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吉田 克彦(公認心理師・精神保健福祉士)

スクールカウンセリング歴25年超、小学校・中学校・高校(全日制・定時制・通信制)でのスクールカウンセラーとしての活動経験あり。東日本大震災の被災地心理支援、業界最大手の化学製品会社の常勤カウンセラーなどを経て、現在は合同会社ぜんと代表。
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「教育虐待」とは子どもに無理な勉強を強制すること

教育虐待とは、子どもが学習する環境や過程において大人が過度な期待やプレッシャーをかけ、子どもの心身に害を与える行為を指します。

親や教師が子どもの能力を過大評価し、達成できない目標を設定することや、子どもの自己評価を無視した学習指導が該当します。

このような行為は、子どもの自尊心を傷つけ、自己評価を低下させ、学習意欲を喪失させる可能性があります。教育虐待が長期にわたって続くと、子どもは自己否定感を抱き、自己効力感が低下し、重大な精神的問題を引き起こす可能性があります。さらに、学業成績だけでなく、友人関係、自己イメージ、将来のキャリアなどにも悪影響を及ぼす可能性があります。

子どもが成長し、親よりも体力的に勝ってくると、家庭内暴力が発生することもあります。
最悪の場合は、家族内殺人や無理心中といった事態に陥ることもあり、とても危険です。

教育虐待により最悪の結果になった主な事件
→1977年 開成高校生殺人事件(Wikipedia)
→1980年 神奈川金属バット両親殺害事件(Wikipedia)
→2016年 名古屋小6受験殺人事件(Wikipedia)
→2018年 目黒女児虐待事件(Wikipedia)
→2018年 滋賀医科大学生母親殺害事件(Wikipedia)

教育虐待の背景

教育虐待とは、子どもの学習を促す立場の大人が、子どもの成長や発達を理解せず、過度な学習要求を押し付けることで発生します。その背景には、大人の過剰な期待や学習への無理解、社会の競争意識などがあります。

親自身の学歴や経済的な面、社会的な圧力、個人的な期待などが含まれています。他にも、親自身が過去に受けた教育や育てられ方が、教育虐待の原因となることもあります。さらに、社会全体の学習に対する価値観や期待、教育制度の問題なども背景に含まれます。

子どもに及ぼす影響

教育虐待は、子どもの精神的・身体的健康を損なうだけでなく、自己評価の低下や学習意欲の喪失、親や教師への信頼感の低下など、さまざまな影響を及ぼします。子どもの自己肯定感を低下させ、学習に対する恐怖感を増大させ、最終的には学校への不登校や、精神的な問題を引き起こす可能性があります。

さらに、教育虐待は子どもの社会性や友人関係、将来的な職業選択や生涯学習に対する態度にも影響を及ぼす可能性があります。

長期的な視点では、教育虐待が子どもの心の健康、対人関係、職業選択などに与える影響は深刻で、子どもが大人になった後も持続する可能性があります。

教育虐待のサインと原因

教育虐待は見えにくい虐待の一種であり、そのサインを見つけ出すことは困難です。
しかし、子どもが学習に対して過度のストレスを感じている場合、または学習に対する楽しさや好奇心を失っている場合、教育虐待の可能性があります。

周囲が気づくことで虐待がとまることもあります。

教育虐待かもしれない場面

子どもが過度のプレッシャーにより学習に対して恐怖感を抱いている場合、親や教師からの期待に応えようとするあまりに自己を過度に否定するような行動を示す場合は、教育虐待の可能性があります。

具体的には、過度の学習時間、睡眠不足、食事を抜く、過度のストレスや焦燥感を感じるなどの症状があります。
また、子どもが自身の能力を過小評価するようになったり、失敗を極度に恐れるようになったりする場合も警戒が必要です。

子どもが自分の意思を押し殺して親の期待に応えようとする様子、学習に対する楽しみや好奇心を失い、学習が負担や義務と感じられるようになった場合も、教育虐待のサインとなります。

なぜ教育虐待に陥ってしまうのか

周りがみんな中学受験をしているから、うちの子にも中学受験をさせて、いい学校に入ってもらわないと

自分は学歴がなくて就職の際に苦労したから、子どもには同じような思いはさせたくない

保護者の方の考えは自然なことでしょう。
ですが、子どもも「勉強だけではなく遊びたい」「楽しいことをしたい」という思いも当然です。
子どもの気持ちを無視して保護者の考えを押し付けるのは単なるエゴです。

教育虐待は、大人の子どもへの過度な期待や理解不足、子どもの自己評価を尊重しない態度、学習に対する誤解や社会的プレッシャーなどが原因で発生します。

特に、親が自身の成功や失敗を子どもに重ね合わせたり、社会的な競争意識に影響を受けて子どもに過度なプレッシャーをかけたりする場合、教育虐待のリスクが高まります。

また、教育に対する意識や価値観が、親から子どもへと伝えられ、親自身が理解できていない教育の目的や方法が子どもに対し強制されることも、教育虐待を引き起こす要因となります。さらに、親のストレスや不安、自己不全感、過度な責任感などが、子どもへの過度な期待やプレッシャーにつながることもある。

教育虐待を防ぐためにできることは?

教育虐待を防ぐためには、子どもの成績にこだわり過ぎず、学習を楽しませることが大切です。
また、子どもの目線になって考えることで、子どもの感じているストレスや不安を理解し、適切な学習支援を行うことが重要です。

子どもの成績にこだわり過ぎず、学習を楽しもう

学習は成績だけではなく、新しい知識を得た喜びや、問題解決の達成感などを楽しむことも大切です。
過度に成績にこだわると、子どもは学習そのものを恐れるようになり、勉強に励むどころか学習意欲を失う可能性があります。

成績だけでなく、学習プロセス自体を楽しむことを促すことが重要です。また、失敗を恐れずに新しいことに挑戦すること、自分自身の進歩や成長を認識することを子どもに教えることも、教育虐待を防ぐために重要です。さらに、子どもの興味や関心を尊重し、それを基にした学習活動を推奨することで、子どもが学習に楽しみを見出すことが可能になります。

進路選びも子どもの意見を尊重すること、そして保護者がやるべきこと

子どもの人生は、子どものものです。

決して、親が自慢するためのものでもなく、親が出来なかったことを代わりにかなえることでもありません。
親の思いを押し付けすぎることは、子どもの自主性を失わせてしまいます。無理な強制は止めましょう。

保護者がやるべきことは、子どもの生活をがんじがらめに縛り付け、監視することではありません。保護者は自分の人生を謳歌することです。

もちろん、家族とのふれあいや子どもとのコミュニケーションも大事です。それは、親の言いなりにすることではなく、親も子も楽しい時間を過ごすことです。

子どもの成績や学歴ばかりに目が向いてしまっているなら、ぜひ自分の生活を充実させてください。保護者が保護者自身を大切にして楽しく生活をしていれば、子どもは保護者の生き方にあこがれ、まねをしていきます。その結果、保護者が幸せに生きていれば、子どもも幸せを目指すことになります。

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投稿者プロフィール

吉田 克彦
吉田 克彦公認心理師・精神保健福祉士
不登校・引きこもりの家族相談を行って20年超。
スクールカウンセリングから、東日本大震災の被災地心理支援、企業内カウンセラーなどを経て、現在は合同会社ぜんと の代表。