「いつまで続くんだろう」「終わりが見えない」——母子登校を続けているお母さんの多くが、そう感じています。

毎朝、子どもを説得して、一緒に学校まで行って、教室で付き添って。帰宅したら家事をして、また翌朝が来る。仕事を辞めざるを得なかった方、職場に頭を下げ続けている方もいるかもしれません。

「周りの子は一人で行けているのに」「いつになったら普通に登校できるの?」

そんな焦りと疲労で、心も体も限界に近づいていませんか?

でも、一つだけ確かなことがあります。

母子登校には、必ず終わりが来ます。

今は出口の見えないトンネルの中にいるように感じるかもしれません。でも、正しい段階を踏めば、必ず「卒業」できる日が来ます。

この記事でお伝えしたいこと

吉田 克彦

吉田 克彦

公認心理師
不登校の家族支援25年超

この記事では、母子登校から卒業するための具体的なステップを解説します。
「今日から何をすればいいのか」がわかる実践マニュアルとなっています。

今はどの時期?回復への4ステージ

母子登校を卒業するために、まず大切なのは「お子さんが今どの段階にいるか」を見極めることです。

段階に合わない対応をすると、かえって回復が遅れることがあります。焦る気持ちはわかりますが、まずはお子さんの状態を確認しましょう。

ステージ子どもの状態親の対応ポイント
第1段階:逃避期腹痛・頭痛などの身体症状、登校しぶり無理に行かせない。「休む勇気」を持つ
第2段階:苦悶期パニック、暴言、赤ちゃん返り、激しい抵抗家を「安全基地」にする。スキンシップを増やす
第3段階:休息期家では元気。ゲームや趣味に没頭責めない。生活リズムを整えるサポート
第4段階:回復期「暇だ」「友達どうしてるかな」と外に関心スモールステップを開始する

第1段階:逃避期(初期)

朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える。学校に行きたがらず、泣いたり抵抗したりする。

この時期に無理やり学校へ連れて行くと、不安がさらに強まってしまいます。「休ませる勇気」を持ち、まずはお子さんの気持ちを受け止めてあげてください。

第2段階:苦悶期(混乱期)

休むことを選んだ後、一時的に状態が悪化したように見える時期です。激しく泣く、暴言を吐く、親にべったり甘える(赤ちゃん返り)といった行動が見られます。

この時期は、家を「安全基地」にすることが最優先です。スキンシップを増やし、「ここにいれば大丈夫」という安心感を与え続けてください。登校の話は控えましょう。

第3段階:休息期(安定期)

家では落ち着いて過ごせるようになります。ゲームや動画を楽しんだり、趣味に没頭したりする時間が増えます。

「元気そうなのに学校に行かないなんて」と思うかもしれませんが、これは回復に向けてエネルギーを充電している大切な時期です。責めずに見守りましょう。生活リズムが乱れすぎないようサポートすることが大切です。

第4段階:回復期(始動期)

「暇だな」「友達どうしてるかな」「学校って今どうなってるの?」——こうした言葉が出てきたら、回復期に入ったサインです。

外の世界に関心が向き始めたら、いよいよスモールステップを開始するタイミングです。

【実践編】母子登校卒業へのスモールステップ法

お子さんが「回復期」に入ったら、少しずつ「離れる練習」を始めます。

ここで紹介するのは、心理学の「系統的脱感作法」を応用したスモールステップ法です。不安を一気に解消しようとするのではなく、小さなステップを積み重ねることで、徐々に慣れていく方法です。

ステップ1:物理的距離の調整(校内編)

まずは、学校の中で付き添う範囲を少しずつ縮めていきます。

レベルお母さんの位置ポイント
Lv.1教室の中で子どもの隣に座る最初はここからでOK
Lv.2教室の後ろで見守る子どもから見える位置
Lv.3廊下で待機するドアの窓から姿が見える範囲
Lv.4別室(図書室・保健室)で待機同じ校舎内にいることを伝える
Lv.5昇降口まで送る校舎の外で待機
Lv.6校門まで送る学校の敷地外
Lv.7通学路の途中まで送る最終目標に向けて

大切なポイント

いきなり突き放さないでください。「今日から教室に入らないよ」と一方的に決めるのではなく、お子さんと相談しながら「ここまでなら大丈夫かな?」というラインを一緒に決めましょう。

お子さん自身が「これならできそう」と思えることが大切です。

ステップ2:時間的距離の調整(別離編)

物理的な距離と並行して、「離れている時間」も少しずつ延ばしていきます。

たとえば、こんな声かけから始めます。

「10分だけ図書室に行ってくるね。10分経ったら必ず戻ってくるよ」

そして、約束の時間に必ず戻ってきてください。これがとても重要です。

「お母さんは必ず戻ってくる」——この体験を繰り返すことで、お子さんの中に信頼と安心感が育ちます。心理学では「対象の永続性」と呼ばれる感覚です。

段階離れる時間声かけの例
最初5〜10分「10分だけトイレに行ってくるね」
慣れてきたら15〜30分「30分だけコンビニに行ってくるね」
さらに進んだら1時間程度「1時間だけ用事を済ませてくるね」
最終段階授業1コマ分〜半日「お昼に迎えに来るね」

