登校の定義について、以下の記事でくわしく解説しています。
不登校の現状
不登校の児童生徒数は過去最多を更新
不登校の児童生徒数は、年々増加しています。

文部科学省の調査によると、小中学生の不登校児童生徒数は約34万人で、過去最多を更新しています。高校生を含めると40万人を超えます。
この10年間で、不登校の児童生徒数は約2倍に増加しました。子どもの数は減っているにもかかわらず、不登校は増え続けているのです。
学齢別の不登校の特徴
不登校は、学齢によって発生率や特徴が異なります。

小学生よりも中学生、中学生よりも高校生の方が、不登校の発生率は高くなります。特に中学1年生で急増する傾向があり、これは「中1ギャップ」と呼ばれる環境の変化が影響していると考えられています。
「うちの子だけ」ではない
「まさか、うちの子が不登校になるなんて」
多くの保護者の方が、そう感じています。しかし、データが示す通り、不登校は誰にでも起こりうることです。
中学生の場合、約17人に1人が不登校です。これは、1クラスに2人は不登校の生徒がいる計算になります。
不登校になることは「甘え」ではありません。「育て方が悪かった」わけでもありません。さまざまな要因が重なり合って起こるものであり、どの家庭にも起こりうることなのです。
【学齢別】不登校の原因と対応
お子さんの学齢によって、不登校の原因や適切な対応は異なります。詳しくは、以下の学齢別記事をご覧ください。
小学校低学年(1〜3年生)の不登校
小学校低学年の不登校で最も多い原因は「母子分離不安」です。お母さん(主な養育者)と離れることに強い不安を感じ、学校に行けなくなります。この年齢の子どもは、自分の気持ちをうまく言葉にできないため、「どうして行きたくないの?」と聞いても答えられないことがほとんどです。
小学校高学年(4〜6年生)の不登校
小学校高学年は「思春期の入り口」と呼ばれる時期です。学習内容の難化、友人関係の複雑化、自分と他者を比較して劣等感を抱くなど、さまざまなストレス要因にさらされます。中学進学を見据えた対応も必要になってきます。
中学生の不登校
中学生の不登校は、小中高の中で最も多くなっています。中学校への進学で環境が大きく変わる「中1ギャップ」、複雑化する人間関係、高校受験へのプレッシャーなど、中学生特有のストレス要因があります。
高校生の不登校
高校は義務教育ではないため、出席日数や単位が足りなければ留年や退学につながります。一方で、通信制高校への転入や高卒認定試験など、小中学生にはない選択肢もあります。今の学校に戻ることだけが正解ではありません。
不登校の原因
最も多い原因は「無気力・不安」
不登校の原因として最も多く挙げられるのが、「無気力」「不安」といった、本人にも明確に説明できない気持ちです。
文部科学省の調査では、不登校の児童生徒の約半数がこれを主な要因として挙げています。「なぜ学校に行きたくないの?」と聞いても、「わからない」「なんとなく」としか答えられないのは、本人にも理由がわからないからです。
これは怠けているのではありません。心がSOSを出している状態だと理解してください。
原因は一つではない
不登校の原因は、一つだけではないことがほとんどです。
「いじめがあったから不登校になった」「先生が嫌いだから不登校になった」というように、原因が一つに特定できるケースは実は少数派です。多くの場合、複数の小さなストレスが積み重なり、限界を超えたときに学校に行けなくなります。
本人に聞いても「これが原因」と答えられないのは、複数の要因が絡み合っているからです。原因探しにこだわりすぎると、かえって回復が遅れることがあります。
主な原因の分類
不登校の原因は、大きく以下の3つに分類できます。
学校生活に関する要因
学業のつまずき、友人関係のトラブル、いじめ、教師との関係、部活動での問題、集団行動への苦手さなどが含まれます。
家庭環境に関する要因
家庭内の不和、両親の離婚、転居、きょうだいの誕生、経済的な問題、親の過干渉や過保護などが含まれます。
本人の心身に関する要因
起立性調節障害などの身体疾患、発達特性(ASD・ADHD・LDなど)、うつ病や不安障害などの精神疾患、繊細すぎる特性(HSC)などが含まれます。
不登校の原因について、以下の記事でくわしく解説しています。
