「子どもが私から離れようとしない」
「トイレにまでついてくる」
「学校に行きたがらない」
——こうした状況に、心も体も疲れ果てていませんか?
お子さんが「ママと離れたくない」と泣いて登園・登校を嫌がったり、お母さんの姿が見えなくなるとパニックになったりする状態は、「母子分離不安」と呼ばれます。

甘やかしすぎたのかな

私の育て方が悪かったのかも

分離不安は保護者の愛情不足や育て方が原因ではありません。
そして、適切に対応することによって、改善していきます。
この記事でお伝えしたいこと
中学生の不登校についてはこちらの記事にまとめています!
▶ 中学生の不登校|知っておくべき原因・対応・進路のすべて【心理師解説】
母子分離不安とは?ただの甘えと病気の境界線
母子分離不安とは、愛着の対象(主にお母さん)から離れることに強い不安を感じる状態のことです。
幼いころは誰でも、一人で行動はできません。ミルクを飲むのもおむつを替えてもらうにも保護者の助けが必要です。
特に子どもを生み育ててくれる母親との関係は、特別です。
本来であれば、食事やトイレなどを手助けを借りずに子どもだけでできるようになると、自然と母親から離れていきます。しかし、離れるタイミングを逃してしまう。
あるいは、離れることを極度に恐れてしまう結果、離れられなくなってしまうのです。
正常な発達としての分離不安
実は、分離不安は赤ちゃんの成長において自然なことです。
生後8ヶ月頃から見られる「人見知り」や「後追い」は、赤ちゃんが「お母さん」と「それ以外の人」を区別できるようになった証拠です。
この区別は「愛着形成」が順調な証拠であり、順調に発達しているサインといえます。
この自然な分離不安は、2〜3歳頃をピークに、少しずつ落ち着いていくのが一般的です。
支援が必要なサインとは
問題となるのは、小学生や中学生になっても分離不安が強く残り、日常生活に支障が出ている場合です。
たとえば、登校できない、親と離れると激しく泣く、一人で眠れないといった状態が長期間続く場合、「分離不安症(分離不安障害)」という診断名がつくことがあります。
「甘え」や「わがまま」ではない
母子分離不安は「甘え」や「わがまま」ではありません。
お子さん本人も、離れられない自分に苦しんでいます。
「こんなことで泣くなんて恥ずかしい」「みんなと同じようにできない」と、自分を責めます。

