「外部に頼むとお金がかかるし、自分たちでできないの?」
社長にそう聞かれたとき、どう答えたらいいでしょうか。
自社で実施すること自体も可能です。
ただ、50人未満の会社の場合、厚生労働省は外部委託を推奨しています。
理由は「個人情報を社内で扱わなくて済むから」です。
この記事では、外部委託と自社実施で何がどう違うのかを比較します。
読んでいただければ、社長への説明材料も揃います。
この記事でお伝えしたいこと
▶ 50人未満の事業場へのストレスチェックはぜんとにおまかせ!(近日公開)
執筆・編集責任:吉田克彦(合同会社ぜんと代表 公認心理師、精神保健福祉士)
- 不登校の家族支援25年以上、3000家庭以上の支援実績
- スクールカウンセラー歴20年以上。小学校、中学校、高校(全日制、定時制、通信制)全ての校種で勤務経験あり。
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厚労省のマニュアルが「外部委託を推奨」と明記している
厚生労働省が出している50人未満向けの実施マニュアルには、「労働者数50人未満の事業場においては、原則として、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます」と書かれています。
推奨の理由は「個人情報を社内で扱わなくて済む」こと
外部委託すると、従業員の回答データや個人の結果は、すべて業者側で処理されます。マニュアルにも「ストレスチェックの個人結果等の労働者の健康情報の取扱は外部機関で完結し、事業場内では取り扱いません」と明記されています。
社長も、総務も、上司も、誰も個人の結果に触れない。この仕組みがあるから、従業員は「正直に答えても大丈夫」と思えます。
10人の会社では、全員の顔が見えます。「あの人、最近元気ないよね」という話が日常的に出る距離感です。そこで個人のストレスチェック結果を社内の誰かが扱うとなると、結果が漏れるリスクは大きい会社とは比較になりません。だから外部に出すのが合理的なのです。
自社で実施すると、これだけの負担が発生する
自社実施は制度上は可能です。ただし、マニュアルの第8章に自社実施の留意点が7つ並んでいます。どれも「そこまでやるのか」と思うレベルの内容です。50人未満の会社がこれを全部クリアするのは、率直に言ってかなり厳しいです。
医師か保健師を自分で確保しなければならない
ストレスチェックには「実施者」が必要です。実施者になれるのは、医師、保健師、一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限られます。
外部委託すれば、業者側の医師や保健師が実施者を務めるので、自分で探す必要はありません。自社実施の場合は、この資格を持つ人を自力で見つけてこなければなりません。
さらに、社長や人事権を持つ管理職は、ストレスチェックの実施事務に関わることができないという制限があります。「社長が全部見て判断すればいいじゃないか」とはいかないのです。10人の会社で社長がダメとなると、実務を担える人がほとんどいなくなります。
個人結果を社内で扱うので、情報漏洩のリスクが跳ね上がる
自社実施の場合、社内の実施事務従事者が個人の回答データや結果を扱います。この人には法律で守秘義務が課され、違反すると罰則があります。
制度上はそうなっていますが、現実の問題として、小さな会社で「あの人には絶対に言わない」を徹底するのは簡単ではありません。マニュアルにも、小規模な事業場では「守秘義務が課されることを含め役割の周知、運用の徹底がなされない限り、事業者に個人情報が容易に把握されてしまうのではないかという不安が生じやすく、ストレスチェック制度への労働者の協力が得られず、適切な実施が難しくなります」と書かれています。
結果の通知でも、紙の封書を社内で配れば誤配布のリスクがあります。メールなら誤送信の可能性があります。外部委託すれば、この通知も業者から本人に直接届くので、社内での取り違えは起きません。
集団分析も面接指導も、社内だけで完結させるのは難しい
ストレスチェックの結果を職場単位でまとめて傾向を見る「集団分析」。外部委託すれば、業者が個人を特定できない形に加工して結果を出してくれます。自社で行う場合は、個人が特定されない方法を自分たちで徹底しなければなりません。マニュアルは「社内の人間関係が近いことから、個人特定のリスクが高く、社内で管理していること自体への労働者の不安が生じやすい」と指摘しています。
高ストレス者が出たときの面接指導も同様です。外部の機関に依頼すれば、面接指導は社外で完結し、会社に届くのは医師の意見書だけです。社内で面接指導を行おうとすると、医師を確保した上で、会社にどこまで報告するかの線引きを整理する必要があります。個人情報と就業上の措置に必要な情報の境界が曖昧になりやすいと、マニュアルでも注意されています。
結果の保存についても、自社で保管するなら社内サーバや保管庫にパスワード設定などの厳格な情報管理が必要です。外部委託なら、個人結果の保管は業者側で行われます。
外部委託すると会社がやることはこれだけ
自社実施の負担と比べると、外部委託した場合に会社がやることは驚くほど少ないです。
会社がやるのは「担当者を決める」「案内する」「時間を確保する」の3つ
社内の実務担当者を1人決めます。この人は業者との連絡窓口になるだけで、個人のストレスチェック結果に触れることはありません。
従業員に「いつ、どうやって受検するか」を案内します。
受検と面接指導の時間を業務中に確保します。
調査票の配布・回収、結果の通知、高ストレス者への面接指導の勧奨、個人結果の保管は、すべて業者側の仕事です。
個人結果は業者の中で完結するので「バレる」心配がない
個人のストレスチェック結果は、業者から本人に直接届きます。本人が「会社に見せてもいい」と同意しない限り、社長にも上司にも伝わりません。
面接指導を受けたいと本人が申し出た場合は、「申出があった」という事実だけが会社に伝わります。結果の中身が伝わるわけではありません。面接指導後に届く医師の意見書も、就業上の措置に必要な最小限の情報だけが書かれています。診断名や具体的な症状が会社に知らされることはありません。
この仕組みがあるからこそ、従業員は安心して正直に回答できます。ストレスチェックの目的はメンタルヘルス不調の予防です。正直に答えてもらえなければ、意味がありません。外部委託は、従業員の正直な回答を守る仕組みでもあるのです。
まとめ
50人未満の会社がストレスチェックを実施する場合、厚生労働省のマニュアルは外部委託を推奨しています。理由は、個人情報を社内で扱わずに済むからです。
自社実施は制度上は可能ですが、実施者(医師・保健師)の確保、個人結果の取り扱い、情報漏洩への対策など、小さな会社には現実的でない負担が複数発生します。外部委託すれば、会社がやることは担当者を決めること、従業員に案内すること、受検時間を確保することの3つだけです。
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