「スクールカウンセラーに相談したけど、何も変わらなかった」そんな経験はありませんか?
実際に、多くの保護者が同じような思いを抱えています。
この記事では、なぜ「意味がない」と感じるのか、その理由と効果的な活用法を解説します。

私は20年以上前からスクールカウンセラーとして活動し、他のスクールカウンセラーのスーパーバイズも行ってきました。小学生・中学生の子どもを持つ保護者の立場からもスクールカウンセラーに相談する難しさを分かります。そんな吉田がわかりやすく解説します。
「スクールカウンセラーに相談したけど意味がなかった」3つの理由
保護者の方が「スクールカウンセラーに相談したけど意味がなかった」と思うことは大きく5つの理由があります。
ここでは、それぞれの理由の背景と有意義にするための工夫を紹介します。
下の表のように、現在スクールカウンセラーは学校に週1~2回訪問する形がほとんどです。
相談時間・回数の制約

月1〜2回、約30~60分の相談では限界があります。
臨床心理士会の調査によると、中学校にスクールカウンセラーが勤務する頻度は、週1日以下が84.2%をしめています。そのため、多くの相談がある場合、充分な対応ができないことがあります。
初回相談まで1か月以上待たされることがある
申し込んでから実際の面接まで1か月以上先になる場合もあります。
夏休みや冬休みなどの長期休業中はスクールカウンセラーが勤務しない学校も多いためです。
「6月に申し込んだけれど、夏休みまで予約が埋まっていて9月まで待たされた」
という保護者の方もいらっしゃいます。
継続相談も月1回程度が限界
初回面接ができても、次の面接まで間が空いてしまうことがあります。
その間、お子さんの状況がどんどん悪くなってしまい、初回面接と2回目の面接で状況が全く変わってしまう場合もあります。
1回の相談時間は45〜50分
週1日の勤務で、多くの相談や教職員との情報交換を行います。
そのため、相談時間が限られます。
前回面接から悪化した場合は状況説明だけで、かなりの時間が必要なことも。
説明に時間がかかってしまい今後について具体的に話せない場合があります。
年度末で相談が中断されることも
スクールカウンセラーは原則として単年度契約です(複数年継続できる場合がほとんどですが)
スクールカウンセラーといい関係が築けたとしても、スクールカウンセラーの異動やお子さんの卒業により、年度末で相談を終結することがあります。
民間の相談移管や自治体の相談センターなどでもカウンセラーの退職や育休取得などで、担当者が変わることがあります。
しかし、多くの相談機関は引継ぎをしっかり行います。
なかには、前任者の最後のカウンセリングに後任のカウンセラーが同席して、相談者も含めて引継ぎをすることもあります。
一方でスクールカウンセラーは前年度勤務のカウンセラーと新年度勤務のカウンセラーが情報交換する機会はほとんどありません。
スクールカウンセラーが交代する場合は、ゼロから話すことになります。

複数年継続する場合でも、多くの自治体では「年度末にいったん相談を終結させて」と指示されることがあります。
そのため、原則としては3月で相談は終了するものだとおもって、「4月以降も同じカウンセラーならラッキー」ぐらいで考えるのをおすすめします。
カウンセラーとの相性問題
プライベートの相談をするので、カウンセラーとの信頼関係は非常に重要です。
しかし、スクールカウンセラーは基本的に各校1名のため、相性が合わなくても変更することができません。
具体的には、以下のような不一致があると、カウンセラーを信頼して相談できません。
話し方や雰囲気が合わない
「親としてのグチを聞いてほしかったのに『そんな弱音を吐いてちゃだめ!』と逆に説教されてしまった」
「具体的なアドバイスを教えてほしかったのに、ただうなずかれるだけで、意見がもらえなかった」
このような話を聞くことが良くあります。
それぞれのカウンセラーの特徴があるので、こちらが求めているものと違うと、ただ疲れるだけで終わってしまいます。
料理人と言っても和食・洋食・中華などそれぞれ得意料理が違うように、スクールカウンセラーも
「具体的にアドバイスしてどんどん変化を起こす」
「ゆっくりと話を聞いて本人の気づきを促す」など、
さまざまなアプローチの違いがあります。

予約時でもいいですし、最初にカウンセラーにあった時に「どんな感じで話せばいいですか?」などと質問するといいでしょう。
その答え方で、「あっ、この人なら話やすそう」というのがわかりますよ。
専門分野や経験の違い(不登校専門ではないカウンセラーもいる)
スクールカウンセラーと言っても、いろいろな専門があります。
子どもの発達に詳しい心理師もいれば、家族相談が得意な心理師もいます。
もちろんオールマイティな心理師もいますが、苦手な相談内容や詳しくない分野もあります。
スクールカウンセラーは子ども、保護者、教員それぞれと良い関係を作る必要があります。
しかし「子どもと関わるのは好きだけど、保護者の相談対応は苦手」というカウンセラーも結構います。
相談内容によっては、カウンセラーの専門性と上手にマッチしないこともあります。

