お子さんの進路について、通信制高校を検討している時、周囲から「やめとけ」といわれることがあります。
「通信制高校なんてやめておけ」などと言われると、不安になることも多いでしょう。

実際に、中学生の不登校に関する保護者カウンセリングをしていると、家族から「通信制高校なんてやめておけ」と止められたというエピソードをよく聞きます。


進路の選択は、お子さまの将来だけでなく、ご家族の生活にも大きく関わる大切なテーマです。
そこで、通信制高校に通って卒業した方に体験談を書いていただきました。

もちろん、それぞれの状況によって最適な選択肢は異なりますが、「通信制高校とはどのような場所なのか」「やめとけと言われる理由は本当に正しいのか」を一緒に考えるきっかけになれば幸いです。

この記事でお伝えしたいこと

吉田 克彦

吉田 克彦

公認心理師
不登校の家族支援25年超

通信制高校に対する漠然とした不安や偏見を持っている、お子さんやご家族は多くいます。
この記事は、実際に通信制高校を卒業し、社会人として活躍されているライターさんにお願いをして書いて頂きました。 実体験を元に通信制高校の実際の様子をお伝えします。

中学生の不登校についてはこちらの記事にまとめています!
中学生の不登校|知っておくべき原因・対応・進路のすべて【心理師解説】

なぜ通信制高校は「やめとけ」と言われるのか

この記事は私が書きました!

  • ライターネーム:やん子(30代女性)
  • 保有資格:教育職員免許状
  • 最近頑張っていること:早起き
    ※情報は執筆時(2025年)のものです。

中学時代に不登校だった子どもや高校を中退した子どもの進学・転入先の候補として通信制高校が挙げられます。
ネットで通信制高校と検索すると「やめとけ」という声があり不安になってしまう人もいるのではないでしょうか?
筆者(やん子)には、全日制の高校を中退し通信制高校に編入した経験があります。

通信制高校はなぜ「やめとけ」と言われるのか、本当に避けた方がいいのか、通信制高校の実態と魅力について解説します。

実体験も交えてお伝えするので、通信制高校に不安や疑問を抱いている人や進路に悩んでいる人の参考になれば嬉しいです。

まずは、通信制高校がなぜやめとけと言われているのか、その理由となる通信制高校のデメリットを5つ解説します。

周囲から偏見の目で見られることがある

通信制高校は全日制の高校よりも通学頻度が少なく、校則も自由なところが多いです。
そのため、「学校に行っていないのでは」「大学進学や就職が難しくなるのでは」と偏見の目で見られることがあります。

私は通信制高校に在籍しながら併設のサポート校に通学していました。
制服がなく、自由な時間に登校できるというサポート校でした。
「平日の日中に私服で出かけるなんておかしい」と近所で噂になっていたようです。

校則がゆるいため、化粧をしたり、髪を染めたりしていたので、警察に補導されかけたことがあります。

通信制高校についてテレビで紹介される機会も増え、少しずつ変わってきてはいます。
しかし、相変わらず「通信制高校は落ちこぼれ」「人間関係が上手く行っていない生徒が行く高校」という考えを持っている人がいるでしょう。

学校の形も多様化していますが、やはり高校生=毎日学校に通うのが当然と考えている人が多いのではないでしょうか。

繊細すぎて学校に行けなくなり通信制高校に来る生徒さんも多くいます。な方も多くいます。
繊細なお子さんの中には、周囲の目をとても気にする方もいるでしょう。

【解説】
偏見は「情報不足」から生まれることが多いです。
お子さんの将来を心配される当然ですが、正しい情報を得て偏見を取り除きましょう。

学力の向上が難しい

通信制高校は自身で学習を進めるため、継続的な学習をするには相当の努力が必要です。
「学力向上ではなく、卒業出来れば充分」と最低限の学習しかしない通信制高校も珍しくありません。

