お子さんの進路について、通信制高校を検討している時、周囲から「やめとけ」といわれることがあります。
「通信制高校なんてやめておけ」などと言われると、不安になることも多いでしょう。
実際に、中学生の不登校に関する保護者カウンセリングをしていると、家族から「通信制高校なんてやめておけ」と止められたというエピソードをよく聞きます。
進路の選択は、お子さまの将来だけでなく、ご家族の生活にも大きく関わる大切なテーマです。
そこで、通信制高校に通って卒業した方に体験談を書いていただきました。
もちろん、それぞれの状況によって最適な選択肢は異なりますが、「通信制高校とはどのような場所なのか」「やめとけと言われる理由は本当に正しいのか」を一緒に考えるきっかけになれば幸いです。
・通信制高校がやめとけと言われる5つの理由
・本当に「やめとけ!」なのか、通信制高校の実態
・通信制高校の人気が高まっている理由と通信制高校でできること
中学生の不登校についてはこちらの記事にまとめています!
▶ 中学生の不登校|知っておくべき原因・対応・進路のすべて【心理師解説】
なぜ通信制高校は「やめとけ」と言われるのか
中学時代に不登校だった子どもや高校を中退した子どもの進学・転入先の候補として通信制高校が挙げられます。
ネットで通信制高校と検索すると「やめとけ」という声があり不安になってしまう人もいるのではないでしょうか?
筆者には、全日制の高校を中退し通信制高校に編入した経験があります。
通信制高校はなぜ「やめとけ」と言われるのか、本当に避けた方がいいのか、通信制高校の実態と魅力について解説します。
実体験も交えてお伝えするので、通信制高校に不安や疑問を抱いている人や進路に悩んでいる人の参考になれば嬉しいです。
まずは、通信制高校がなぜやめとけと言われているのか、その理由となる通信制高校のデメリットを5つ解説します。
周囲から偏見の目で見られることがある
通信制高校は全日制の高校よりも通学頻度が少なく、校則も自由なところが多いです。
そのため、「学校に行っていないのでは」「大学進学や就職が難しくなるのでは」と偏見の目で見られることがあります。
私は通信制高校に在籍しながら併設のサポート校に通学していました。
制服がなく、自由な時間に登校できるというサポート校でした。
「平日の日中に私服で出かけるなんておかしい」と近所で噂になっていたようです。
校則がゆるいため、化粧をしたり、髪を染めたりしていたので、警察に補導されかけたことがあります。
通信制高校についてテレビで紹介される機会も増え、少しずつ変わってきてはいます。
しかし、相変わらず「通信制高校は落ちこぼれ」「人間関係が上手く行っていない生徒が行く高校」という考えを持っている人がいるでしょう。
学校の形も多様化していますが、やはり高校生=毎日学校に通うのが当然と考えている人が多いのではないでしょうか。
繊細すぎて学校に行けなくなり通信制高校に来る生徒さんも多くいます。な方も多くいます。
繊細なお子さんの中には、周囲の目をとても気にする方もいるでしょう。

偏見は「情報不足」から生まれることが多いです。
お子さんの将来を心配される当然ですが、正しい情報を得て偏見を取り除きましょう。
学力の向上が難しい
通信制高校は自身で学習を進めるため、継続的な学習をするには相当の努力が必要です。
「学力向上ではなく、卒業出来れば充分」と最低限の学習しかしない通信制高校も珍しくありません。
私が通っていた通信制高校は、レポートで単位の取得が可能で、サポート校の授業も1日3時間程度でした。
サポート校は「まず登校」が目標のため、好きな時間に登校できました。
6時間授業が週5日がある全日制高校と比較すると、学習時間は少ないです。
通信制高校は自由な時間が多いため、自ら勉強に取り組めば学力の向上は期待できるでしょう。
しかし、全日制の高校のように毎日先生のサポートを受けられるわけではないので、すぐにわからないところを質問するのが難しいです。
通信制高校は大学進学を考えていない生徒も多く、専門学校や就職など進路はさまざま。
そのため、周囲と切磋琢磨して学習に励むには適していない環境と言えるでしょう。

