- 「通信制高校はやめとけ」といわれる背景に5つの誤解があること
- 通信制高校に関する5つの誤解のそれぞれの正しい情報
- 「通信制高校はやめとけ」といわれて不安になった時の解消法
子どもを通信制高校に通わせるといったら、親戚から「通信制高校なんて大丈夫なの?」といわれた。
通信制高校は毎日学校に通うのと違って、自分で勉強をすすめなければいけないらしい。うちの子はちゃんと卒業できるのかな
通信制高校に関するいろいろわからないことばかりで不安ですよね。ここでは、疑問を一つ一つ解消していきましょう。
高校進学を考える際に通信制高校も選択肢の一つです。
保護者として一番気になるのは、子どもが通信制高校でうまくやっていけるのか、後悔しないかということですよね。
特に家族などに伝えると「本当に通信制高校で大丈夫なの?」「通信制高校はやめといたほうがいいのでは」などといわれることもあるようです。
いろいろな意見を耳にすると、心配が膨らんでしまうのも無理はありません。
通信制高校は、不登校のお子さんにとって新しい可能性を開く選択肢である一方、デメリットがあるのも事実です。
本記事では、通信制高校が「やめといた方がいい」と言われる理由を整理しつつ、メリット・デメリット、そして適切な学校選びのポイントをお伝えします。
進路選びで後悔しないために、通信制高校の現実をしっかり理解し、自分のお子さんに合う選択肢を見つけましょう。
通信制高校が「やめといた方が良い」と言われる5つの理由
まず、「通信制高校はやめとけ」と言われる背景について考えてみましょう。
不安を正しく理解することで、どんな課題に備えるべきかが見えてきます。
- 卒業が難しい
- 大学進学率が低い
- 就職に不利と言われる場合がある
- 学費が高い
- 友達ができにくい
誤解その1.卒業が難しそう(サポートが手厚く面倒見が良い)
通信制高校は卒業するのが大変って聞きました
たしかに、子どもが一人で学習を進められるか心配になりますよね。しかし、いろいろなサポートがあります。
お子さんにあった方法を選べるので、勉強はしやすいです。
授業が毎日行われる全日制高校とは異なり、通信制高校では自己管理能力が求められます。
なぜなら、登校日数が少ない中、レポート提出や単位取得に計画性が必要だからです。
文部科学省の調査によれば、2023年度の中途退学率は以下の通りです。
- 全日制高校:1.0%
- 通信制高校:4.0%
出典:文部科学省「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
通信制高校の方が退学率は高いですね。
しかし、96%とほとんどの生徒が無事に通信制高校を卒業しています。
通信制高校の方が退学率が増えるからくり
もう一つ、重要なこととして全日制高校の中途退学率が少ないのには、大きな理由があります。
全日制高校に通えなくなった場合、退学するのではなく通信制高校に転校しているのです。
全日制高校で卒業できない→通信制高校に転校→やっぱり卒業できない
そのため、通信制高校の退学率はどうしても全日制高校より高くなってしまうのです。
実際には通信制高校の方がサポートが手厚い
通信制高校は自己管理が苦手な子どもにとって、卒業が大きな壁になるかもしれません。
しかし、通信制高校には、学習支援や相談窓口を設けている学校も多くあります。
学校選びの段階で、学習の進捗を見守ってくれるサポート体制があるかを確認しましょう。
誤解その2.大学進学率が低い(実は指定校推薦などで有利な場合も)
文部科学省の学校基本調査によると、令和4年度の全日制と通信制の大学進学率はこちらです。
- 全日制高校:59.5.%
- 通信制高校:24.1%
出典:文部科学省「学校基本調査」(卒業後の状況調査票(高等学校 全日制・定時制)、卒業後の状況調査票(高等学校 通信制))
大学よりも専門学校に興味を示す生徒が多い
4年制大学よりも全体的に受験難易度が低いことも「確実に資格を取りたい」という思いにマッチしているのでしょう。
しかし、他にも理由があります。
専門学校が人気の理由1:資格重視
(もちろん全日制高校へ通う生徒さんも挫折や失敗を経験していますが、)
通信制高校の生徒さんの多くは、大きな挫折を経験している場合が多いです。
また、自分に自信がなかったり、自己肯定感が低い生徒さんが多い印象があります。
そのような背景からか「何か資格を取りたい」と考える生徒さんが多いです。
保護者の方も「何か手に職をつけてほしい」と資格取得をすすめる気持ちが強い場合もあります。
専門学校が人気の理由2:ITに強い
また、最近の高校生に人気の動画編集やEゲームなどIT系の分野については魅力的な専門学校がたくさんあります。
大学では一般教養などのさまざまな分野から科目を選ぶ必要があります。
知らないことを学べるのは大学教育の良さといえます。
一方で、一日中興味のあることだけを学んでいたいと専門学校を選ぶ生徒さんもいます。
これらの理由から、4年制大学ではなくて専門学校に進学する生徒さんが多くいます。