カウンセラーと合わない場合は、続けていても時間を浪費します。
スクールカウンセラーにこだわらず他の相談機関を探しましょう。
教職員や関係機関との連携不足
スクールカウンセラーには「守秘義務」があります。
一方で、学校の問題をスクールカウンセラー1人で抱えて対応することは不可能ですし、
管理職や担任などと連携しながら対応しないとうまくいきません。
情報共有のタイミングがない
カウンセラーが得た情報を、どこまで教員と共有できるか。
守秘義務に守られているので相談内容をすべて共有することはできません。
一方で、教員が忙しくて職員室におらず、スクールカウンセラーも週1日の勤務のため、共有する時間がないことがあります。
その結果、相談者から「この件は学校と共有してください」と言われた内容でも、共有が遅れることがあります。
カウンセラーの実力不足
①対人関係が苦手
カウンセラーの中には「1対1の個人のカウンセリングは得意だけれど、家族や学校など集団の中で動くのは苦手」という人もいます。
その場合、相談室から出てこないで、職員室にもほとんど顔を出さない場合もあります。
②調整能力のなさ
学校とカウンセラーや家庭の考え方の違いをうまく調整できない場合もあります。
(スクールカウンセラーから実際に合った相談を元に内容を脚色しています)
中学生の不登校について、保護者から相談を受けていました。
保護者との面談では「学校でクラスメイトから嫌な思いをさせられたようだし、今は無理に学校に行かせず、家でゆっくり休ませたい。今は、生活リズムも整っているし、家で勉強もできているし、友達と遊ぶこともできている。新年度になってクラス替えがあってから徐々に登校すればよい。担任の先生に直接言いにくいのでカウンセラーから伝えてほしい」との話がありました。
保護者面接が終わった後、伝えてほしいといわれた内容を、担任にそのまま伝えました。
すると担任は「友達と遊んで生活リズムも整っているのなら、学校に来るべき。親が学校に来させようとせず休ませているのはおかしい。親に子どもへ登校を促すようにカウンセラーから説得してください」と言われました。
保護者は「担任が怖い」といい、担任は「保護者が甘やかしている」といいます。
その板挟みになったスクールカウンセラーは困ってしまいました。
学校と家庭の関係もぎくしゃくしてしまい、保護者が学校に不信感を抱くようになりました。
このように関係者の間の板挟みで悩むスクールカウンセラーは少なくありません。
実力のあるスクールカウンセラーであれば、”ただメッセンジャーとして伝えるだけ”という動きはしません。
状況について見立てを立てた上で、「伝えるかどうか」「何を、どこまで、どのように伝えるか」などを具体的に考えて立ち振る舞うことができます。

「コレコレの理由で、今はその意見を伝えない方がいいですよ」とタイミングをずらしたり、「ストレートに伝えると反発されるかもしれないので、~~のように伝えていいですか?」と違う表現方法を提案することもあります。
お互いに良い印象を持てるように調整するのもスクールカウンセラーの重要なスキルです。
信頼できないカウンセラーに、無理に相談してもあまり効果がありません。
もし、スクールカウンセラーが信頼できない場合は、他の方法で相談することをすすめします。
実は効果があるのに「意味ない」と感じる心理的メカニズム
効果はあっても、人は効果を実感できません。その理由をは以下の通りです。
変化の見えにくさ
例えば、我が子の成長にはあまり気がつかないけれど、年末年始に帰省した際に親戚の子がぐんと成長していることに気づくことはありませんか?
月1回程度面接をするカウンセラーにとっては、お子さんやご家族の変化はとてもはっきり見えます。
しかし、毎日そばにいるご家族にとっては、些細な変化の積み重ねに気づけず、ダメな部分ばかりが目に付くため、
「全然変わらない。むしろ悪くなっているのでは?」
「スクールカウンセラーに相談しても何も変わらない」
・・・などと感じてしまうのです。
即効性への過度な期待
「スクールカウンセラーに相談すれば、何とかしてくれる」
「親からは学校にいいにくい意見もスクールカウンセラーが代わりに言ってくれる」
「いじめにあっているので、スクールカウンセラーに相談して加害者側に謝罪をさせる」
もちろん、これらの期待が実現できる場合もありますが、実現できない場合もあります。
スクールカウンセラーに期待をしていた分、「実際には時間がかかるし、難しい」と分かると、「それじゃあ、相談しても意味がない」と思うことがあります。