「理由がわからない」不登校
「理由を聞いても『わからない』としか言わない」
これは、保護者の方からよく聞く悩みです。しかし、「わからない」という答えは嘘ではありません。本当にわからないのです。
特に年齢が低い子どもは、自分の気持ちを言葉で表現する力がまだ発達途上です。また、複数の要因が絡み合っている場合、本人にも「これが原因」と特定することはできません。
「理由がわからない」不登校への対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
不登校の背景にある心身の問題
不登校の背景に、心身の問題が隠れていることがあります。
起立性調節障害
朝起きられない、立ちくらみがする、頭痛や倦怠感が続く——こうした症状がある場合、起立性調節障害(OD)の可能性があります。
起立性調節障害は自律神経の機能不全によって起こる病気で、思春期に多く見られます。本人は学校に行きたい気持ちがあっても、体が言うことを聞かない状態です。「怠けている」「甘えている」と誤解されやすいため、正しい理解と対応が必要です。
発達特性(ASD・ADHD・LD)
ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)などの発達特性がある子どもは、学校生活で困難を感じやすい傾向があります。
集団行動が苦手、じっと座っていられない、特定の学習につまずく、感覚過敏で教室の環境がつらいなど、困難の現れ方はさまざまです。
発達特性は、低学年のうちは見過ごされ、学年が上がるにつれて困難さが目立つようになることがあります。
▶【不登校と発達障害】ASD(自閉スペクトラム症)について特徴や改善法などを徹底解説
▶【スクールカウンセラーが解説】ADHD(注意欠陥多動症)と不登校の関係
▶ 不登校と学習障害(LD)の関係|見分け方・特徴・対応策をスクールカウンセラーが解説
HSC(繊細すぎる特性)
HSC(Highly Sensitive Child)は、刺激に対して敏感に反応する特性です。人口の15〜20%が該当すると言われています。
教室の騒がしさ、人の感情の変化、光や音などに敏感に反応し、学校にいるだけで疲れてしまいます。病気や障害ではなく、生まれ持った気質です。
うつ病・不安障害
子どもでも、うつ病や不安障害を発症することがあります。
「何をしても楽しくない」「眠れない」「食欲がない」「死にたいと思う」といった症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
▶ 不登校と子どものうつ病の関係と対応を正しく理解しよう:公認心理師が解説【医師監修】
▶【不登校の背景】不安障害の症状・原因・対策を解説(医師監修)
不登校のサイン
お子さんが不登校になりかけているとき、いくつかのサインを見せることがあります。早めに気づいて対応することが大切です。
体の症状(腹痛・頭痛・発熱など)
「お腹が痛い」「頭が痛い」「気持ち悪い」
朝になると体の不調を訴える場合、それは心のSOSかもしれません。学校に行かなくてよい日(休日や長期休み)には症状が出ないことが多いのが特徴です。
ただし、本当に体の病気が隠れている可能性もあります。まずは小児科を受診し、体に問題がないか確認しましょう。
行動の変化(イライラ・泣く・甘える)
些細なことでイライラする、急に泣き出す、以前より甘えてくる、赤ちゃん返りのような行動が見られる——。これらは、子どもが何らかのストレスを抱えているサインです。
生活リズムの乱れ(食欲・睡眠)
食欲がなくなる、好きなものも食べない、夜なかなか眠れない、朝起きられない、夜中に目が覚める——。生活リズムの乱れは、心身の不調のサインです。
学校の話題を避ける
学校のことを聞くと嫌がる、友達の話をしなくなる、学校の準備をしたがらない——。学校に関する話題を避けるようになったら、何か困っていることがあるのかもしれません。
不登校になったときに保護者がまずやるべきこと
お子さんが「学校に行きたくない」と言い始めたとき、保護者の方は戸惑い、焦りを感じるでしょう。しかし、この時期の対応が、その後の回復に大きく影響します。
子どもの安心・安全を最優先にする
不登校の初期に最も大切なのは、子どもが「安心・安全」だと感じられる環境を作ることです。
