学校に行けない期間が長くなると、勉強への不安や焦りを感じるのは当然です。
学校へ行かなくなってから、勉強もしなくなった。
朝からゲームや動画を見ている子どもを見ながら、
「今は休ませた方がいいのか」
「このままでは学力が落ちて手遅れになるのではないか」
「将来、進学も就職もできず引きこもってしまうのでは」
と心配する保護者の方が少なくありません。
学校と同じ時間割で勉強させようとすると強く嫌がる一方で、何も言わずにいると、このまま学習から完全に離れてしまうのではないかと不安になるものです。
選択肢は「勉強させる」か「完全に休ませる」かの二つだけではありません。
最初に見るべきなのは勉強の量ではなく、「うちの子ども現状で、どの程度なら学習ができるか」です。
この記事では、公認心理師・精神保健福祉士として25年以上家族支援に携わってきた視点から、不登校で勉強しない・できないときに、何を求め、何を急がず、どこから学びとのつながりを作り直していくかを整理します。
この記事でお伝えしたいこと
この記事は私たちが執筆監修を行っています
執筆・編集責任:吉田克彦(合同会社ぜんと代表 公認心理師、精神保健福祉士)
・家族支援25年以上、3000家庭以上の支援実績
・スクールカウンセラー歴20年以上。小学校、中学校、高校(全日制、定時制、通信制)全ての校種で勤務経験あり。
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学校に行けなくても、無理に学校レベルの学習をする必要はない
子どもが学校を休み始めると、親は「早く勉強の遅れを取り戻さなければ」と考えがちです。
しかし、その焦りが空回りしてしまい、子どもに強く当たってしまい、子どものやる気をそいだり、自己肯定感を低下させてしまうことがあります。
勉強はいつからでもスタートできます。あとから始めても大丈夫。
まずは、本人が今どの程度なら学ぶこととつながれそうかを考えましょう。
一方で、「今は休む時期だから、勉強のことは一切考えなくてよい」と一律に切り離す必要もありません。
重要なのは「勉強させるか、休ませるか」の二択で考えないこと。
その間にある「今できるさまざまな細かいつながり」です。
「勉強しない」と「今は勉強できない」は同じではない
親から見ると、子どもがゲームや動画は何時間もできるのに、勉強はまったくしない。
だから「やろうと思えばできるのでは?」と感じることもあると思います。
同じ「勉強していない」状態でも、子どもたちの背景には以下のような事情が重なっている場合があります。
「勉強しない」のではなく、「勉強できない」理由
- 強い疲労感: 学校や対人関係で心身が消耗しきっており、教科書を開く気力が湧かない
- 挫折感の蓄積: 「分からない」経験が重なり、教材を見るだけで自己否定的な気持ちになる
- 遅れへの圧倒感: 遅れが大きくなりすぎて、どこから始めればよいか見当もつかない
- 方法のミスマッチ: 渡された教材や学習のスタイルが、本人の特性や状態に合っていない
- 親との葛藤: 親から勉強を言われること自体に防衛的な抵抗が強くなっている
これらは原因を一つに特定して分類するためのものではありません。
「何が今の本人にとって勉強を重くしているのか」を見るための視点です。
「ゲームする元気があるなら勉強もできるはず」と考えたくなりますが、ゲームや動画はできても、教科学習には強い負担を感じることがあります。
できる活動があるからといって、同じように勉強にも取り組めるとは限りません。
子どもにとって学校や学習の何が負担になっているかはこちらの記事で解説しています。

まず守りたいのは、勉強量より「学習との接点」
この記事では、本人が「知る・読む・調べる・試す」など、学ぶことと何らかの形でつながっている状態を「学習との接点」と呼びます。これは学術的な分類や段階ではなく、今の本人が学びとどのようにつながれているかを見るための、本記事での実践的な考え方です。
学習との接点は、学校の教科を一日何時間勉強したかだけでは測れません。教科学習がほとんどできない時期でも、この接点が細く残っていれば、本人の状態が変わったときに学びを広げる足場になります。まず見るのは勉強量ではなく、今どんな形の接点が残っているかです。
構成要素:学習との接点は、教科書やドリルだけではない
子どもが教科書を開かなくても、学ぶ活動そのものがすべて止まっているとは限りません。本人の状態によっては、教科書やドリル以外の形から始まることもあります。
学習との接点の例
| 接点の形 | 具体的な取り組みの例 |
|---|---|
| 興味に触れる | 動画、本、漫画、ゲームの攻略情報を読む、検索する |
| 調べる | 好きなテーマや疑問に思ったことを自主的に深掘りする |
| 生活の中で使う | 料理の計量、買い物での計算、工作で手順や数量を扱う |
| 教科に軽く触れる | 教材を眺める、学校からのプリントを受け取っておく |
| できる範囲をやる | 以前にできた問題、比較的嫌ではない教科、簡単な内容 |
| 方法を試す | オンライン教材や家庭学習などを少し試してみる |
ただし、「好きなことなら全部が勉強だから、学校の教科勉強は一切不要である」という話にはしません。読む・書く・数量を扱う基礎的な力や、進路で必要になる学力が必要になる場面があります。「今すぐすべてを取り戻さなくてよい」ことと、「長い間、学習との接点がなくてもよい」ことは別です。
この表は、下から順に上がっていく段階論ではありません。「生活リズムが整うまでは勉強に触れてはならない」といった固定ステップに縛られず、今つながれそうな形をどこからでも選べる選択肢として見てください。
「勉強させること」が新しい負担になっていないかを見る
子どもの将来を考えているからこそ、子どもの勉強の遅れが気になるでしょう。
しかし、学習にこだわりすぎると、勉強自体が子供に大きな負担になる場合があります。
例えば、次のようなやり取りはしていませんか?