進学を希望しない生徒も多い
通信制高校に通う生徒さんの中には、勉強がとても苦手なお子さんが少なくありません。
実際に通信制高校のスクールカウンセラーとして活動していますが、その中で生徒さんと将来のことを話すと
「高校は卒業しておきたいけれど、そこからさらに大学で4年間勉強なんてしたくない」
「一度、勉強ではなくいろいろな経験を積みたい。そして何年か後に自分で必要を感じたら大学に行けばいい」
「通信制高校で親に高い学費を払ってもらっているから、一度社会に出て大学は自分でお金をためてから行きたい」
といった考えを持つ生徒さんも多くいます。
もちろん、保護者にとっては「そんなこと考えないで、すぐに大学に行けばいいのに」と考えてしまうかもしれません。
いろいろな考えがありますし、ご家庭の事情があるので、「正しい答え」というのはそれぞれ違います。
ただ、お子さんなりに一生懸命に現在と将来について考えていることは間違いありません。
その考えを大切にしたいですね。
実際は大学進学で有利なこともある
文部科学省の調査によると、2022年度以降、一般選抜入試よりも推薦型入試での合格者数が上回りました。
そのため、推薦入試のしやすさが大学進学に大きく影響します。
通信制高校でも大学の指定校推薦枠が与えられている高校があります。
特に進学校といわれる全日制高校よりも、指定校推薦枠が取りやすいことがあります。
全日制高校よりも担任との距離が身近になりやすいため、担任の先生からの推薦も得られやすいといえます。
(もちろん、担任と積極的にコミュニケーションをとったり、レポート提出などの課題をしっかりやる必要はあります。)
説明会などに参加した際に、卒業生の進学状況について確かめてはいかがでしょうか。
誤解その3.就職に不利(会社に採用してもらうのではなく、会社を選ぼう)
就職する時に、通信制だと不利になるんじゃないかと心配です…
確かに、通信制高校への理解が不足していることがあるのも事実です
現実問題として、就職活動で偏見を受ける可能性はゼロではありません。
しかし、それは通信制高校だからというのではなく、採用担当者など相手が無知なだけです。
実際には通信制高校の卒業生も多くの企業で活躍しています。
もし、高校名などをバカにしたり、否定的な評価をする会社であれば、無理に入る必要はありません。
最近は高校生の求人倍率が非常に高いです。
「企業に採用してもらう」ではなく、「自分が入りたい会社を探す。そのために必要なことを高校で学ぶ」という考え方が大事です。
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誤解その4.学費が高い(説明会でくわしく確認して不安の解消を)
私立の通信制高校では、授業料以外に教材費やスクーリング費用が発生するため、想定以上の学費負担になることがあります。
学費負担を軽減するためには、公立通信制高校を選ぶか、高等学校等就学支援金制度を活用する方法があります。
通信制高校に通う生徒さんの中には、バイトで学費を捻出しながら学ぶ生徒さんもいます。
さまざまな方法がありますので、通信制高校の学校相談会などに行った際に、率直に相談してみましょう。
「こういう制度がありますよ」
「在校生の中でこういう方法で学費を解決しているご家庭もあります」
などと、教えてくれるはずです。
誤解その5.友達ができにくい(いろんなきっかけがある)
通信制高校では、全日制高校などと比較すると登校日数もキャンパス内の生徒数も少ないいため、クラスメイト交流することは少なくなります。
大規模な通信制高校の場合、部活動があって他のキャンパスの生徒との活動をしたり、大会に出場することもあります。
スクーリングや学校行事で全国から生徒が集まる通信制高校もあります。
生徒同士の交流のきっかけ作りに工夫をしている学校も多いですよ。
登校頻度が高い学校や、交流イベントが多い学校を選ぶことも選択肢の一つです。
考えていても答えは出ない、調べて、聞いて、確かめよう
この記事では、5つの誤解について「実際はどうなのか」を説明しました。
保護者の方々の多くは、全日制高校を卒業しているでしょう。
そして、自分が高校生だった当時の通信制高校のイメージを元に「できればやめた方がいいのでは」と考えてしまうかもしれません。
その気持ちは自然なことでしょうし、実際に通信制高校に対して誤解をしている方々も多くいます。
人間ですのでいろいろな考えを持つ人がいます。
ご家族や身近な人の中にも「通信制高校はやめとけ」という人がいるかもしれません。
退学率4%からもわかる通り、実際に通信制高校に行ってうまくいかなかった人もいることは確かです。
いろいろと悩んでしまうでしょうが、一人で考えていても結論は出ません。
気になったら、まずは調べてみましょう。
「●●高校 進路実績」などと検索すれば、それぞれの通信制高校でデータを出しています。
学校説明会や入試相談会などに参加すればより具体的な情報を教えてくれるはずです。
ぜひとも、誤解を解消してお子さんにふさわしい進路を決めてください。