私が通っていた通信制高校は、レポートで単位の取得が可能で、サポート校の授業も1日3時間程度でした。

サポート校は「まず登校」が目標のため、好きな時間に登校できました。
6時間授業が週5日がある全日制高校と比較すると、学習時間は少ないです。

通信制高校は自由な時間が多いため、自ら勉強に取り組めば学力の向上は期待できるでしょう。

しかし、全日制の高校のように毎日先生のサポートを受けられるわけではないので、すぐにわからないところを質問するのが難しいです。

通信制高校は大学進学を考えていない生徒も多く、専門学校や就職など進路はさまざま。
そのため、周囲と切磋琢磨して学習に励むには適していない環境と言えるでしょう。

【解説】
「学力が伸びにくい」と感じやすい背景には、生活リズムの乱れや自己管理の難しさが関係していることもあります。
勉強は急がなくていつでもできます!!
お子さまが安心して勉強に取り組めるよう、家庭での声かけ(例:「今日はここまでできたね」)や学習支援の仕組みを活用すると効果的です。

友人を作る機会が少ない

通信制高校は全日制高校のように毎日通う必要がなかったり、オンラインで完結します。
そのため、友人を作る機会が減ってしまうデメリットがあります。

イベントを多く開催する通信制高校やサポート校もありますが、基本は自由参加。
自分から行動するタイプであれば、イベントに参加して友人を作れますが、勇気が必要です。

通信制高校は全日制高校のように大人数のクラスに属することがありません。

クラスがないことは仲の良い友人とクラスが離れてしまったなど人間関係に悩むことがない気楽さはありました。しかし、クラスメイトと共に合唱コンクールや文化祭、体育祭といった行事に取り組んだり、同じ制服を着た友人と放課後を過ごしたりしている全日制高校の友人を見ると少し寂しく感じました。

テレビドラマなどでよく描かれる“青春”をイメージしていると、通信制高校の現実とギャップが生じると考えられます。

【解説】
友人関係の希薄さを不安に感じる気持ちは良くわかります。しかし、友人が多いことがメリットだけではありません。いじめやトラブルで悩むことも増えます。友人の数は関係ありません。本人の性格に合った人間関係のスタイルを認めてあげることが、安心につながります。

退学する人が多い・卒業に時間がかかる

通信制高校やレポートの作成やスクーリングを自身で管理して進めるため、単位を取得できずに退学してしまったり、卒業するのに何年もかかってしまう人がいます。

入学金や学費を払っているのに辞めてしまうのは、もったいないですよね。
全日制高校からの転入で通信制高校を選び、退学すると自己肯定感の低下にも繋がります。

通学型の通信制高校やサポート校、オンラインでサポートを受けられる学校が増えているため、不安な場合はサポートが手厚い学校を選びましょう。

【解説】
通信制高校は「自分のペースで進められる」一方、計画的に取り組む力が求められます。見学時に「提出物の管理方法」「欠席時のフォロー体制」などを確認すると安心ですね。

お金がかかる

通信制高校は私立・公立などさまざまな学校がありまる。
選ぶ学校によっては全日制高校より費用がかかることがあります。

学費がかかる(サポート校の費用が追加される場合も)

通信制高校の学費に加えてサポート校に通う場合はサポート校の費用も必要になります。
保護者にとっては大きな負担となるでしょう。

私が卒業した通信制高校もサポート校に通学するタイプでした。
全日制の私立高校くらいの学費がかかったと記憶しています。

通学費用がかかる

私が通っていた当時は、サポート校に通う場合、学校ではないため通学定期を作ることができず、通勤定期で通っていました。
現在はサポート校も通学定期の対象になっていますが、制度が変わることがあるので注意が必要です。

スクーリングや行事に参加する場合の費用が掛かる

私の場合は学校の本校が離れた場所にあったため、年に1度スクーリングに行くために何万円もかけていました。

このように、通信制高校は選ぶ学校や状況によりお金がかかる場合があります。

公立の通信制高校は学費が安いことが多いので、費用が心配な人は公立を選ぶなど学校選びが重要になるでしょう。高校無償化の地域であっても、学校によっては対象外となることがあるので注意が必要です。

【解説】
学費やサポート校費用は大きな負担になり得ますが、国の「就学支援金制度」や自治体の補助が使える場合もあります。
必ず通信制高校に直接確認し、家庭の経済状況に合った選択をしましょう。