ご家族から見れば「どうして離れられないの?」と感じるかもしれませんが、お子さんは本当に強い不安と恐怖を感じているのです。
【年代別チェック】うちの子は大丈夫?分離不安の症状とサイン
母子分離不安の現れ方は、年齢によって異なります。以下の表を参考に、お子さんの状態を確認してみてください。
| 年代 | 主な症状・サイン | 注意が必要な目安 |
|---|---|---|
| 幼児期(0歳〜就学前) | 激しい後追い、登園時のパニック泣き、親が見えなくなると泣き叫ぶ | 3歳を過ぎても遊びに集中できず、常に親の姿を確認し続ける |
| 小学生(低学年〜高学年) | 腹痛・頭痛などの身体症状、登校渋り、母子登校の開始 | 「先生が怖い」「友達にいじめられる」と訴えるが、根底に分離不安がある |
| 中学生・高校生 | 無気力、引きこもり、不眠、朝起きられない | 反抗期と依存が混在し、本人も混乱している |
幼児期(0歳〜就学前)
幼児期の分離不安で多いのは、激しい後追いや、登園時のパニック泣きです。
保育園や幼稚園に預けるとき、お母さんにしがみついて離れない。
泣き叫んで暴れる。先生に引き離されると、何十分も泣き続ける。
——こうした行動が見られます。
3歳頃までは正常な発達の範囲で、気にすることはありません。
ただ、3歳を過ぎても遊びに集中できず、常に親の姿を確認し続けたり、親が少しでも見えなくなると極度に怯えたりする場合は、注意が必要です。
小学生(低学年〜高学年)
小学生になると、分離不安は「身体症状」として現れやすくなります。
「お腹が痛い」「頭が痛い」「気持ち悪い」といった訴えが朝になると増え、学校を休むと症状が治まる——このパターンがみられます。
また、「学校の先生が怖い」「友達にいじめられる」と言うこともありますが、
その根底には「お母さんと離れたくない」という不安が隠れている場合が多いです。
この時期に「母子登校」や「付き添い登校」が始まるケースも少なくありません。
中学生・高校生
中学生・高校生になると、幼児のように泣きわめくことは減りますが、代わりに別の形で不安が表れます。
無気力(何もやる気が起きない)、引きこもり、不眠、朝起きられない(起立性調節障害のような症状)——こうした状態が見られることがあります。
思春期特有の難しさとして、親への反発(反抗期)と依存が同時に存在することがあります。
「放っておいて!」と言いながらも、親がいないと不安で仕方ない。
本人は「親なんて嫌いだ」とだけ考えて、「親から離れたくない」という実感がなく、苦しむ場合もあります。
身体症状が起こるメカニズム
「本当にお腹が痛いの?仮病じゃないの?」と疑いたくなることもあるかもしれません。
しかし、これは仮病ではありません。実際に痛みを感じているのです。
不安を感じると、脳の「扁桃体」という部分が活性化します。扁桃体は危険を察知するアラームのような役割を持っており、ここが刺激されると自律神経(特に交感神経)が乱れます。
その結果、胃腸の動きがおかしくなり、本当に腹痛や吐き気が起こるのです。これは、大人が強いストレスを感じたときに胃が痛くなるのと同じ仕組みです。
お子さんの訴えを「嘘だ」と決めつけず、まずは「つらいね」と受け止めましょう。
これが回復への第一歩になります。
「私の育て方が悪いの?」母子分離不安の原因を正しく知る
母子分離不安について調べると、「愛情不足」「過保護」「甘やかしすぎ」といった言葉が目に入ることがあるかもしれません。
しかし、母子分離不安は、お母さんの愛情不足や育て方のせいではありません。
母子分離不安の原因は、複数の要因が複雑に絡み合っています。
心理学では「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」という考え方で説明されます。
気質的な要因(生物的要因)
生まれつき不安を感じやすい気質を持っている子どもがいます。
たとえば、「HSC(Highly Sensitive Child=人一倍敏感な子)」と呼ばれる子どもは、音や光、人の感情などに敏感で、刺激に対して強く反応します。こうした特性を持つお子さんは、環境の変化に対する不安も感じやすい傾向があります。
これは生まれ持った特性であり、育て方で作られるものではありません。
環境的な要因(社会的要因)
環境の急激な変化が、分離不安のきっかけになることがあります。
よくある不安のきっかけ
- 転校やクラス替え
- 引越し
- 親の入院や長期出張
- 弟や妹の誕生
- 両親の離婚や別居
こうした変化は、子どもにとって「今まで当たり前だった世界が揺らぐ」体験です。
「お母さんがいなくなるのではないか」という不安が生まれやすくなります。
愛着スタイルの影響(心理的要因)
心理学では、親子の間に形成される絆のパターンを「愛着スタイル」と呼びます。
研究では、主に4つのタイプに分類されています。
| 愛着スタイル | 特徴 |
|---|---|
| 安定型 | 親を「安全基地」として信頼し、離れても戻ってくると安心している |
| 回避型 | 親に甘えることを避け、感情をあまり表に出さない |
| アンビバレント型(両価型) | 親に強くしがみつく一方、怒りをぶつけることもある(試し行動が多い) |
| 無秩序型 | 親に対する行動パターンが一貫せず、混乱している |
母子分離不安のあるお子さんには、「アンビバレント型」の傾向が見られることが多いです。このタイプのお子さんは、「お母さんが本当に自分を愛してくれているか」を確認するために、わざと困らせるような行動(試し行動)をとることがあります。
ただし、愛着スタイルは固定されたものではありません。
親子の関わり方を変えることで、より安定した愛着を築いていくことは可能です。
回復への4つのステージと親の対応ロードマップ

