本記事は、分離不安症や発達障害に関する一般的な情報を提供するものであり、診断を行うものではありません。
お子さんの状態が気になる場合は、必ず医師や公認心理師などの専門家にご相談ください。
「学校に行きたくない」「お母さんと離れたくない」
こうした訴えは、多くの子どもに見られるものです。では、単なる「甘え」や「行き渋り」と、専門的な治療が必要な「分離不安症」の境界線は、どこにあるのでしょうか。
「うちの子は病気なの?」「発達障害の可能性があるの?」——そう不安になりながらも、病院に連れて行くべきか迷っている方も多いと思います。
この記事でお伝えしたいこと
中学生の不登校についてはこちらの記事にまとめています!
▶ 中学生の不登校|知っておくべき原因・対応・進路のすべて【心理師解説】
分離不安症(Separation Anxiety Disorder)の診断基準
分離不安症は、DSM-5において正式な診断名として定められています。
以下は、DSM-5に基づく分離不安症の主な症状です。保護者の方がわかりやすいよう、噛み砕いた表現でまとめています。
分離不安症セルフチェックリスト
以下の8つの項目のうち、3つ以上に当てはまり、かつ子どもの場合は4週間以上(大人の場合は6ヶ月以上)続いている場合、分離不安症の可能性があります。
- 家や愛着のある人(主に親)から離れるとき、または離れることを予想するとき、過剰な苦痛を感じる
- 愛着のある人を失うこと、または病気・事故・災害などで離れ離れになることを、繰り返し過剰に心配する
- 迷子になったり、誘拐されたりして、愛着のある人と会えなくなることを、繰り返し過剰に心配する
- 分離不安のために、学校や外出を嫌がる、または拒否する
- 一人でいること、または愛着のある人がそばにいない状況を、過剰に怖がる
- 愛着のある人がそばにいないと、眠ることを嫌がる、または拒否する
- 分離をテーマにした悪夢を繰り返し見る
- 分離が起こる(または予想される)ときに、頭痛・腹痛・吐き気などの身体症状が繰り返し現れる
チェックリストの使い方
このチェックリストは、あくまで「目安」です。
当てはまる項目が多いからといって、必ず分離不安症と診断されるわけではありません。
逆に、当てはまる項目が少なくても、生活に支障が出ている場合は、専門家への相談してください。
このチェックリストを参考にしながら、専門家に相談するかどうかの判断材料としてお使いください。
発達障害(ASD/ADHD)と分離不安の関係
「親から離れられない」という症状は、分離不安症だけでなく、発達障害のあるお子さんにも見られることがあります。
しかし、一見似ているようでも、背景にある心理は異なります。ここでは、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)との違いについて解説します。
自閉スペクトラム症(ASD)の場合
ASDの特性を持つお子さんが「親から離れたがらない」とき、その理由は分離不安症とは異なる場合があります。
分離不安症との違い
分離不安症の場合、「親が大好きで、離れると不安になる」という心理が中心にあります。
一方、ASDの場合は、「いつもと同じ環境(ルーチン)が変わることへの抵抗」が主な原因であることが多いです。
たとえば、「学校に行きたくない」という訴えの背景に、「教室の照明が変わった」「席替えがあった」「給食のメニューが変わった」といった環境の変化がある場合、ASDの特性が関係している可能性があります。
見分けるポイント
- 特定の物(おもちゃ、毛布など)への強い執着がある
- 予定の変更やルーチンの乱れに対して、激しく抵抗する
- 音、光、匂い、触覚などに過敏または鈍感な傾向がある
- 人よりも「物」や「パターン」への関心が強い
こうした特徴が顕著な場合は、分離不安症ではなくASDの特性が関係している可能性があります。
注意欠如・多動症(ADHD)の場合
ADHDの特性を持つお子さんにも、分離不安が見られることがあります。ただし、これは「二次障害」として現れている場合が多いです。
二次障害とは
ADHDの特性(落ち着きがない、忘れ物が多い、指示を聞き逃すなど)があると、学校で叱られたり、友達とトラブルになったりする機会が増えることがあります。
その結果、自己肯定感が低下し、「学校は怖い場所」「自分はダメな人間だ」という思いが強くなります。
そうなると、唯一の味方である「お母さん」への依存が強まり、分離不安のような症状が現れることがあります。これが「二次障害」です。
見分けるポイント
- 学校で叱られることが多い
- 「自分はダメだ」「どうせ自分なんて」という発言がある
- 学校では問題を起こすが、家では落ち着いている
- 親以外の大人(先生など)に対して強い不信感がある
こうした特徴がある場合、ADHDの特性が背景にあり、その二次障害として分離不安が現れている可能性があります。
発達障害と分離不安症は「併存」することもある
注意が必要なのは、発達障害と分離不安症は「どちらか一方」ではなく、「両方」が存在することもあるという点です。
たとえば、ASDの特性を持つお子さんが、同時に分離不安症の症状を示すこともあります。
「発達障害だから分離不安症ではない」とは限りません。複数の問題が重なっている可能性も考慮し、専門家による総合的な判断を受けることが大切です。
大人の分離不安症もある?