高校は多様化しつつある

通信制高校の形は日々進化しています。
通信制高校と一口に言っても、以下のようにさまざまな学校があります。

多様化する高校生活の例
  • 全日制高校のように毎日通学する学校
  • レポートの作成を助けるサポート校、
  • 予備校と一体になって大学進学を目指す学校。
  • オンラインで授業が受けられて自宅にいながら高校卒業を目指せる学校

ここに例として挙げた学校以外にも様々な学びの形があります。
そのため、子どもの性格や興味、住んでいる場所に合わせて学びのスタイルを選べます。

通学コースを設けている学校も週1のみや毎日など自由に設定できるので、
「全日制高校のように毎日通いたい」
「無理せず少しずつ学校に行きたい」
など自分のペースで通えます。

行きたい!と思ったときに行く場所があるのは、私にとって大きなメリットでした。

完全に周囲の偏見の目を無くすというのは難しいかもしれませんが、徐々に通信制高校もひとつの選択肢として世間に浸透しつつあるのです。

通信制高校がおすすめできる3つの理由

「やめとけ」と言われやすい通信制高校への進学。
ここまで説明してきたように確かにいろいろな負担があるのも事実です。

しかし、実際に通信制高校に通っていましたが、全く止めるべきとは思いません。
むしろ、通信制高校という選択は自分にとっては必要だったと感じています。

どうして、私が通信制高校に通って良かったと感じているのか、ここからは通信制高校のメリットや最近の学校事情について紹介します。

理由1:通信制高校は高卒資格が取れるため進学も可能

通信制高校に通うと、大学進学は難しいのでは?と考えていませんか?

通信制高校を卒業すると、全日制高校と同じ高卒資格が取得できます。そのため、全日制高校を卒業した人と同じように大学受験をしたり、専門学校に進学したり、就職することが可能です。

大学進学に力を入れている通信制高校もあります。学校によっては指定校推薦で大学に入学できる場合もあるほどです。

実際、私は現役で私立の4年制大学に進学し、教員免許をとりました。
受験時に通信制高校でも他の受験生との差別は一切なく、無事合格できました。

私が卒業した通信制高校では、サポート校の先生による受験対策や就職面接の対策があり、
同級生も大学や専門学校に進学したり、就職をしたりとさまざま。

「通信制高校に進学したら、大学進学は難しい」というのは全くの見当違いです。

理由2:同じ経験をした仲間に出会える

通信制高校は、不登校経験のある生徒や全日制の高校を中退した経験のある生徒が多く通います。

そのため、似た境遇の生徒が集まりやすく、同じ経験を持つ仲間との出会いがあります。

不登校だった事実を隠さず話せたり、悩みを共有できる友人を作れるのは私自身はもちろん、家族にとっても大きな安心材料でした。

私も全日制高校で不登校からの中退を経験しました。

「このままでは進級が難しいからとりあえず辞めよう」と、高校を辞めたは良いものの、
次が何も決まっておらず家にいるだけだった日々。

周囲には全日制の高校に通っている友人が多かったため、“私は周囲のように普通の高校生活を送れなかった”と塞ぎ込み、連絡を取ることができませんでした。
通信制高校への編入も何だか恥ずかしく思い、周囲に隠していました。

しかし、通信制高校に編入して不登校や中退を経験した多くの仲間に出会い、
“ありのままの自分”を受け入れられて考えが変わりました。

同じ境遇を経験したからこそ話せる内容もあり、次第に私は堂々と外に出るようになりました。
家の中で塞ぎ込んでいた私が大学進学を考えるようになったのは、
間違いなく通信制高校に編入して出会った友人のおかげです。

全日制高校のように文化祭や体育祭などイベント、部活動を積極的に行っている通信制高校もあります。

前の在籍校で取得した単位を引継ぎできるケースもある

通信制高校は学年ではなく「単位制」を導入している学校がほとんどです。
卒業に必要な74単位さえ取得すれば、留年を気にせず3年で卒業できます。

全日制高校のように3年で卒業できるため、友人と同じタイミングで大学や専門学校への進学・就職できます。
3年で卒業できることは、私が定時制高校ではなく通信制高校を選んだ理由のひとつです。

大学に進学するとさまざまな年齢の学生がいたので気にすることでは無かったですが、当時の私は、少しでも全日制高校の友人に遅れを取りたくないと考えていたため、同じタイミングでの高校卒業は魅力でした。

全日制の高校に通っている人で中退や転入を考えている場合、既に取得した単位を引き付ぎできる場合があります。

編入するとゼロからではなく、頑張った実績をそのまま活用できますよ!