学校に行けないことで、子どもは「自分はダメだ」「親に申し訳ない」と自分を責めています。まずは、その苦しさを受け止め、「あなたは大切な存在だ」と伝えてください。
「学校に行かなくても大丈夫」と伝える
「学校に行かなくても、あなたのことが大好きだよ」 「今は休んでいいんだよ」
こうした言葉は、子どもの心を軽くします。「学校に行くこと」よりも「子どもの心と体の健康」を優先する姿勢を見せれば、子どもは安心できます。
原因を無理に聞き出そうとしない
「なぜ学校に行きたくないの?」「何があったの?」と繰り返し聞くことは避けましょう。
子ども自身も理由がわからないことが多いですし、理由があっても言葉にできないことがあります。問い詰められると、子どもは追い詰められた気持ちになり、かえって心を閉ざしてしまいます。
家庭を安心できる居場所にする
学校に行けなくなった子どもにとって、家庭が唯一の居場所になります。
家の中では、学校のことを話題にしすぎず、子どもがリラックスできる雰囲気を作りましょう。一緒にテレビを見たり、ゲームをしたり、何気ない時間を過ごすことが、子どもの心の回復につながります。
不登校の初期対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
保護者がやってはいけないNG対応
良かれと思ってした対応が、逆効果になることがあります。避けたい対応を知っておきましょう。
無理に登校させようとする
「とりあえず行ってみよう」「行けば何とかなる」と無理に登校させることは、子どもをさらに追い詰めます。
一時的に登校できても、根本的な問題が解決しなければ、再び行けなくなることがほとんどです。無理な登校刺激は、子どもの心に深い傷を残すことがあります。
原因を問い詰める
「何があったの?」「誰かに何かされたの?」と繰り返し聞くことは、子どもにとって尋問のように感じられます。
子ども自身も理由がはっきりわからないことが多く、「答えられない自分はダメだ」とさらに自分を責めてしまいます。
他の子どもやきょうだいと比較する
「〇〇ちゃんは毎日学校に行っているのに」「お兄ちゃんは大丈夫だったのに」といった比較は、子どもの自己肯定感を大きく傷つけます。
きょうだい間の比較は特に避けましょう。「自分は劣っている」という思いが、回復を遅らせる原因になります。
「甘えている」「怠けている」と決めつける
「本当は行けるのに甘えているだけ」「怠けているだけでしょ」という言葉は、子どもの心を深く傷つけます。
不登校の子どもは、「行きたいのに行けない」という苦しみを抱えています。怠けではなく、心や体がSOSを出している状態だと理解してください。
ゲームやスマホを無理やり取り上げる
「学校に行かないならゲームは禁止」「スマホを取り上げる」という対応は、逆効果になることが多いです。
子どもがゲームや動画に没頭しているのは、それをしていないと「嫌なことを思い出す」「不安でたまらない」という状態だからかもしれません。無理やり取り上げると、親子関係が悪化したり、部屋にこもってしまったりする危険があります。
ゲームとの付き合い方については、以下の記事で解説しています。
学校との連携
不登校が続く場合、学校との連携は欠かせません。ただし、子どもの状態を最優先に考えながら進めましょう。
担任への連絡と情報共有
まずは担任の先生に現状を伝え、情報を共有しましょう。
連絡する際は、「子どもの様子」「家庭での対応」「学校にお願いしたいこと」を整理しておくとスムーズです。電話が難しければ、連絡帳やメールでも構いません。
スクールカウンセラーの活用
学校に配置されているスクールカウンセラー(SC)は、不登校の相談に対応できる専門家です。
子ども本人が相談することもできますし、保護者だけで相談することも可能です。担任には話しにくいことも、スクールカウンセラーになら話せることがあります。
スクールカウンセラーの活用法については、以下の記事で詳しく解説しています。
出席扱いになる条件
学校に行けなくても、一定の条件を満たせば「出席扱い」になる場合があります。
教育支援センター(適応指導教室)への通所や、ICTを活用した学習なども出席扱いの対象になることがあります。条件は学校や自治体によって異なりますので、担任や教頭先生に確認しておきましょう。