「学力が伸びにくい」と感じやすい背景には、生活リズムの乱れや自己管理の難しさが関係していることもあります。
勉強は急がなくていつでもできます!!
お子さまが安心して勉強に取り組めるよう、家庭での声かけ(例:「今日はここまでできたね」)や学習支援の仕組みを活用すると効果的です。
友人を作る機会が少ない
通信制高校は全日制高校のように毎日通う必要がなかったり、オンラインで完結します。
そのため、友人を作る機会が減ってしまうデメリットがあります。
イベントを多く開催する通信制高校やサポート校もありますが、基本は自由参加。
自分から行動するタイプであれば、イベントに参加して友人を作れますが、勇気が必要です。
通信制高校は全日制高校のように大人数のクラスに属することがありません。
クラスがないことは仲の良い友人とクラスが離れてしまったなど人間関係に悩むことがない気楽さはありました。しかし、クラスメイトと共に合唱コンクールや文化祭、体育祭といった行事に取り組んだり、同じ制服を着た友人と放課後を過ごしたりしている全日制高校の友人を見ると少し寂しく感じました。
テレビドラマなどでよく描かれる“青春”をイメージしていると、通信制高校の現実とギャップが生じると考えられます。

友人関係の希薄さを不安に感じる気持ちは良くわかります。しかし、友人が多いことがメリットだけではありません。いじめやトラブルで悩むことも増えます。友人の数は関係ありません。本人の性格に合った人間関係のスタイルを認めてあげることが、安心につながります。
退学する人が多い・卒業に時間がかかる
通信制高校やレポートの作成やスクーリングを自身で管理して進めるため、単位を取得できずに退学してしまったり、卒業するのに何年もかかってしまう人がいます。
入学金や学費を払っているのに辞めてしまうのは、もったいないですよね。
全日制高校からの転入で通信制高校を選び、退学すると自己肯定感の低下にも繋がります。
通学型の通信制高校やサポート校、オンラインでサポートを受けられる学校が増えているため、不安な場合はサポートが手厚い学校を選びましょう。

通信制高校は「自分のペースで進められる」一方、計画的に取り組む力が求められます。見学時に「提出物の管理方法」「欠席時のフォロー体制」などを確認すると安心ですね。
お金がかかる
通信制高校は私立・公立などさまざまな学校がありまる。
選ぶ学校によっては全日制高校より費用がかかることがあります。
学費がかかる(サポート校の費用が追加される場合も)
通信制高校の学費に加えてサポート校に通う場合はサポート校の費用も必要になります。
保護者にとっては大きな負担となるでしょう。
私が卒業した通信制高校もサポート校に通学するタイプでした。
全日制の私立高校くらいの学費がかかったと記憶しています。
通学費用がかかる
私が通っていた当時は、サポート校に通う場合、学校ではないため通学定期を作ることができず、通勤定期で通っていました。
現在はサポート校も通学定期の対象になっていますが、制度が変わることがあるので注意が必要です。
スクーリングや行事に参加する場合の費用が掛かる
私の場合は学校の本校が離れた場所にあったため、年に1度スクーリングに行くために何万円もかけていました。
このように、通信制高校は選ぶ学校や状況によりお金がかかる場合があります。
公立の通信制高校は学費が安いことが多いので、費用が心配な人は公立を選ぶなど学校選びが重要になるでしょう。高校無償化の地域であっても、学校によっては対象外となることがあるので注意が必要です。

