導入:その不安、「あなたのせい」ではありません

「母子分離不安 原因」と検索して、この記事にたどり着いたあなた。

きっと、こんな言葉を目にしてきたのではないでしょうか。

「愛情不足」「過保護」「甘やかしすぎ」「母親の接し方に問題がある」——

読んでいて、胸が締めつけられるような気持ちになりませんでしたか?

「やっぱり私のせいだったんだ」「もっとちゃんと育てていれば」と、自分を責めてしまったかもしれません。

でも、ここではっきりとお伝えします。

母子分離不安は、あなたのせいではありません。

母子分離不安の原因を「母親一人の責任」とする考え方は否定されています。
原因は複数の要因が絡み合っており、お母さんの愛情不足や育て方だけで起こるものではないのです。

この記事でお伝えしたいこと

吉田 克彦

吉田 克彦

公認心理師
不登校の家族支援25年超

この記事では、母子分離不安の「3つの本当の原因」をわかりやすく解説します。
正しい知識を持って、自分を責める気持ちに縛られず、具体的な対策を実行してください。

「母子分離不安は愛情不足が原因」はウソ

「母子分離不安は愛情不足が原因」——この説は、今でも根強く残っています。
しかし、これは大きな誤解です。

分離不安は「愛情の証」

お子さんが「お母さんと離れたくない」と強く感じているのは、お母さんのことが大好きで、お母さんが一番の「安全基地」だからです。

もし本当に愛情が足りていなければ、お子さんはお母さんに執着しません。
「どうでもいい」と思っている相手と離れることに、不安を感じる人はいませんよね。

つまり、分離不安が強いということは、お母さんとお子さんの間にしっかりとした絆がある証拠なのです。

「愛情を受け取る器」が一時的に不安定になっているだけ

では、なぜ愛情があるのに分離不安が起こるのでしょうか。

それは、「愛情が足りない」のではなく、お子さんの「愛情を受け取る器」が一時的に不安定になっているからです。

コップに水を注ぐことを想像してみてください。どれだけ水を注いでも、コップにヒビが入っていたら、水は漏れてしまいます。

お子さんの心も同じです。環境の変化やストレスによって心に「ヒビ」が入ると、どれだけ愛情を注いでも、安心感が溜まりにくくなることがあります。

これはお母さんの愛情の問題ではなく、お子さんの心の状態の問題です。

「過保護」と「必要な保護」は違う

「子どもが泣いたらすぐに抱っこするから、甘えん坊になったのでは?」

そんなふうに言われて傷ついた経験はありませんか?

子どもがSOSを出しているときに応えることは、「過保護」でも「甘やかし」でもありません。それは「必要な保護」です。

お子さんが不安で泣いているときに抱きしめてあげること。怖がっているときにそばにいてあげること。これは、子どもの心を守るために当然の対応です。

むしろ、子どものSOSを無視し続けることのほうが、心の発達に悪影響を与えます。

あなたがお子さんに寄り添ってきたことは、間違いではありません。

本当の原因は?「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」で解説

では、母子分離不安の本当の原因は何なのでしょうか。

現代の心理学では、「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」という考え方で説明されます。これは、心の問題は「生物学的要因」「心理的要因」「社会的要因」の3つが複雑に絡み合って起こるという考え方です。

母子分離不安も、この3つの要因が組み合わさって起こります。

1. 生まれ持った気質(HSC・感覚過敏)

1つ目は、お子さんが生まれ持った「気質」です。

人は生まれながらにして、不安を感じやすい人とそうでない人がいます。これは性格というより、脳や神経系の特性です。

たとえば、「HSC(Highly Sensitive Child=人一倍敏感な子)」と呼ばれる子どもがいます。HSCの子どもは、音、光、匂い、人の感情など、あらゆる刺激に敏感に反応します。

こうした子どもは、環境の変化に対しても人一倍不安を感じやすく、安心できるお母さんから離れることに強い恐怖を感じることがあります。

これは育て方の問題ではありません。生まれ持った特性です。

HSCは全人口の15〜20%程度いるとされており、決して珍しいことではありません。お子さんがHSCの特性を持っている場合、分離不安が強くなりやすいのは自然なことなのです。

2. 環境の変化とストレス

2つ目は、お子さんを取り巻く「環境の変化」です。

子どもにとって、環境の変化は大きなストレスになります。たとえば、以下のような出来事がきっかけになることがあります。

  • 入園・入学
  • 転校やクラス替え
  • 担任の先生が変わった
  • 引越し
  • 弟や妹の誕生
  • 親の入院や長期出張
  • 両親の不仲や離婚
  • いじめや友人関係のトラブル