欠席連絡の負担を減らす方法
毎朝の欠席連絡は、保護者にとって大きな負担です。
「しばらく休みます。状況が変わったらこちらから連絡します」と伝えて、毎日の連絡を省略させてもらうこともできます。学校によっては、メールやアプリでの連絡を認めている場合もあります。
欠席連絡の負担軽減については、以下の記事で解説しています。
専門家への相談先と選び方
不登校の対応は、保護者だけで抱え込む必要はありません。専門家の力を借りましょう。
学校内の相談先(担任・SC・SSW)
まずは学校内の相談先を活用しましょう。
担任の先生、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)は、学校の状況を把握しているため、具体的な対応を一緒に考えてくれます。SSWは、福祉的な支援が必要な場合に力になってくれます。
公的な相談機関
教育支援センター(適応指導教室)は、不登校の子どもが学校以外で過ごせる場所です。学習支援や体験活動を通して、社会性を育む機会を提供しています。
そのほか、教育委員会の相談窓口、児童相談所、子ども家庭支援センター、精神保健福祉センターなども相談先として活用できます。
医療機関を受診する目安
以下のような場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
- 朝起きられない、頭痛や腹痛など体の症状が続いている
- 「死にたい」「消えてしまいたい」といった言葉がある
- 食欲がない、眠れないなどの状態が2週間以上続く
- 日常生活に大きな支障が出ている
体の症状がある場合は、まずかかりつけの小児科に相談しましょう。必要に応じて専門医を紹介してもらえます。
医療機関の受診については、以下の記事で詳しく解説しています。
民間の支援機関・カウンセリング
民間のカウンセリングルームや不登校支援団体も選択肢の一つです。
公的な機関は予約が取りにくいことがありますが、民間の機関は比較的柔軟に対応してもらえることが多いです。
相談先の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
不登校からの回復の見通し
「いつになったら学校に行けるようになるのか」——これは、多くの保護者の方が抱く疑問です。
回復にかかる時間は人それぞれ
不登校からの回復にかかる時間は、子どもによって大きく異なります。数週間で回復する子どももいれば、数年かかる子どももいます。
大切なのは、「いつ行けるようになるか」よりも、「今、子どもが安心して過ごせているか」に目を向けることです。焦らず、子どものペースを尊重しましょう。
回復の3つの段階
不登校からの回復には、一般的に3つの段階があります。
初期(休息期)
不登校になった直後は、心身ともに疲弊している状態です。この時期は、とにかく休息を優先します。勉強や生活リズムのことは後回しにして、子どもが安心して過ごせる環境を整えることが最優先です。
中期(安定期)
十分に休息が取れると、子どもは少しずつ落ち着きを取り戻します。好きなことをして過ごす時間を大切にしましょう。ゲーム、動画、漫画など、大人から見ると「遊んでばかり」に見えるかもしれませんが、これは心のエネルギーを蓄えている大切な時間です。
後期(回復期)
エネルギーが蓄えられてくると、子どもは自分から「何かしたい」「外に出てみたい」と言い始めることがあります。子どもの「やりたい」を大切にしながら、少しずつ活動の幅を広げていきます。
「学校に戻ること」だけがゴールではない
不登校の「ゴール」は、元の学校に戻ることだけではありません。
別の学校への転校、フリースクールへの通学、通信制高校への進学など、さまざまな道があります。大切なのは、子どもが自分らしく生きていける道を見つけることです。
不登校のゴールについては、以下の記事で詳しく解説しています。
不登校中の過ごし方
学校に行かない日々をどう過ごすか、悩む保護者の方は多いでしょう。
昼間の過ごし方
不登校の初期は、「何もしない」「ゆっくり休む」で大丈夫です。心と体を休めることが最優先です。
落ち着いてきたら、子どもの興味に合わせて、少しずつ活動を増やしていきましょう。読書、ゲーム、料理、散歩など、本人が楽しめることで構いません。