学費やサポート校費用は大きな負担になり得ますが、国の「就学支援金制度」や自治体の補助が使える場合もあります。
必ず通信制高校に直接確認し、家庭の経済状況に合った選択をしましょう。
通信制高校は自分にとって必要な選択だった
「やめとけ」と言われやすい通信制高校への進学。
ここまで説明してきたように確かにいろいろな負担があるのも事実です。
しかし、実際に通信制高校に通っていましたが、全く「やめとけ」とは思いません。
むしろ、通信制高校という選択は自分にとっては必要だったと感じています。
どうして、私が通信制高校に通って良かったと感じているのか、ここからは通信制高校のメリットや最近の学校事情について紹介します。
高校は多様化しつつある
通信制高校の形は日々進化しています、全日制高校のように毎日通学する学校や、レポートの作成を助けるサポート校、予備校に通って大学進学を目指す学校やオンラインで授業が受けられて自宅にいながら高校卒業を目指せる学校などさまざまです。
そのため、子どもの性格や興味、住んでいる場所に合わせて学びのスタイルを選ぶことができます。
通学コースを設けている学校も週1のみや毎日など自由に設定できるので、「全日制高校のように毎日通いたい」「無理せず少しずつ学校に行きたい」など自分のペースで通えます。
行きたい!と思ったときに行く場所があるのは、子どもにとって大きな安心にも繋がるでしょう。
通信制高校がただレポートを仕上げて高校卒業するだけの場所ではなくなったことで、通信制高校を選択する子どもが増えています。
完全に周囲の偏見の目を無くすというのは難しいかもしれませんが、徐々に通信制高校もひとつの選択肢として世間に浸透しつつあるのです。
通信制高校は高卒資格が取れるため進学も可能
通信制高校に通うと、大学進学は難しいのでは?と考えていませんか?
通信制高校を卒業すると、全日制高校と同じ高卒資格が取得できます。そのため、全日制高校を卒業した人と同じように大学受験をしたり、専門学校に進学したり、就職することが可能です。
大学進学に力を入れている通信制高校もあります。学校によっては指定校推薦で大学に入学できる場合もあるほどです。
実際、私は現役で私立の4年制大学に進学しています。受験時に通信制高校だからといって他の受験生と差別されるようなことは一切ありませんでしたし、問題なく合格することができました。
私が卒業した通信制高校では、サポート校の先生たちが受験対策や就職面接の対策をおこなっており、同級生も大学や専門学校に進学したり、就職をしたりとさまざま。
「通信制高校に進学したら、大学進学は難しい」というのは全くの見当違いです。
同じ経験をした仲間に出会える
通信制高校は、不登校経験のある生徒や全日制の高校を中退した経験のある生徒を多く受け入れています。
そのため、似た境遇の生徒が集まりやすく、同じ経験を持つ仲間に出会うことができます。
不登校だった事実を隠さず話すことができたり、悩みを共有できる友人を作れるというのは子どもだけでなく保護者にとっても大きなメリットでしょう。
私も全日制高校で不登校からの中退を経験しました。
「このままでは進級が難しいからとりあえず辞めよう」と、高校を辞めたは良いものの、次が何も決まっておらず家にいるだけだった日々。
周囲には全日制の高校に通っている友人が多かったため、“私は周囲のように普通の高校生活を送れなかった”と塞ぎ込み、連絡を取ることができませんでした。
通信制高校に編入したということも何だか恥ずかしいことのような気がして、周囲に言えなかったのです。
しかし、通信制高校に編入して不登校や中退を経験した生徒が多く“ありのままの自分”を受け入れたことで考えが変わりました。
同じ境遇を経験したからこそ話せることもあり、次第に私は堂々と外に出るようになりました。家の中で塞ぎ込んでいた私が大学進学を考えるようになったのは、間違いなく通信制高校に編入して出会った友人のおかげです。
全日制高校のように文化祭や体育祭などイベント、部活動を積極的に行っている通信制高校もあります。
前の在籍校で取得した単位を引継ぎできるケースもある
通信制高校は学年によって教育課程の区分を設けない「単位制」を導入している学校が多いため、卒業に必要な74単位さえ取得すれば3年で卒業することができます。
全日制高校のように3年で卒業できるので、友人と同じタイミングで大学や専門学校への進学・就職をすることができるのはメリットでしょう。
3年で卒業できることは、私が定時制高校ではなく通信制高校を選んだ理由のひとつです。
大学に進学するとさまざまな年齢の学生がいたので気にすることでは無かったですが、当時の私は、少しでも全日制高校の友人に遅れを取りたくないと考えていたため、同じタイミングでの高校卒業は魅力でした。
全日制の高校に通っている人で中退や転入を考えている場合、既に取得した単位を引き付ぎできる場合があります。
編入するとゼロからではなく、頑張った実績をそのまま活用できますよ!
働きながら高校生活が送れる
通信制高校は全日制の高校に比べて校則が緩く、バイトに対しての制限がない学校がほとんどです。
学校に通う時間が少ないぶん、時間ができるので高校生でも多くの時間をバイトに費やすことができます。
社会人として働きながら通信制高校に通う人もいます。
アルバイト経験はお金を稼ぐことができるだけでなく、社会人としてのマナーや立ち居振る舞いを身に付けることができます。
アルバイトで学んだことが仕事に活かされているという人も多いのではないでしょうか。
アルバイトを禁止としている全日制高校もあるため、アルバイトをしてお金を稼ぎながら高校生活を送ることができるのは自由な時間が多い通信制高校ならではでしょう。
通信制高校の人気が高まっている3つの理由
通信制高校の数が増えており、通信制高校の人気が高まっています。
「やめとけ」という声がある一方で、どうして通信制高校を選ぶ子どもが増えているのでしょうか。
通信制高校の魅力と人気の理由を解説します。
不登校へのサポートが手厚い
通信制高校はさまざまな事情から学校に通えなかった生徒や中退経験のある生徒を多く受け入れています。
スクールカウンセラーを配置する通信制高校もあり、安心して通うことができます。
実際、私が通っていた通信制高校のサポート校は開始時間が決まっていたものの、遅刻をしても怒られることはありませんでした。
学校に行く度に先生たちから「最近頑張ってるね!」「今日は朝早く起きれたんだね!」とポジティブな声かけをしてくれるので、モチベーションを保つことができたと思います。
全日制の学校よりも遅い時間からスタートする学校やオンラインで授業を受けられる学校も登場しており、「朝が弱く、午後から通いたい」「自宅から出ることに抵抗がある」という子どもでも学校生活を諦める必要がありません。
不登校状態の子どもがいても、相談できる機関がわからず保護者も孤独になりがち。
不登校へのサポートが厚く、気軽に相談できる場所があることは子どもにとっても保護者にとっても良いことでしょう。
自由な時間が確保できる
通信制高校は全日制高校に比べて通学や学習の時間が少ないため、自分の興味のあることに使える時間が多くあります。
高校卒業のための学習は最低限にして、スポーツに打ち込んだり、受験勉強をしたり、バイトや趣味の時間に充てることができるのも、通信制高校ならでは。
通信制高校で高卒資格を取った芸能人やスポーツ選手もいます。
また、通信制高校は全日制高校のように厳しい校則がありません。
ファッションやメイク、ネイルなどやりたいことを我慢せずにできるのも人気の理由です。
私は通信制高校のサポート校に通いながら、空いた時間はアルバイトや受験勉強していました。
テスト勉強や宿題に時間を取られないぶん受験勉強に時間を使えたのは、とても良かったです。
資格や専門の知識が学べる学校もある
通常の学習に加えて資格の取得を目指したり、ダンスやネイル、メイク、声優、eスポーツ、プログラミングなど専門知識が学べるコースを設置している通信制高校も登場しています。
高校に通いながら興味・関心のある分野の知識や技術を習得できるのは、自由な時間が多い通信制高校ならではでしょう。
やりたいことや将来の夢が明確な人におすすめです。
特に将来の夢が決まっていない子どもでも、通信制高校での経験が将来を考えるきっかけになったり、就職に繋がることがあります。
高校卒業後、すぐに就職したい人や希望の業界があるひとにもぴったりです。