子どもへの負担になっている例
- 「学校に行かないなら、せめて家でこれくらいは勉強しなさい」と促す
- 毎日「今日は何ページ進んだ?」と確認し、問い詰める
- 良さそうな教材を、本人の同意なしに次々と買い与える
- 学校と同じ時間割を家庭で再現しようと強制する
- 親子の会話の多くが、勉強の話や進捗の確認ばかりになる
本人が勉強に対して前向きな時は、学習計画や記録が役立つこともあります。
しかし、本人の状態や意思を無視して「やらせるための管理」を強めるのは危険です。
圧力が強まるほど、子どもは教材を見るだけで避けるようになります。
親子の関係もぎくしゃくしてしまい、部屋から出てこなくなるかもしれません。
大事なのは「いつでも勉強できる」という接点であって、勉強の押し付けではありません。
学習の遅れによる不利益を減らす一方で、勉強を無理強いすることでのマイナスを作らない。
そのサジ加減が重要になってきます。
教科学習を始めるなら、「どこから?」を小さくする
教科学習に関心を持ってきた場合でも、いきなり「遅れを取り戻そう」とすると、
課題の大きさに圧倒されて続きません。まずは、本人が触れられそうな小さな入口を探します。
無理のない勉強の導入方法の例
- 比較的嫌ではない教科: 一番抵抗感の薄い1教科だけに絞る
- 以前できていた範囲: 比較的取り組みやすい、数年前の基礎的な内容まで戻る
- 正解しやすい簡単な問題: 「1日5分」「1問だけ」など、確実にできた感覚を持てるボリュームにする
- 本人が興味を持っている内容・進路上必要な内容: 関心のある単元や、必要性の高い部分から選ぶ
- 本人が選べるもの: 「どの教科からなら触れてみたいか」など、本人が選べる部分を残す
最初の段階では、「どれだけ学校の授業より遅れているか」を気にするより、
「どこなら今の状況で楽しく取り組めるか」を意識しましょう。
子どもとどのように決めていけばいいかについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
学習の遅れや将来が心配でも、全部を一気に取り戻そうとしない
「このままでは高校に行けないのでは」「手遅れになるのではないか」という不安に、「遅れは必ず取り戻せます」と一律に保証することはできません。本人の年齢や学年、基礎学力、休んだ期間、進路の目標によって事情は変わるからです。
しかし、「何か月休んだから、その期間の全教科を同じように全部取り戻さなければならない」とも限りません。将来必要になる学力は、本人が進む道によって違います。すべての教科を同じ強さで戻す必要はなく、進路がある程度見えてくれば、そこから逆算して必要な学習を絞り込むことができます。
今はまだ進路が決まっていなくても焦る必要はありません。まずは学習との接点を細く残しておくこと自体が、後で本人が「これをやりたい」と思ったときに学びを広げるための貴重な足場になります。将来の自立を考えることは、「今すぐ無理に勉強させる」ことと同じではありません。今の負担を増やしすぎず、将来本人が選べる道につながる学びを細く残していく視点が有効です。
家庭学習・オンライン教材・家庭教師は「何が一番よいか」より相性で選ぶ
学習を再開するとき、方法の候補はいくつもあります。自宅での自主学習、学校からのプリント、オンライン教材、家庭教師、オンライン家庭教師、個別指導塾、学校外の教育支援センターやフリースクールなどです。
ここで大事なのは「どれが優れているか」という評判ではなく、「今の本人に合うか」という相性です。
人と関わるのが負担な時期には一人で進められるオンライン教材のほうが続くこともあれば、一人だと始められない子には誰かと一緒のほうが合うこともあります。方法を決める際は、「どの教科なら?」「紙とオンラインならどちらがまだマシ?」など、選択肢を小さくして本人の意思を確認しながら、その時期のエネルギーや特性に合うものを選びます。
なお、義務教育段階では、一定の要件の下で、自宅や学校外で行った学習の成果が学校の成績評価に考慮される場合があります。ただし出席扱いや評価の条件などの具体的な扱いは、学校段階や連携状況によって異なるため、利用を考える際は在籍校に確認してください。