理由3:働きながら高校生活が送れる

通信制高校は全日制の高校に比べて校則が緩く、バイトに対しての制限がない学校がほとんどです。

学校に通う時間が少ないぶん、時間ができるので高校生でも多くの時間でバイトや趣味の活動が可能です。社会人として働きながら通信制高校に通う人もいます。

アルバイト経験はお金を稼ぎ以外に、社会人としてのマナーや立ち居振る舞いを身に付けられます。
アルバイトで学んだことが仕事に活かされているという人も多いのではないでしょうか。

アルバイト禁止の全日制高校もあり、自由にアルバイトができるのは自由な時間が多い通信制高校ならではでしょう。

【解説】
アルバイトに限らず、さまざまな活動をしている生徒がいます。
最近では、高校野球で甲子園に出場する通信制高校も増えました。
他にも、プロスポーツや芸能界で活動しながら、通信制高校で効率よく勉強をするという高校生も増えました。

【解説】
「不登校でも安心して通える仕組みがある」「自由な時間を活用できる」といった特徴は、子どもの自己効力感(自分はできるという感覚)を育てる大きな助けになります。
自信なしでも大丈夫、自分の認め方

通信制高校はやめた方がいいか悩む時に、よくある質問

Q
 通信制高校を卒業すれば、大学進学は本当に可能ですか?

A

はい。通信制高校を卒業すると全日制高校と同等の「高卒資格」が得られます。
指定校推薦や一般入試で大学に進学することも可能です。

Q
 不登校の子どもでも通えますか?

A

通信制高校は不登校経験のある生徒を多く受け入れています。
登校日数が少ない、オンライン授業があるなど、段階的に通学できる環境もあります。

Q
 学費はどのくらいかかりますか?

A

公立は年間数万円程度、私立は30〜80万円程度+サポート校費用がかかる場合があります。
国の就学支援金制度を利用できるケースもあるので、必ず学校に確認してください。

Q
 通信制高校に進学すると友達ができないのでは?

A

友人関係は「広く浅く」ではなく「深く少数」になりやすい傾向があります。
イベント参加やサポート校を通じて交友関係を築くことができます。

Q
 学習面でついていけるか心配です

A

大丈夫です。勉強のやる気さえあれば、教員が親身になって教えてくれます。
また、4年間や5年間かけてゆっくり卒業を目指す生徒さんもいます。
本人の目標や学習スタイルに合った学校を選ぶことが重要です。

通信制高校に通ったからこその将来がある

さまざまな理由から「やめとけ」と言われることもある通信制高校です。
でも、私(やん子)は通信制高校を卒業したことを後悔していません。

不登校や高校中退を経験して最初は塞ぎ込んでいました。
通信制高校に編入して環境を変えて心境や生活が大きく変わったからです。

私のように環境を変えることで一歩を踏み出せる人も多いでしょう。
「やめとけ」という言葉に振り回されてしまうのはもったいない!!

通信制高校は通学タイプや行事・イベントの有無、サポートの手厚さなどさまざま。
子どもの性格や興味、ニーズに合っていないと後悔してしまうかもしれません。

ホームページで学校の雰囲気を確認したり学校見学をしましょう。
どんな学校なのか、子どもに合っているのかを考えることが大切です。

【解説】
全日制であれ、通信制であれ、高校進学はお子さんの人生の通過点にすぎません。重要なのはどの高校に通うかではなく、自立した大人になること。不安はたくさんあるでしょうが、否定ばかりするのではなく、背中を押してあげましょう。
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