母子分離不安からの回復は、一直線には進みません。多くの場合、4つのステージを行きつ戻りつしながら、少しずつ前に進んでいきます。
それぞれのステージでお子さんに何が起きているのか、親としてどう対応すればよいのかを解説します。
第1段階:逃避期(行き渋りの開始)
この段階では、登園・登校を嫌がり始めます。
「お腹が痛い」「頭が痛い」といった身体症状を訴えます。
この時期の対応
「甘えているだけ」「根性が足りない」などと考えて、無理やり学校に行かせるのは逆効果。
力ずくで引き離すと、不安がさらに強まってしまいます。
「つらいんだね」「不安なんだね」と、お子さんの気持ちに寄り添いましょう。
時には、「休ませる勇気」を持つことも必要です。
第2段階:苦悶期(パニック・赤ちゃん返り)
休む場合、一時的に状態が悪化するように見えることがあります。
激しく泣く、暴言を吐く、親にべったりと甘える(赤ちゃん返り)といった行動が見られます。
この時期の対応
この段階は、お子さんが「安心できる場所」を必死に求めている時期です。
家を「安全基地」にすることを意識してください。
スキンシップを増やし、「大丈夫だよ」「ここにいるよ」と安心感を与え続けましょう。
「いつになったら学校に行くの?」といった言葉は、この時期は控えてください。
第3段階:休息期(エネルギー充電)
家では落ち着いて過ごせるようになります。ゲームや動画、趣味に没頭する時間が増えるかもしれません。
この時期の対応
「家では元気そうなのに、なぜ学校に行けないの?」と感じることもあるでしょう。
しかし、これは回復に向けたエネルギー充電の期間です。責めないでください。
この時期は、生活リズムを整えるサポートをしましょう。
昼夜逆転を防ぎ、決まった時間に起きて食事をとる習慣を維持することが大切です。
第4段階:回復期(動き出し)
「暇だな」「友達どうしてるかな」「学校、どうなってるんだろう」などの言葉が出たら、回復期に入ったサインです。
この時期の対応
お子さんが外の世界に関心を向け始めたら、スモールステップで少しずつ行動範囲を広げていきましょう。
ただし、焦りは禁物です。「じゃあ明日から学校行こうね」と急かさず、お子さんのペースに合わせて進めてください。
母子登校・付き添い登校から卒業するスモールステップ法
母子登校(付き添い登校)をしているご家庭にとって、「いつまで続けるのか」「どうやって卒業するのか」は切実な問題です。
ここでは、心理学の「系統的脱感作法」という考え方を応用した、スモールステップ法をご紹介します。
ステップ1:物理的な距離を少しずつ広げる
まずは、付き添う範囲を少しずつ縮めていきます。
7段階のスモールステップの例
- 教室の中で一緒に過ごす
- 教室の後ろで見守る
- 廊下で待機する
- 別室(保健室や図書室)で待機する
- 昇降口まで送る
- 校門まで送る
- 通学路の途中まで送る
大切なのは、お子さんと相談しながら「ここまでなら大丈夫」というラインを一緒に決めることです。
親が一方的に決めるのではなく、お子さん自身が「これならできそう」と思える範囲から始めてください。
ステップ2:時間的な距離を少しずつ広げる
物理的な距離と合わせて、離れている時間も少しずつ延ばしていきます。
たとえば、「10分だけ図書室に行ってくるね」と伝えて離れ、必ず約束の時間に戻ってくる。
これを繰り返すことで、「お母さんは必ず戻ってくる」という信頼が育ちます。
心理学では、これを「対象の永続性」と呼びます。お母さんが見えなくなっても、存在が消えたわけではない。必ず戻ってくる——この確信が、分離不安を和らげる土台になります。
注意点:三歩進んで二歩下がる
スモールステップは、スムーズには進みません。
昨日は教室まで行けたのに、今日はまた校門から動けない——そんなことは当たり前に起こります。風邪を引いた、行事があった、友達とトラブルがあった、そんな小さなきっかけで後退することもあります。

「せっかく進んだのに」とがっかりしたくなる気持ちはわかります。
でも、状況が悪くなっても大丈夫です。少しずつ進めましょう。
焦らず、長い目で見るのが一番の近道です!
病院に行くべき?分離不安症のチェックリスト(DSM-5)
「うちの子、病院に連れて行った方がいいのかな?」と迷っている方もいるかもしれません。
以下のチェックリストは、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)をもとに、分離不安症の目安をわかりやすくまとめたものです。
分離不安症セルフチェックリスト
以下の項目に3つ以上が一ヶ月以上続いている場合は、専門家への相談をおすすめします。
- 愛着のある人(主に親)と離れることに、強い苦痛を感じる
- 愛着のある人を失うこと、または離れ離れになることを過剰に心配する
- 迷子になったり、誘拐されることを過剰に心配する
- 離れることが心配で、学校や外出を嫌がる、または拒否する
- 一人でいること、または愛着のある人がいない状況を過剰に怖がる
- 愛着のある人がそばにいないと、眠ることができない
- 悪夢を繰り返し見る
- 離れることを予想すると、頭痛・腹痛・吐き気などの身体症状が出る
発達障害との関連について
分離不安の背景に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)といった発達障害の特性がある場合もあります。
発達障害があると、環境の変化に対する適応が難しかったり、不安を感じやすかったりすることがあります。
その結果、分離不安が強く現れるケースがあるのです。
発達障害が疑われる場合は、分離不安への対応だけでなく、特性に合わせた環境調整も必要になります。
専門家への相談をためらわないで
「大げさかな」「様子を見た方がいいかな」と迷う気持ちはわかります。
でも、「診断」は医師にしかできません。
専門家に相談することは、決して大げさなことではありません。
お子さんの状態を正しく理解し、適切なサポートを受けるための第一歩です。

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まとめ:お母さんが笑顔になることが、一番の薬です
母子分離不安は、お子さんの「わがまま」でも、お母さんの「愛情不足」でもありません。
複数の要因が重なって起こり、適切な対応によって改善します。
回復には時間がかかります。
焦らず、お子さんのペースに合わせて、スモールステップで進んでいきましょう。
そして、お母さん自身の心のケアを忘れないでください。
お母さんが不安でいっぱいだと、その不安はお子さんにも伝わってしまいます。
一方、お母さんが穏やかで笑顔でいられると、お子さんも安心します。
「お母さんが笑顔でいること」は、お子さんにとって一番の薬なのです。
毎日笑顔でいるなんて、簡単ではありません。
だからこそ、一人で抱え込まず、誰かに頼ってください。
「ぜんとカウンセリング」では、公認心理師がお母さんの心のケアと、お子さんに合ったスモールステップの計画作りをお手伝いしています。オンラインで全国どこからでもご相談いただけます。
「つらい」「どうしたらいいかわからない」——そう思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
