- 子どもが「学校に行く」「やっぱり行かない」と迷っている時の保護者の対応がわかる
- 朝の保護者の子どもへの対応が生活リズムや家族関係に影響を与えることがわかる
- 朝のバタバタした中で親子関係が悪化しないために前日にできることがわかる
お子さんが不登校になると、毎朝、「学校に行きたい」「行きたくない」という子どもの心の揺れることがあります。
例えば、前日には「明日は学校に行く」と言いながら、朝起きてこない。
あるいは「明日も休む」と言いながらいざ朝になると「やっぱり学校に行ってみようかな」と言い出すこともあるでしょう。
そんな時に、どう対応すればいいのかと不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
ただでさえ、朝食の支度や洗濯などの家事、仕事に出かける準備などでバタバタしている朝の時間帯。
お子さんの心が揺れるとそばで寄り添うことは大事と分かっていながらも、
「どうするの?」
「早く決めなさい!」
「また、今日もそんなこと言って」
・・・などと対応してしまい、
「またやってしまった」と反省するご家族も非常に多いものです。
この記事では、朝お子さんが学校に行くか行かないか決心がつかない状態について。
保護者がどのような対応をすればよいか、不登校の家族支援を25年以上行っているカウンセラーの立場から解説します。
朝のバタバタ、勝負は前日の夜
実は、朝の「行こうかな?」「やっぱり休もうかな」という心の揺れへの対応は、前夜で決まっています!
正直、朝その場でオロオロしたり、思い付きの対応をしたところで、うまくいくはずがありません。
前夜に準備をしておくことで、朝の迷いが軽減されます。
そして、バタバタした中での対応でお子さんが傷ついたり、保護者さんが後悔することが減ります。
1.翌日の準備をしておく
前日に翌日の準備をしておきましょう。
あさ、バタバタした状態で「時間割は揃ってる?」「ハンカチ持った?」「忘れ物はない?」などと言っていたら、それだけで子どもは学校に行く気をなくしてしまいます。
朝のバタバタしている時間ではなく、夜の少し余裕のある時間帯に学校について話すことが大事です。
もし、夜の段階で学校に対する準備ができなかったり学校の話題が出せないようなら、登校するのは難しいでしょう。
前夜の準備に対する子どもの取り組み具合によって「あぁ、多分明日はこうなるな」という想定もつきやすくなります。
服装は前夜に決めておく
まずは、服装を決めましょう。制服なら制服を揃えておくだけでも構いません。
もし、私服で登校する学校であれば、お子さんが自分で選んだ服を着ることで、自己表現の機会を得られ、自立心も養われます。
前夜に服装を決めておくことで、朝の決断の負担を減らし、スムーズなスタートを切ることができます。
学校の持ち物の確認
お子さんと一緒に、学校の持ち物をチェックし、夜のうちにすべて準備しておくことが大切です。
これにより、忘れ物を防ぎ、お子さん自身も物事を管理する力を身につけることができます。
お子さんも翌日の時間割などスケジュールを確認できることで、ある程度頭の中でシミュレーションができるはずです。
ネガティブな反応も大事
翌日の準備をしていると「給食やだな」「体育があるのか、やりたくないな」などとネガティブな反応が出るかもしれません。
この時の対応に気をつけましょう。
その1:ネガティブな反応を否定する
「そんなこと言わないで」
「きっと楽しいはずだよ」
・・・などと、お子さんの発言を否定してしまうかもしれません。
これでは、「正直に話してもちゃんと聞いてくれない」とお子さんは家族に本音を離せなくなってしまいます。
その2:オーバーに対応して、挑戦できない状況を作ってしまう
「じゃあ、明日は休んで明後日からにしようか」
「イヤなら無理しなくていいよ」
・・・などと、お子さんの不安を回避することを考えてしまうと、いつまでも前に進めません。
もし、ネガティブな反応が出たら、それを否定したり、オーバーに対応するのではなく、冷静に話を聞きましょう。
「そっか、確かに不安だよね。教えてくれてありがとう。応援するから、できるところまでは挑戦してみようよ」
タイムリミットを決めておく
朝、迷いすぎないようにある程度のタイムリミットを決めておくといいでしょう。
ここでのタイムリミットは、その時間までに間に合うようにプレッシャーを与えるという意味ではありません。