大人から見れば「たいしたことない」と思えることでも、子どもにとっては世界が揺らぐような体験になることがあります。

「今まで当たり前だった日常が変わってしまった」という不安が、「お母さんも離れていってしまうのではないか」という恐怖につながるのです。

これはお母さんの育て方とは関係なく、外部の環境によって引き起こされるものです。

3. 親子の「愛着スタイル」のすれ違い

3つ目は、親子の「愛着スタイル」の相性です。

愛着スタイルとは、親子の間に形成される絆のパターンのことです。研究では、大きく分けて「安定型」「不安型(アンビバレント型)」「回避型」「無秩序型」の4タイプがあるとされています。

ここで大切なのは、愛着スタイルに「良い・悪い」はないということです。親が悪いわけでも、子どもが悪いわけでもありません。

ただ、親子の愛着スタイルの「相性」によって、すれ違いが生じることがあります。

たとえば、「不安型(アンビバレント型)」の愛着スタイルを持つお子さんは、「お母さんは本当に自分を愛してくれているのか」を確認したがる傾向があります。

そのため、わざと困らせるような行動をとったり、暴言を吐いたり、激しく泣いてしがみついたりすることがあります。これは「試し行動」と呼ばれ、信頼を確認しようとする必死のサインです。

お子さんが暴れたり、わがままを言ったりするのを見て、「私の育て方が悪かったから、こんな子になってしまった」と感じることがあるかもしれません。

でも、違います。

お子さんは、あなたを信頼しているからこそ、あなたの前で本当の感情をぶつけているのです。それは、あなたが「安全な存在」である証拠です。

お母さんの「笑顔」が回復への近道(情動感染)

母子分離不安の回復において、とても大切なことがあります。

それは、お母さん自身が笑顔でいることです。

感情は「伝染」する

心理学では「情動感染」という現象が知られています。これは、人の感情が周囲の人に伝染する現象のことです。

あくびがうつるように、不安やイライラもうつります。そして、子どもは特に親の感情を敏感に感じ取ります。

言葉にしなくても、お母さんが不安を感じていると、お子さんはそれを察知します。「お母さんが不安そうだ」→「きっと何か怖いことがあるんだ」→「自分も不安になる」——このように、不安が増幅されてしまうのです。

「頑張らなきゃ」が逆効果になることも

「子どものために、私がしっかりしなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」

そう思えば思うほど、心に余裕がなくなっていきませんか?

余裕がなくなると、表情が硬くなり、声のトーンが変わり、体がこわばります。お子さんは、そうした変化を敏感に感じ取ります。

すると、お子さんの不安はさらに強くなり、症状が悪化する——という負のループに陥ってしまうことがあります。

お母さんがリラックスすることが、最大のサポート

逆に言えば、お母さんがリラックスして笑顔でいられると、お子さんも安心します。

「お母さんが穏やかだ」→「大丈夫なんだ」→「自分も安心できる」——このように、安心感が伝染するのです。

だから、お母さん自身の心のケアは、決して「自分のわがまま」ではありません。お子さんのためにも、あなたが笑顔でいることが大切なのです。

「でも、どうやってリラックスすればいいの?」「余裕なんてない」——そう思う方もいるかもしれません。

一人で抱え込まず、誰かに話を聞いてもらうこと。それだけで、心がふっと軽くなることがあります。

まとめ:まずは「自分」を許してあげてください

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

最後に、お伝えしたいことがあります。

あなたは、十分に頑張ってきました。

お子さんのことを心配して、ネットで調べて、少しでも良くなる方法を探して。眠れない夜もあったかもしれません。誰にも言えず、一人で悩んだこともあったかもしれません。

それは、お子さんを愛しているからこそです。

「愛情不足」なんかじゃありません。

どうか、自分を責めるのをやめてください。

そして、ここまで頑張ってきた自分を、少しだけ認めてあげてください。

親御さん自身の心をケアすることは、立派な「不登校支援」です。お母さんの心が軽くなれば、自然とお子さんへの接し方も変わります。その変化が、お子さんの回復につながっていきます。

誰かに話を聞いてもらうだけで、心が軽くなることがあります。一人で抱え込まず、専門家を頼ってみてください。

「ぜんとカウンセリング」では、公認心理師がお母さん自身の心のケアをお手伝いしています。「子どもの話」だけでなく、「自分の気持ち」を聴いてもらえる場所があります。

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引用参考文献

小児心身医学会ガイドライン集改訂第2版 2015年7月 一般社団法人小児心身医学会

更新情報

25/11/25 新規記事掲載