「分離不安は子どもだけのもの」と思われがちですが、実は大人にも分離不安症は存在します。
大人の分離不安症の特徴
子どもの頃の分離不安が解消されないまま大人になると、以下のような形で生活に支障が出ることがあります。
- 恋人やパートナーと少しでも離れると強い不安を感じる
- 一人暮らしができない
- 出張や転勤を極度に嫌がる
- パートナーの行動を過剰に監視してしまう
- 「見捨てられるのではないか」という恐怖が常にある
こうした状態は、就職、結婚、人間関係に大きな支障をきたすことがあります。
早期発見・早期対応の重要性
子どもの頃の分離不安を「そのうち治るだろう」と放置すると、大人になっても不安を抱え続けることがあります。
早い段階で適切な対応をすることが、お子さんの将来の自立にとって重要です。
「まだ小さいから」「思春期になれば治るだろう」と先延ばしにせず、気になることがあれば早めに専門家に相談することをおすすめします。
病院に行くべき?受診のタイミングと相談先
「病院に連れて行くべきか迷っている」という方のために、受診の目安と相談先をまとめます。
受診を検討すべきタイミング
以下のような状況が続いている場合は、専門家への相談を検討してください。
- 登校できない状態が数週間以上続いている
- 睡眠に問題がある(眠れない、悪夢を見る、一人で寝られない)
- 身体症状(腹痛、頭痛、吐き気など)が頻繁に現れる
- 親御さんの仕事や生活に明らかな支障が出ている
- お子さん自身が「つらい」「死にたい」などの発言をしている
特に最後の項目(自傷や自殺に関する発言)がある場合は、早急に専門機関を受診してください。
何科を受診すればいい?
| 相談先 | 特徴 |
|---|---|
| 児童精神科 | 子どもの心の問題を専門に扱う。診断や治療に最も適している |
| 心療内科 | 心と体の両方を診る。中学生以上であれば選択肢になる |
| 小児科 | 身体症状(腹痛、頭痛など)が強い場合、まずここで相談するのも一つの方法 |
| 発達外来・発達センター | 発達障害の可能性がある場合に適している |
児童精神科は予約が取りにくく、数ヶ月待ちになることも珍しくありません。気になる場合は、早めに予約を入れておくことをおすすめします。
いきなり病院はハードルが高いと感じる方へ
「いきなり精神科に連れて行くのは抵抗がある」「まずは話を聞いてほしい」——そう感じる方も多いと思います。
そんなときは、まずカウンセラー(公認心理師・臨床心理士)に相談してみてください。
カウンセラーは診断や治療はできませんが、お子さんの状態を整理し、「医療機関を受診すべきかどうか」の判断をサポートすることができます。
「不登校なんでも相談室」では、公認心理師がお子さんの状態をお聞きし、医療機関にかかるべきかどうかのトリアージ(判断の振り分け)もお手伝いしています。
「病院に行くほどなのかわからない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
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まとめ
分離不安症は、DSM-5で定められた正式な診断名であり、適切な対応が必要な状態です。
ただし、「チェックリストに当てはまったから病気」「当てはまらないから大丈夫」と自己判断するのは危険です。発達障害との関連や、複数の問題が重なっているケースもあります。
お子さんの状態が気になる場合は、一人で悩まず、専門家に相談してください。
早めに相談することは、決して大げさなことではありません。お子さんの未来のために、できることから始めていきましょう。