落ち着いて朝を過ごすことを優先しつつ、判断のタイミングを設定しておくのです。
判断の例
- 七時半までに、着替えができていなければ、明日は休みでいい
- 8時までに準備ができたら、一緒に出よう。もし、辛かったら途中で帰ってきてもいいから
などと決めておくと、迷いが減ります。
もちろん、当日朝になってその時間を過ぎてもいろいろ考えているかもしれません。
その場合でも「今日は、昨日決めた通りにしよう!そして、また夜に明日のことを考えよう」と伝えるのです。
学校に行けないことを家族のせいにしてくる場合
「親が止めたから、あきらめたけれど本当は学校に行きたかったんだ」などといってくるかもしれません。
その時は「またそんなこと言って!」「人のせいにするんじゃない」などと厳しく言うのはよくありません。
「そっか、それだけ学校に行きたかったんだね。今日は昨日の約束通り7時半になったから止めたけれど、じゃあ明日は8時まで考えようか。そうやって学校に行こうと思う気持ちが聞けたのは、とてもうれしいよ」などと伝えておくと、翌日以降につながります。
2.朝の慌ただしさをイメージしておく
保護者も余裕がなくて”塩対応”になる可能性を伝えておく
朝は、家事や仕事の準備などで一日の中でも一番慌ただしい時間帯でしょう。そのような時に、お子さんがじっと動かずに何かを考えていたり、つらそうな態度を示していると、ついついイライラしてしまうこともあります。それは慌ただしさのせいであり、別にお子さんのことを心配していないとか、うっとうしく思っているわけではないはずです。
そこで、事前に「朝はバタバタしているから、あなたのことを心配だけれど充分に話を聞けないかもしれない。その時は、また夜に話を聞かせてね」などと伝えておくと良いでしょう。そうすれば、朝バタバタしている中で、充分に対応できなくても、お子さんもわかってくれるかもしれません。幼かったり、保護者を頼りにしているため、その場ではお子さんが「わかってくれない」と思うかもしれません。その場合でも、夜に「昨日約束した通り、話を聞かせて」とフォローすることができます。そして、その場でも「また明日の朝もバタバタすると思うから夜に話を聞かせてね」と伝えられれば、理想的ですね。
朝食のメニューを確認しておく
朝食のメニューを前夜に決めておくことで、朝の時間を有効に使うことができます。栄養バランスの良いメニューを選ぶことで、お子さんの健康的な一日のスタートを支えます。場合によっては、お子さんの好物や希望するメニューを朝食に取り入れることで、起きる楽しみができることもあるようです。
朝のバタバタを軽減するためにも、前夜のうちに朝食の準備をしておくことも有効です。例えば、おにぎりを握っておく、具材を切っておく、温めるだけの状況にしておくなど、できることがあればやってみましょう。その際に、お子さんにも手伝ってもらえれば、お子さんも翌日起きて食べるのが楽しみになるでしょう。
3. 十分な睡眠を心がける
当然ですが、朝バタバタしないためには早く寝て、質の良い睡眠をすることが役立ちます。充分な睡眠は、お子さんの学習能力や集中力を高め、穏やかな朝を迎えるために必要です。夜更かしを避け、リラックスできる就寝前のルーチンを取り入れましょう。
ただし、「ちゃんと寝よう」と意識しすぎると眠れなくなってしまうことがあります。お子さんにとってプレッシャーになるようであれば、「早く寝なさい」と言いすぎるのは避けましょう。
お子さん心を穏やかに保つために
毎朝、直面するお子さんの心の揺れを少しでも和らげるために、前夜にできる準備を心がけてみてください。お子さんが安心して一日をスタートできるように、保護者の皆さんも一緒に準備をすることが、お子さんへの大きな支えになります。小さな一歩が、お子さんの大きな自信につながりますよ。
毎朝の不安を軽減させる5つのヒント
ここからは、実際に朝の過ごし方について5つのヒントをご紹介します。
5つ全てを取り入れる必要はありません。お子さんの年齢やそれまでの経緯、気持ちが学校にどれだけ向かっているかなどで、大きく異なります。もし、使えそうなものがあれば、参考にしてください。
1. ゆったりとした朝の時間:心と時間に余裕を持つ
時間に追われる朝は、子どもの気持ちに寄り添う余裕も、じっくり話し合う時間もありません。子どもにとっても、学校に行くか行かないか迷っている状況は不安でいっぱいです。
朝食をゆっくりと家族で食べる時間を作りましょう