大切なポイント

約束は必ず守ってください。「10分」と言ったら、10分で戻る。これを繰り返すことで、「お母さんは嘘をつかない」「必ず戻ってくる」という信頼が積み上がっていきます。

逆に、約束を破ると、信頼が崩れ、不安が逆戻りしてしまうことがあります。

ステップ3:先生との連携テクニック

スモールステップを進めるには、学校の協力が欠かせません。担任の先生や養護教諭に、状況を伝えておきましょう。

ただ、「母子登校」や「付き添い」に対して、学校側が「甘やかしでは?」と感じることもあります。スムーズに協力を得るためのコツをお伝えします。

伝え方のポイント

「医師(またはカウンセラー)のアドバイスで、段階的に離れる練習をしています」

このように伝えると、学校側も理解しやすくなります。専門家の助言に基づいた対応であることを示すことで、「甘やかし」ではなく「治療的な対応」だと認識してもらいやすくなります。

具体的にお願いすること

  • 現在のステップ(例:廊下で待機している段階)を伝える
  • 次のステップに進むタイミングを相談する
  • 子どもが不安になったときの対応をお願いする(保健室に連れていく、お母さんを呼ぶなど)

先生方も、具体的に何をすればいいかがわかると、協力しやすくなります。

注意点:三歩進んで二歩下がる

スモールステップは、スムーズには進みません。

昨日は廊下で待てたのに、今日は「教室に来て」と泣く。先週は1時間離れられたのに、今週は10分も無理——こうした「後退」は、当たり前に起こります。

行事がある、体調が悪い、友達とトラブルがあった。ちょっとしたことで、前のステップに戻ることはよくあることです。

「せっかく進んだのに」とがっかりする気持ちはわかります。でも、焦らないでください。後退しても、また前のステップからやり直せばいいのです。

長い目で見れば、必ず前に進んでいきます。

中学生・高校生の母子分離不安への対応

中学生・高校生になると、分離不安の現れ方が変わります。

幼児のように泣いてしがみつくことは少なくなりますが、代わりに別の形で現れます。

  • 無気力(何もやる気が起きない)
  • 昼夜逆転(夜眠れず、朝起きられない)
  • 部屋に引きこもる
  • 親と話さなくなる

一見すると「反抗期」や「怠け」に見えることもあります。
根底に分離不安が隠れているのです。

対応のポイント

中学生・高校生への対応で大切なのは、「子ども扱いしない」ことです。

幼児期のようにスキンシップを増やしたり、手取り足取り世話をしたりすると、かえって反発を招くことがあります。「自分はもう子どもじゃない」というプライドがあるからです。

一人の大人として対話することを意識してください。「どうしたい?」「何が嫌?」と、本人の意思を尊重する姿勢が大切です。

第三者の介入が有効

親子だけで解決しようとすると、行き詰まることがあります。

この年代では、第三者(カウンセラー、メンター、信頼できる大人)の介入が効果的です。親には言えないことでも、第三者になら話せることがあります。

学校のスクールカウンセラーや、外部のカウンセリングサービスを活用することを検討してみてください。

無理に学校に戻ることが全てではない

ここまで「母子登校からの卒業」について解説してきましたが、最後に大切なことをお伝えします。

学校への復帰だけがゴールではありません。

お子さんの状態によっては、学校に戻ることがベストな選択ではない場合もあります。無理に登校を続けることで、心身の状態が悪化してしまっては本末転倒です。

「休む」ことも選択肢

お子さんのエネルギーが十分に溜まっていない段階で、焦って登校を進めると、また逆戻りしてしまうことがあります。

「今は休む時期」と割り切り、自宅でできることに取り組むのも一つの正解です。

自宅学習という選択肢

学校に行けなくても、勉強を続けることはできます。

最近は、不登校の子ども向けに設計されたオンライン教材も増えています。文部科学省の「出席扱い制度」を利用すれば、自宅での学習を学校の出席としてカウントしてもらえる場合もあります。

「学校に行けない=勉強が遅れる」ではありません。お子さんに合った学習方法を見つけることで、学力を維持しながら心の回復を待つことができます。

まとめ:焦らず、お子さんのペースで

母子登校は、出口の見えないトンネルのように感じるかもしれません。「いつまで続くのか」という不安は、本当につらいものです。

でも、正しいステップを踏めば、必ず卒業できる日が来ます。

まずは、お子さんが今どのステージにいるかを確認してください。そして、回復期に入ったら、スモールステップで少しずつ「離れる練習」を始めましょう。

三歩進んで二歩下がっても、大丈夫。長い目で見れば、確実に前に進んでいます。

そして、学校に戻ることだけがゴールではありません。お子さんの心と体の健康が、何より大切です。

一人で抱え込まず、学校や専門家の力を借りながら、お子さんに合ったペースで進んでいきましょう。

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引用参考文献

小児心身医学会ガイドライン集改訂第2版 2015年7月 一般社団法人小児心身医学会

更新情報

25/11/25 新規記事掲載