「10人しかいない会社でストレスチェックをやって、高ストレスが出たら社長にバレるんじゃないか」
従業員からそう聞かれたら、どう答えたらいいでしょうか。

結果が社内で共有されると思うと、誰もが正直に答えられなくなります。
この仕組みが成り立つかどうかは、ストレスチェック制度そのものの信頼性に関わる問題です。

この記事では、外部委託した場合に個人の結果がどこまで会社に伝わるのか、高ストレス者の面接指導を受けると何が起きるのかを、厚生労働省のマニュアルに沿って整理します。そのうえで、ぜんとが提供している公認心理師との面接という選択肢についてもご紹介します。

この記事でお伝えしたいこと

吉田 克彦

吉田 克彦

公認心理師
不登校の家族支援25年超

外部委託する場合、個人のストレスチェック結果が社長に届くことはありません。
ただし、従業員が医師の面接指導を申し出た場合、その事実自体は会社に伝わります。
10人の会社では「誰が申し出たか」まで類推される現実があります。
ぜんとでは、医師の面接指導の前に公認心理師と面接できる仕組みを用意しています。

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この記事は以下の専門家によって執筆・監修されています。

執筆・編集責任:吉田克彦(合同会社ぜんと代表 公認心理師、精神保健福祉士)

  • 不登校の家族支援25年以上、3000家庭以上の支援実績
  • スクールカウンセラー歴20年以上。小学校、中学校、高校(全日制、定時制、通信制)全ての校種で勤務経験あり。
    →詳しいプロフィールはこちら

医学監修:友常祐介(社会医学・産業衛生指導医、労働衛生コンサルタント、医学博士)

個人のストレスチェック結果は社長にも上司にも届かない

従業員の不安の中心にあるのは「自分が答えた内容や、高ストレスかどうかの判定結果が、社長や上司に見られるのではないか」という点です。外部に委託した場合、この心配は基本的に当たりません。

結果は業者から本人に直接届く仕組みになっている

外部委託でストレスチェックを実施した場合、個人の結果は業者から直接本人に送られます。厚生労働省の50人未満向けマニュアルにも「他者に内容が分からない形で労働者本人に通知されるようにしなければなりません」と書かれています。

通知の方法は、本人あてに届く電子メールか、封入された封書です。
会社に一括で届いて総務が開封する、という形にはなりません。

社長も、人事も、直属の上司も、個人の結果を見ることはありません。
会社が個人のストレスチェック結果を受け取るには、本人の同意が必要です。同意なく会社に提供されることはない、というのが法律の設計です。

会社がわかるのは「誰が受検したか」までで、「誰が高ストレスか」はわからない

会社側が把握できるのは、受検したかどうか、という事実までです。受検していない人への声かけのために、この情報は必要になります。

その先の「誰が高ストレス判定だったか」は、会社には伝わりません。
結果の中身は、本人と業者側の実施者(医師・保健師など)だけが知る情報です。

編集長:吉田

ストレスチェックは約1割の人が高ストレス判定になるように設計されています。10人の会社なら、毎年1人前後は該当する計算です。これ自体は珍しいことではなく、該当したからといって病気というわけでもありません。

医師の面接指導を申し出ると「申し出た事実」は会社に伝わる

個人のストレスチェック結果は社内に届きませんが、高ストレスと判定された人が医師の面接指導を希望する場合は、事情が少し変わります。面接指導を受けるには、会社を通して日程調整をする必要があるためです。

面接指導の申出は会社に届き、日程調整のやりとりが発生する

高ストレスの判定を受けた従業員が「医師の面接指導を受けたい」と申し出た場合、申出書が会社に届きます。
会社は、面接指導を担当する医師と日程を調整します。業務時間中に受けられるよう、時間の確保も会社の役割です。

つまり、面接指導を申し出た時点で「高ストレス判定だった」ことが会社側にわかる構造になっています。これは法律上の手続きとして避けられません。

面接指導の中身は会社に伝わらない(診断名や症状は出てこない)

面接指導で何を話したかは、会社に伝わりません。
厚生労働省のマニュアルには「診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の生データや詳細な医学的な情報は事業者に提供してはいけない」と明記されています。

会社に届くのは、医師の意見書だけです。
この意見書には、就業区分(通常勤務・就業制限・要休業の3区分)と、必要な措置の内容が書かれています。
「労働時間を短縮したほうがよい」「深夜業を減らしたほうがよい」といった業務上の配慮に関する意見です。

病名や症状が会社に知らされることはありません。

10人規模だと「誰が申し出たか」まで類推されやすい

ここまでが法令の設計です。
ただ、現実には小さな会社ならではの事情が残ります。

10人の事業場で、ある日「面接指導の日程調整をしたい」という連絡が業者から総務担当者に来る。
当事者が誰かを特定するのは難しくない状況です。面接指導の時間帯に特定の社員が席を外していれば、周囲は気づきます。

厚労省のマニュアルにも、小さな事業場では「個人特定のリスクが高く、社内で管理していること自体への労働者の不安が生じやすい」と注意書きがあります。
法令は個人情報を守る仕組みを用意していますが、物理的な近さから来る類推までは防げないのが実態です。