朝食は、一日の始まりを気持ちよく過ごすための大切な時間です。時間に余裕を持って起き、家族でゆっくりと朝食を食べることで、心も身体も落ち着き、自然と会話も弾みます。子どもが安心して気持ちを話せる環境を作るためには、親も余裕を持つことが大切です。
子どもとの会話を大切にしましょう
朝食の時間は、子どもが好きなことや昨日の出来事など、様々な話を聞いてみましょう。あるいは、家族が今日の予定を伝えたり、天気の話や前日に見たドラマの話などでもいいでしょう。子どもが説教や嫌味に受け取らないように学校の話題とは関係ない話の方がいいかもしれません。
一緒に朝の支度をする
一緒に登校準備をすることで、子どもは自然と学校に行く気持ちに切り替わることがあります。服装や持ち物などを一緒に確認しながら、学校生活への期待感を高めていきましょう。
ただし、一緒に準備をすることを意識しすぎて、朝の支度を急かしてしまうのは、お子さんにとってプレッシャーになって逆効果になります。マイナスになるくらいなら何もやらない方がいいでしょう。
2. 共感の言葉で包み込む:子どもの気持ちを受け止める
「学校に行きなさい」と無理強いしたり、「学校に行かないのはダメ」と責めたりするのは逆効果です。子どもは不安や葛藤を抱えています。まずは、「今日は学校に行きたい気持ちと、行きたくない気持ちがあるんだね」と子どもの気持ちを理解していることを伝えましょう。
子どもの気持ちに寄り添う
子どもが学校に行きたくない理由は様々です。勉強が難しい、友達関係がうまくいかない、先生に怒られたなど、様々な理由が考えられます。もし、子どもが話したい様子なら、子どもの話をじっくりと聞いてあげましょう。そこで、子どもが聞いてこない限りはアドバイスなどは必要ありません。別にうまく答える必要はなく、しっかりと聞いてあげれば充分です。
子どもの気持ちを否定しない
子どもの気持ちを否定したり、軽視したりすることは、子どもの心を傷つけます。「学校に行かないのはダメ」というような言葉は避け、「大変だったね」「辛いよね」と共感の言葉を伝えることも有効です。
励ましの言葉をかけ、自信を与える
子どもが学校に行くことを決断した場合は、「応援しているよ」と励ましの言葉をかけましょう。子どもの自信を高め、安心して学校生活を送れるようにサポートすることが大切です。
3. 選択肢を与える:子どもの主体性を育む
「学校に行くか行かないか」を二者択一ではなく、「今日は午前中だけ登校してみる」「オンライン授業を受ける」など、選択肢を提示することで、子ども自身が主体的に決断できる環境を作ることができます。
小さなステップから始める
いきなり学校に行くのが難しい場合は、次のような小さいステップで進めていくことが大事です。
- 校門をタッチして帰ってくる
- 朝ではなくクラスメイトなどが帰った放課後に登校する
- オンライン授業を受ける
子どものペースに合わせて、徐々に学校生活に慣れていくようにサポートしましょう。
選択肢を増やす
学校以外にも、学習塾やフリースクールなど、子どもが学べる場所はたくさんあります。また、オンライン教材などを利用した家庭学習も重要です。子どもの興味や関心に合った場所を見つけることで、学校に行く以外の選択肢を増やすことができます。
保護者が抱え込まないことも重要
一人で抱え込まず、スクールカウンセラーや不登校専門のカウンセラーなどの専門家に相談しましょう。カウンセラーは、子どもとの面接はもちろん、保護者と面接をすることで朝晩のコミュニケーションを改善したり、保護者の不安解消や偏った考え方の修正なども可能です。
まとめ
この記事では、朝「学校に行くか行かないか」と悩むお子さんにどのように対応すれば良いか解説しました。
朝の対応で、親がイライラしてしまうとお子さんは「どうせ起きて、学校に行くか行かないか迷っても、親がイライラして怒るだけだし、面倒くさいから、親が仕事に行くまで寝たフリしておこう」などと考えてしまうかもしれません。
そうなると、親子の会話が減るだけでなく、生活リズムも崩れてしまいます。
朝バタバタすることについて、前夜のうちにケアしておくことで、それ自体がコミュニケーションになりますし、お互いの信頼が深まります。
一日で劇的な変化を起こすことはできませんが、夜の声掛けなどを繰り返し試すことで徐々に良い変化が期待できます。
ぜひとも、参考にしてお互いに朝の憂鬱が少しでも軽減されれば幸いです。