昼間の過ごし方については、以下の記事で詳しく解説しています。
生活リズムの整え方
不登校が続くと、昼夜逆転になることがあります。
最初から完璧に生活リズムを整えようとせず、まずは本人の体調を優先しましょう。心が安定してくると、自然と生活リズムも整いやすくなります。
生活リズムの整え方については、以下の記事で解説しています。
休日・長期休暇の過ごし方
休日や長期休暇は、「学校に行かなくていい日」として、子どもの心が軽くなる時期です。
この時期は、できるだけ楽しく過ごすことを心がけましょう。家族で出かけたり、好きなことをしたりして、心のエネルギーを蓄える機会にしてください。
休日の過ごし方については、以下の記事で解説しています。
学習の遅れへの対応
「学校に行っていないと勉強が遅れてしまう」と心配になる保護者の方は多いでしょう。
学習より心の安定が先
不登校の初期や、心がまだ不安定な時期に勉強を促すことは逆効果です。
「勉強しなさい」というプレッシャーは、子どもの心をさらに追い詰めます。まずは心の安定を最優先にし、子どもが「勉強してみようかな」と自分から思えるようになるまで待ちましょう。
家庭学習の進め方
子どもが勉強に興味を示し始めたら、本人のペースに合わせて少しずつ再開しましょう。
最初は短い時間から始め、「できた!」という達成感を大切にします。学年を戻って、確実にできる内容から取り組むのも効果的です。
家庭学習の進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
オンライン教材の活用
自宅で学習を進める方法として、オンライン教材があります。
自分のペースで学習を進められるメリットがあり、対面が苦手な子どもでも取り組みやすいです。動画で解説を見られるものや、ゲーム感覚で取り組めるものなど、さまざまな種類があります。
オンライン教材については、以下の記事で詳しく解説しています。
家庭教師の活用
一人で学習を進めることが難しい場合、家庭教師を活用する方法もあります。
最近は、オンライン家庭教師も増えており、自宅にいながら授業を受けることができます。不登校の子どもへの指導経験がある家庭教師を選ぶとよいでしょう。
オンライン家庭教師については、以下の記事で紹介しています。
不登校と進路
不登校を経験しても、進路の道は閉ざされていません。
不登校でも進学できる
不登校を経験したからといって、進学できないということはありません。
文部科学省の調査によると、不登校を経験した中学生の約85%が、何らかの形で高校に進学しています。選択肢は想像以上に広いのです。
高校の選択肢
高校には、全日制、定時制、通信制など、さまざまな種類があります。
全日制高校
毎日通学し、朝から夕方まで授業を受ける従来型の高校です。不登校経験があっても、出席日数や内申点の条件を満たせば受験できます。私立高校の中には、不登校経験者を積極的に受け入れている学校もあります。
定時制高校
夕方から夜にかけて授業を行う高校です。朝起きるのが苦手な子どもや、昼間は別の活動をしたい子どもに向いています。
通信制高校
自宅学習を中心に、レポート提出とスクーリング(登校日)で単位を取得する高校です。登校日数が少なく、自分のペースで学習を進められます。近年、通信制高校の数は増え、サポート体制も充実しています。
通信制高校については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 通信制高校は「やめとけ」と言われる5つの理由!卒業生に聞く実態と魅力
高卒認定試験
高校に通わずに、試験に合格することで高校卒業と同等の資格を得られる制度です。大学受験や就職の際に、高卒と同等に扱われます。
大学・専門学校への進学
不登校を経験しても、大学や専門学校に進学することは十分に可能です。
一般入試では、高校の出席日数や内申点は基本的に関係ありません。AO入試や推薦入試では、不登校の経験を乗り越えたことが、むしろ強みになることもあります。
子どもの自己肯定感を育てる関わり方
不登校の子どもの多くは、自己肯定感が低くなっています。日々の関わり方で、自己肯定感を育てましょう。
結果より過程を認める
テストの点数や成績ではなく、「努力したこと」「取り組んだこと」を認める声かけを心がけましょう。