※それぞれの具体的な特徴は、不登校中の家庭学習やオンライン教材の活用、オンライン家庭教師の活用も参考にしてください。
親は3つの問いで、学習との接点を考える
「勉強させるべきか、まだ休ませるべきか」と迷ったときは、次の3つの問いに分けて家庭内で状況を整理していきます。
1. 今、何が勉強を重くしている?
原因を正確に言い当てる必要はありません。「親から言われると拒否するが自分で調べることはある」「教科書は開かないが動画なら見る」といった違いから、何が本人のブレーキになっているかを探ります。声をかける際も、「今、勉強で一番しんどいのは何?」「教材だけ置いておく?」など、「勉強する?」という大きな問いでは答えにくいときは、問いを小さくできます。
2. 何なら、学ぶこととつながっていられそう?
本格的な教科学習に限定せず、本や漫画を読む、好きな動画を見る、得意教科だけ触る、プリントだけ受け取っておくなど、今維持できそうな最も細いつながりを見つけます。「これは勉強と言えるか」と線を引くより、学ぶことから完全に離れずにいられる接点を重視します。
3. 次に少し広げるなら、何ができそう?
今ある接点から、少し広げられそうなら「5分だけ」「1問だけ」など無理のない範囲で考えます。ただし、広げることは必須ではありません。本人が疲れている時期は、今ある接点を増やさずに維持すること自体が、十分な一手となります。
学習との接点を整理するワーク
勉強時間を採点するための表ではありません。「できていないこと」だけでなく、今も残っている接点を見つけるためのメモとしてご活用ください。
- 今、勉強を重くしていそうな要素(重み):(例:現在の学年のワークを全部やらなければならないという圧倒感)
- 今でも学ぶこととつながれているもの(接点):(例:好きな分野の歴史の本を読むこと、興味のある動画の検索)
- 負担が少なく試せそうなこと(広げる選択肢):(例:オンライン教材の体験版を5分だけ一緒に操作してみる、あるいは『今は維持でよし』とする)

勉強時間が長ければいい、短いのはダメという単純な話ではありません。昨日よりも何が身につくか、を重視しましょう。
まとめ
子どもが不登校になり、家で勉強しない状態が続いたとき、焦りから無理に勉強を再開させようとしたり、逆に「何もさせてはならない」と極端に学びを諦めたりする必要はありません。
- 勉強しない=怠けや甘えと決めつけず、向かえない背景(疲労や圧倒感)に目を向ける
- 最初に見るべきは勉強量ではなく、今できる「学習との接点」
- 接点は教科学習だけでなく、読書、動画、調べ物、趣味など多様な形がある
- 休養が必要な時期に勉強を強いることで、新しい負担を作らない
- 教科学習を再開するときも、遅れた範囲を一気に全部取り戻そうとせず「どこなら再び触れられそうか」から考える
- 将来必要な学力は進路によって変わりますので、今は将来の選択肢をつなぐ接点を細く残すことを優先する
不登校の勉強で最初に考えたいのは、「何時間勉強させるか」ではありません。今の子どもが何なら負担が少なく、学ぶこととつながっていられるか。その接点を見つけ、本人の状態に合わせて少しずつ形を変えていくことが、将来の選択肢を残する現実的なサポートとなります。
引用参考文献
- 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)
- 文部科学省「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について(通知)」(令和6年8月29日)
- 文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」(令和5年3月31日)
- 文部科学省「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」
- 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(令和7年10月29日)