従業員が「医師の面接指導を受ける」と決めるとき、迷いの一因になっているのがこの部分です。

医師面接の前段階に、公認心理師との面接という選択肢がある

高ストレスと判定された従業員が、医師の面接指導をいきなり申し出るのはハードルが高い。
この課題に応える形として、公認心理師が本人の相談を受ける仕組みがあります。

公認心理師との面接は会社への報告義務がない

ストレスチェック制度上、会社に申出が届くのは「医師の面接指導」の場合です。
ぜんとが提供している公認心理師との面接は、制度上の面接指導とは別枠の、ご本人の相談先として位置づけた仕組みです。

この面接は、会社への報告義務がありません。
申し出た事実も、面接の中身も、本人の同意なく会社に伝わることはありません。

「医師の面接指導はちょっと大げさに感じる」「社内で当事者がわかってしまうのは避けたい」という場合に、まず心理師と話す場として使えます。

心理師面接で整理できる3つのこと

心理師と話すことで整理できるのは、主に次の3つです。

心理師との面接で整理できること

  • 医師の面接指導を受けたほうがよい状態かどうか
  • 医師の面接指導に進んだ場合、会社にどこまで情報が伝わるか
  • 医療機関の受診を考えたほうがよい状態かどうか

1つ目は、医師面接に進むか自分で決めるための相談です。
心理師は診断をする立場にはありませんが、話を整理するなかで「これは医師にも見てもらったほうがいい状態」なのか、「少し話すだけで楽になる状態」なのかの見立てがつきやすくなります。

2つ目は、医師面接に進んだときに会社に何が伝わるかを、事前に本人が把握できる点です。
「申し出れば社長にバレる」と漠然と思っていた状態から、「申し出たという事実だけは届く。中身は届かない」と具体的に理解したうえで決められます。納得して申し出るのと、不安なまま申し出るのとでは、その後のやりとりのしやすさが変わります。

3つ目は、医師面接指導の枠を超えた相談です。
話を聞くなかで、眠れない状態が続いている、食欲が落ちて体重が減っている、といった身体面のサインが見えてくることがあります。そういう場合は、面接指導よりも先に医療機関を受診することをお勧めすることもあります。心理師は診断はできませんが、受診を促すきっかけを作ることはできます。

編集長:吉田

実際に高ストレスと判定された方とお話しすると、「医師の面接までは受けたくない。でも話を聞いてほしい」という方がほとんどです。心理師との面接のあとに「やっぱり医師とも話したい」と希望される方もいらっしゃいますし、「話しただけで楽になった」で終わる方もいらっしゃいます。

会社にとっても、心理師面接が挟まるメリットがある

心理師面接の仕組みは、従業員側のハードルを下げるだけでなく、会社側にも意味があります。

高ストレスの判定が出た従業員が、誰にも相談しないまま放置される事態を防げます。
マニュアルにも、面接指導を受けない従業員を放置しないように、相談窓口を案内することが重要と書かれています。

また、医療機関への受診が必要な状態の従業員を早めに受診につなげられれば、長期の病休を防げる可能性が高まります。
メンタル不調による病休は復帰までに時間がかかりやすく、人数の少ない会社ほど業務への影響が大きくなります。

心理師面接以外にも、従業員が使える相談先がある

高ストレス判定を受けた従業員が相談できる先は、心理師面接だけではありません。
選択肢を整理しておくと、従業員への案内がしやすくなります。

高ストレス判定を受けた従業員が使える相談先

  • 委託業者が提供する相談サービス(契約内容による)
  • 厚生労働省が運営する「こころの耳」(電話・メール・SNS、無料)
  • 地域産業保健センター(医師の面接指導を無料で受けられる。50人未満の事業場が対象)

こころの耳は匿名で使える公的な窓口で、高ストレスではない方も相談できます。
地域産業保健センターは、医師の面接指導を無料で受けられる国の仕組みです。業者のオプションで有料の面接指導を契約するかわりに、ここを使う選択肢があります。

委託先を選ぶときは、こうした相談先をきちんと案内してくれる業者を選ぶのが無難です。
業者選びのポイントは、費用と業者の選び方の記事で詳しくまとめています。

まとめ

外部委託でストレスチェックを実施すれば、個人の結果が社長や上司に伝わることはありません。結果は業者から本人に直接届き、会社が受け取るには本人の同意が必要です。

ただし、医師の面接指導を申し出た場合は、日程調整のため「申し出た事実」だけは会社に伝わります。面接指導の中身や病名は伝わりませんが、10人規模の事業場では当事者が類推されやすいのが現実です。

この現実に応える仕組みとして、医師の面接指導の前に公認心理師と話す選択肢があります。心理師との面接は会社への報告義務がなく、医師面接に進むべきかどうか、会社にどこまで情報が伝わるか、医療機関を受診したほうがよい状態か、といった判断の材料が得られます。

高ストレス判定は10人の会社なら毎年1人前後は該当する、ごく普通のことです。相談先を整えておけば、従業員も正直に答えやすくなり、ストレスチェック制度が本来の役割を果たせます。

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