「結果がどうあれ、挑戦したことが大事だよ」と伝えることで、子どもは「自分は認められている」と感じることができます。
小さな成功体験を積み重ねる
大きな目標ではなく、小さな目標を設定し、達成感を味わう機会を作りましょう。
料理を手伝う、買い物に行く、部屋を片付けるなど、日常の中でできることを任せてください。「ありがとう」「助かったよ」という言葉が、子どもの自信につながります。
得意なこと・好きなことを大切にする
絵を描くこと、ゲーム、音楽、スポーツなど、子どもの趣味や特技を応援しましょう。
「勉強以外のことばかり」と思うかもしれませんが、好きなことに打ち込む経験は、子どもの自己肯定感を高めます。
自己肯定感を高める方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 子どもの自己肯定感を高めるための親のアプローチ
保護者自身の心のケア
子どもが不登校になると、保護者の方も大きなストレスを抱えます。子どもを支えるためにも、保護者自身の心のケアが大切です。
自分を責めすぎない
「私の育て方が悪かったのでは」「もっと早く気づいていれば」と自分を責める保護者の方は少なくありません。
しかし、不登校は保護者のせいではありません。さまざまな要因が複雑に絡み合って起こるものです。自分を責め続けることは、心身の健康を損なうだけでなく、子どもにもその不安が伝わってしまいます。
相談できる人・場所を持つ
一人で抱え込まず、話を聞いてくれる人を持ちましょう。
配偶者、家族、友人、職場の同僚など、信頼できる人に気持ちを話すだけでも、心が軽くなります。身近に相談できる人がいない場合は、専門家やカウンセラーに相談することも選択肢です。
保護者同士のつながり
同じ経験をしている保護者同士のつながりは、大きな支えになります。
「親の会」や「保護者の集まり」など、不登校の子どもを持つ保護者が集まる場に参加してみるのもよいでしょう。「自分だけじゃない」と感じられることで、気持ちが楽になります。
保護者の孤独感については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 不登校の子どもを支える保護者の「さみしさ」—その孤独を乗り越える方法
不登校経験者の声
私たちは、不登校を経験した大人を対象に毎年アンケートを実施しています。ここでは、不登校経験者からのメッセージの一部を紹介します。
★★★
不登校を経験しても、今を楽しく過ごしている人はたくさんいます。不登校は「人生の終わり」ではありません。
すべての回答は、以下の記事で紹介しています。
▶ 【学校がつらい】あなたに伝えたい、不登校経験者110名からのエール → 不登校経験者110名から保護者へのメッセージ!子どもが不登校になった時に心掛けること
よくある質問
Q不登校は甘えですか?
いいえ、甘えではありません。
不登校の子どもの多くは、「行きたいのに行けない」という苦しみを抱えています。怠けて楽をしているわけではなく、心や体がSOSを出している状態です。
「甘えている」と決めつけることは、子どもを追い詰め、回復を遅らせる原因になります。
Q不登校は親のせいですか?
いいえ、親のせいではありません。
不登校は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。「育て方が悪かった」「愛情が足りなかった」と自分を責める必要はありません。
大切なのは、「誰のせいか」を探すことではなく、「これからどうするか」を考えることです。
Q無理にでも学校に行かせた方がいいですか?
いいえ、無理に行かせることはおすすめしません。
無理な登校刺激は、子どもの心に深い傷を残すことがあります。一時的に登校できても、根本的な問題が解決しなければ、再び行けなくなることがほとんどです。
まずは子どもの安心・安全を最優先にし、心が回復するのを待ちましょう。
Q不登校はいつまで続きますか?
回復にかかる時間は、子どもによって異なります。数週間で回復する子どももいれば、数年かかる子どももいます。
大切なのは、「いつ行けるようになるか」よりも、「今、子どもが安心して過ごせているか」に目を向けることです。焦らず、子どものペースを尊重しましょう。
Q学校に行かなくても勉強は大丈夫ですか?