「不登校でも安心して通える仕組みがある」「自由な時間を活用できる」といった特徴は、子どもの自己効力感(自分はできるという感覚)を育てる大きな助けになります。
▶ 自信なしでも大丈夫、自分の認め方
通信制高校はやめた方がいいか悩む時に、よくある質問
Q 通信制高校を卒業すれば、大学進学は本当に可能ですか?
はい。通信制高校を卒業すると全日制高校と同等の「高卒資格」が得られます。
指定校推薦や一般入試で大学に進学することも可能です。
Q 不登校の子どもでも通えますか?
通信制高校は不登校経験のある生徒を多く受け入れています。
登校日数が少ない、オンライン授業があるなど、段階的に通学できる環境もあります。
Q 学費はどのくらいかかりますか?
公立は年間数万円程度、私立は30〜80万円程度+サポート校費用がかかる場合があります。国の就学支援金制度を利用できるケースもあるので、必ず学校に確認してください。
Q 通信制高校に進学すると友達ができないのでは?
友人関係は「広く浅く」ではなく「深く少数」になりやすい傾向があります。イベント参加やサポート校を通じて交友関係を築くことができます。
Q 学習面でついていけるか心配です
大丈夫です。勉強のやる気さえあれば、教員が親身になって教えてくれます。
また、4年間や5年間かけてゆっくり卒業を目指す生徒さんもいます。
本人の目標や学習スタイルに合った学校を選ぶことが重要です。
通信制高校に通ったから今の自分がいる
さまざまな理由から「やめとけ」と言われることもある通信制高校ですが、私は通信制高校を卒業したことを後悔していません。
不登校や高校中退を経験して塞ぎ込んでいましたが、通信制高校に編入して環境を変えたことで心境や生活が大きく変わったからです。
私のように環境を変えることで一歩を踏み出せることもあります。
「やめとけ」という言葉に振り回されてしまうのはもったいない。
通信制高校は通学タイプや行事・イベントの有無、サポートの手厚さなどさまざまですので、子どもの性格や興味、ニーズに合っていないと後悔してしまうかもしれません。
ホームページで学校の雰囲気を確認したり学校見学をしましょう。
どんな学校なのか、子どもに合っているのかを考えることが大切です。

全日制であれ、通信制であれ、高校進学はお子さんの人生の通過点にすぎません。重要なのはどの高校に通うかではなく、自立した大人になること。不安はたくさんあるでしょうが、否定ばかりするのではなく、背中を押してあげましょう。
▶ 30年後に向けて今できること