この記事でわかること
  • ADHDの特徴がわかる
  • ADHDがなぜ不登校に関係することがあるのかわかる
  • 子どもがADHDの場合にどのような支援をすれば良いかがわかる

【この記事に関連する読者からのお悩み相談】
第6回 ASD,ADHDの子どもに寄り添うのに疲れた

子どもが落ち着きがなくて困ってしまう。忘れ物も多いし、こっちの話をじっくり聞いてくれない

 

子どもの部屋が散らかっているし、片付けるように言うと急に怒って物を投げたりしてくる。

 

このような悩みを持っているご家族は多くいらっしゃいます。
これらのお子さんの行動は不注意・衝動性・多動性などが関係しているかもしれません。
本記事では、ADHD(注意欠陥多動症)ついて解説していきます。

不登校になる原因はさまざまですが、近年は発達障害のひとつであるADHD傾向のお子さんが不登校になる事例が増えています。
本記事では、ADHDとはどのようなものなのか、不登校との関連とその理由、ADHDかどうかの判断をしてもらう方法をご紹介します。

ADHDの特徴は、不注意・衝動性・多動性

ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな不注意、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものです。
ほとんどの場合ADHD傾向があるとみられる行動が7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されます。

不注意

注意力や集中力が長続きせず散漫になってしまいます。そのため、物事を忘れる、物をなくす、飽きっぽいことがあります。

多動性

じっとしていることが難しく、常に体を動かしたり、動き回ったり、落ち着きがないことがあります。

衝動性

我慢したり、待つことが苦手で、思いついたことをすぐに実行に移したり、言葉にしてしまうことがあります。時には、相手が話している場面などでも自分が話し始めたり、カッとなって暴力をふるったりものに当たることもあります。

育て方の問題ではない

ADHDは脳機能の発達の偏りや遅れが原因ですので、「親の育て方の問題で子どもがADHDになってしまった」などと思い詰めてしまう親御さんが多いのですが、育て方の問題ではありません。
また、ADHDは障害のため現時点で根本的な治療法は存在しませんが、学校生活での工夫や薬物療法により本人が生活しやすくなる方法を考えていくことが大切になります。

不登校とADHDの関連

人間関係のトラブル

上記のような、不注意・多動性・衝動性があることで、いろいろな問題が起きることがあります。例えば、クラスメイトと遊んでいる時に些細なことで我慢が出来ず暴れてしまったり、飽きっぽいことで友人とのトラブルになる場合があります。他には、忘れ物が多かったり、先生の指示を待たずに行動したり、授業中にずっと座っていることに耐えられないなどで学校への不適応が起きてしまうこともあります。
また、ADHDを持つ子どもはその特性をクラスメイトなどからからかわれてしまったり、忘れ物や落ち着きのなさで先生に注意を受けることが多くなることもあります。そのため、自分に自信が持てなくなったり、学校を怖がってしまうことがあるのです。

睡眠の問題

海外の研究ですが、ADHDの子ども239人を調査したところ、74%が何らかの睡眠の問題を抱えているといわれます。
具体的には、以下のような問題です。身体がジッとしていられないために、寝ている間も常に動いてしまい、熟睡ができないのです。

睡眠の問題の例
  • 就寝困難:子どもたちが寝る時間になってもなかなか眠りにつけない。
  • ベッドに入るのを拒む:寝る時間になってもベッドに行くことを嫌がる。
  • ベッドの中で身体を動かし続ける:眠ろうとするが、じっとしていられずにベッドの中で体を動かし続ける。
  • いびきや呼吸困難:睡眠中にいびきをかいたり、呼吸が困難になったりする。
  • 夜中に何度も目を覚ます:深夜に何度も目が覚めてしまう。
  • 朝、起き上がるのが難しい:朝になってもなかなかベッドから起き上がれない。
  • 目覚めても疲れが取れない:十分に睡眠を取ったはずなのに、起きたときに疲れが残っている。

布団に入ってじっとしていることが難しく、寝つきが悪く、眠りも浅くなります。そのため、充分な睡眠がとれず、寝坊をしたり、日中に強い眠気に襲われて居眠りをしてしまう、あるいは昼夜逆転などが起きてしまうのです。

しかし、睡眠に関してはADHD以外の要因も考えられます。また、ADHDだから不眠なのではなく、ナルコレプシーなど他の要因によって睡眠の質が低下し、その結果、多動になる場合もあります。特にいびきをかいたり、たくさん寝ても寝足りない場合は、注意が必要とされます。

勝手に判断するのではなく、必ず病院を受診して医師に相談しましょう。

【関連記事】
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ADHDかどうか判断するには?

ADHDかどうかの確定診断をするには、病院を受診し診断を受ける必要があります。
しかし、病院を受診しなくても、学校生活での困りごとを減らす工夫を行うことで問題行動が改善する場合があります。
まずは学校のスクールカウンセラー、保健室の先生などに相談してみると良いでしょう。

【関連記事】
【不登校の相談先①】スクールカウンセリング

ADHDとわかった場合、どうすればいいの?

実際にADHDの診断が降りた場合も、診断が下りない場合でも、基本的には衝動性や不注意によって生じる問題を減らすことが大事になります。そのためには保護者をはじめ子どもの周囲にいる大人が正しい理解をすることが大事です。
また、薬を服薬することにより衝動性や多動性を抑える場合もあります。主治医と効果や副作用などについてじっくりと説明を受けた上で、子どもにとってどのような判断が最適かを考えていくことが大切です。

また、「睡眠の問題」のところで指摘したように、ADHDで多動なのではなく、他の要因によって睡眠不足などに陥りADHDによく似た行動がみられるようになる場合があります。そのため、「何か困りごとがあれば」必ず病院を受診することをおすすめします。

ADHDに関するカウンセリングは?

ADHDのカウンセリングには、お子さん本人へのカウンセリング以上に保護者の方へのカウンセリングが重要になります。それは、日常生活でのお子さんへの対応がとても大事だからです。週1回~月1回程度のカウンセリングでお子さんの様子が変わるのではなく、カウンセリングで保護者の方と作戦会議を行い、次のカウンセリングまでの生活で気にしてもらうことを話し合うことが大事です。

さいごに

このように、友達とのトラブルが起きたり、学校生活への不適応により不登校になったお子さんの中には、トラブルや不適応の原因が衝動性や不注意の場合もあります。そして、衝動性や不注意について丁寧にみるとADHDの傾向がみられるお子さんも少なくありません。
「ADHDだから、うちの子は~」と考えるよりも、衝動性や不注意によるお子さんの困り感を理解して、解消していくためにはどのようなことが出来るのか。カウンセリングや病院受診なども選択肢に入れながら、保護者が考えていくことが大事になります。

【中学生の不登校】保護者のための完全ガイド

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引用・参考文献

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/054/shiryo/attach/1361233.htm
福永道郎(2022)「注意欠陥・多動症(ADHD)と睡眠障害」脳と発達第54巻 pp.170-175

より詳しく知りたい方へ

https://www.adhd-info.jp/

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