学習の遅れは、取り戻すことができます。ただし、心が安定してからです。
心が不安定な状態で勉強を強いても、効果は上がりません。まずは休息を十分に取り、エネルギーが回復してから、本人のペースで学習を再開しましょう。
Q不登校から引きこもりになりませんか?
不登校から引きこもりになることは、意外と少ないです。
厚生労働省の調査によると、引きこもり状態の大人の中で、小中学校時代に不登校経験がある人は約33%です。つまり、約67%は不登校を経験していません。
引きこもりにならないようにと無理やり学校に行かせようとして、家族関係が悪化することの方が心配です。不登校と将来の引きこもりは、切り離して考えましょう。
不登校と引きこもりの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 不登校と引きこもりの関係|違いを理解することで保護者の対応方法がわかる
Q不登校でも高校・大学に進学できますか?
はい、進学できます。
大学進学も十分に可能です。一般入試では高校の出席日数は関係ありませんし、AO入試や推薦入試では、不登校の経験を乗り越えたことが強みになることもあります。
まとめ:不登校は「終わり」ではなく「始まり」
不登校は、決して「人生の終わり」ではありません。
お子さんが学校に行けなくなったとき、保護者の方は強い不安を感じるでしょう。「このままでは将来どうなるのか」「自分の育て方が悪かったのか」と、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
しかし、不登校は誰にでも起こりうることです。そして、不登校を経験しても、自分らしい人生を歩んでいる人はたくさんいます。
不登校は、子どもが立ち止まって自分自身と向き合う時間です。この経験を通じて、自分に合った生き方を見つける子どももいます。
保護者の方にできることは、焦らず、子どもの安心・安全を守り、子どものペースを尊重することです。
一人で抱え込まず、専門家や周囲の力を借りながら、お子さんの回復をサポートしていきましょう。
- 不登校は年間30日以上の欠席。小中高で40万人を超え、誰にでも起こりうる
- 最も多い原因は「無気力・不安」。原因は一つではなく、複合的なことが多い
- 初期対応は「安心・安全」を最優先に。無理に登校させない、原因を問い詰めない
- 学校、公的機関、民間カウンセリングなど、相談先を活用する
- 回復には3つの段階がある。焦らず、子どものペースを尊重する
- 不登校でも進学できる。選択肢は広い
- 保護者自身の心のケアも忘れずに
お子さんの年齢別の詳細は以下の記事をご覧ください。
▶【小学校低学年の不登校】原因・対応・よくある疑問を専門家が徹底解説
▶【小学校高学年の不登校】原因・対応・進路準備を専門家が徹底解説
▶【中学生】学校に行きたくない!原因がわからない理由と解決策
▶【高校生】「学校に行きたくないけど、特に理由がない」要因と対応策を解説
メディア情報
25年2月26日【記事監修】
吉田克彦(当サイト責任編集)が、アタムアカデミー(https://atam-academy.com/)のアンケート記事を監修しました。【親子関係を深めるためのコミュニケーション方法ランキング】477人アンケート調査
25年1月22日【単著出版】
吉田克彦(当サイト責任編集)が、単著「『できる』ブリーフセラピー」を金子書房より出版しました。
24年11月【インタビュー】
All about ニュースにて、吉田克彦(当サイト責任編集)の不登校問題に関するインタビュー記事が掲載されました。
24年9月1日【テレビ出演】
テレビ愛知「5時スタ」に出演しました。
吉田克彦(当サイト責任編集)が、9月1日に子どもの自殺が増えることと夏休み明けの不登校について解説し、保護者が心掛けることについてコメントしました。
22年4月~23年3月【ウェブ記事連載】
吉田克彦(当サイト責任編集)が、金子書房Noteにて「家族療法家の臨床ノート ~事例で学ぶブリーフセラピー~」の連載(全24回)を行いました。
取材など各種お問い合わせはこちらからお願いします。
