スクールカウンセラーは、あくまで児童生徒と家族の「気持ちが楽になる」ことを一番に考えます。
誰かに謝罪をさせたり、保護者や教員がやりにくいことを代わりにするのが仕事ではありません。
保護者自身のストレス
保護者の焦りや不安が、効果を見えなくしています。
心理学研究によると、保護者のストレスレベルが高いと以下の状況になります。
保護者のストレスが高まると…
- 子どもの些細な行動を「問題」と捉えやすくなる
- ネガティブな面ばかりに注目してしまう(確証バイアス)
- カウンセラーの助言を実践する心理的余裕がなくなる
その結果、些細な行動を問題ととらえ、ネガティブなところばかりが目につき、カウンセラーの助言も役に立たなくなり、どんどん状況が悪化しているように見えてしまうのです。
スクールカウンセラーを効果的に活用する3つのステップ
ここまで、「スクールカウンセラーに相談したけれど意味ない」と言われる背景を紹介しました。
ここからは、あなたが実際に「スクールカウンセラーに相談してよかった」と思えるように、コツを紹介します。
1. 相談内容の整理と準備
限られた時間を最大限活用する準備が大切です。
相談前の準備チェックリスト:
- 最近の子どもの様子(良い変化・心配な点)をメモ
- 相談したいことを3つに絞る
- 優先順位を決める
- 前回の相談からの変化を整理
- 学校や家庭での具体的なエピソードを用意
2. カウンセラーとの関係構築
オープンなコミュニケーションが効果を高めます。
初回相談で確認すべきこと:
- 守秘義務の範囲(どこまで学校と共有されるか)
- 相談の頻度と期間の目安
- 緊急時の連絡方法
- カウンセラーの専門分野や経験
少しでも違和感を感じたら、「もう少し具体的なアドバイスがほしい」「共感的に聞いてほしい」など、要望を率直に伝えることが大切です。
それでもうまくいかない場合は、無理に継続するのは危険!
ただただ、時間だけが過ぎて行き、状況が悪くなってしまいます。
他の相談方法を検討しましょう!
3. 学校との連携強化
カウンセラーを通じて学校全体の理解を得ましょう。
効果的な連携方法:
- 三者面談の活用:カウンセラー・担任・保護者で情報共有
- 支援会議への参加:月1回程度の定期的な振り返り
- 連絡ノートの活用:日々の変化を記録・共有
それでも「意味ない」と感じたら―代替案と次のステップ
スクールカウンセラーが合わない場合の、具体的な代替案を提示します。
他のスクールカウンセラーへの変更
学校によっては、複数のスクールカウンセラーが勤務していることがあります。
その場合は、別のスクールカウンセラーに変更できないか、管理職や養護教諭などを通して相談してみましょう。
変更を申し出る際は、「もう少し具体的なアドバイスが聞きたい」「娘の相談なので、女性のカウンセラーの方が話やすい」など、建設的な理由を伝えましょう。
学校外の相談機関の活用
学校以外でも自治体の教育相談センターや、児童相談所、家庭児童相談所など、さまざまな相談機関があります。
また、お仕事をされている方は職場の福利厚生プログラムでカウンセリングサービスを提供している場合もあります。
オンラインカウンセリングという選択肢
時間や場所の制約を超えた支援が可能です。
オンラインカウンセリングのメリット:
- アクセシビリティ:不登校で外出が困難でも自宅から相談可能
- 柔軟性:平日夜間や土日も対応可能なサービスが多い
- 選択肢の豊富さ:全国のカウンセラーから相性の良い人を選べる
- 継続性:転居や進学後も同じカウンセラーに相談可能
たとえば「ぜんとカウンセリング」では、公認心理師や臨床心理士の資格を持つ専門家が、オンラインで丁寧にお子さまと保護者の方をサポートしています。初回相談は無料で、じっくりと相性を確認してから継続を決められるので安心です。
実際の利用者の声
「学校のカウンセラーは月1回しか会えなかったけど、オンラインなら週1回相談できて、子どもの変化に合わせて対応してもらえました」
まとめ:スクールカウンセラーの価値を最大化するために
ここまで、スクールカウンセラーを「意味ない」と感じる理由と、その対処法について見てきました。
完璧な支援はありませんが、工夫次第で効果は確実に高められます。大切なのは、お子さまに合った支援を見つけること。そして、保護者の方自身が無理をしすぎないことです。
「うちの子には意味がなかった」と諦める前に、今日ご紹介した方法を一つでも試してみてください。