この記事でわかること
  • 子どもが朝ご飯をなぜ食べないのかわからない
  • 朝ご飯をあまり食べない時に、無理やり食べさせた方が良いのか
  • 朝ご飯を食べないでメリットを知りたい
  • 子どもが朝ご飯を食べるためのヒントが知りたい

不登校の子どもが朝食を食べない理由は、非常に多面的で複雑です。心理的な問題、身体的な状態、環境的な要因など、多岐にわたる要素が絡み合っています。この記事では、子どもが朝食を食べない理由とその対処法について解説します。
朝ご飯を食べることで、体内時計が安定して、食欲も出てくるという好循環が生まれます。子どもが朝食を食べる環境作りについても紹介します。

心理的な要因

学校へのストレスや不安

学校に行くという行為自体がストレスや不安のタネの場合、朝食欲が出ない場合があります。特に、朝の時間帯はその日の学校生活を思い浮かべることで不安が増幅され、朝食を摂る気にならないのです。

「朝食を食べ終われば、学校に行かなければならない」→「朝食を食べない間は学校に行かなくていい」と考える子どももいます。
特に、親が共働きなどで保護者が昼間自宅に不在の場合、「家族が家を出るまで朝食を食べなければ休める」と考えることもあるのです。

自己イメージとのギャップ

自己イメージと現実との間にギャップがあると、食事に対する抵抗感を生じることがあります。

特に思春期の子どもは、自分の体型に対する過剰な意識から食事を抜く行動をとることがあります。
体型に対する自己意識が高まると、食事を制限することでそのギャップを埋めようとする傾向があります。

自己イメージへのこだわりが強すぎると、摂食障害になることもあります。早めの病院受診をすすめます。

身体的な要因

睡眠の質と量の不足

睡眠が十分に取れていないと、朝食を摂ること自体が大きな負担と感じられることがあります。

睡眠と食欲は密接に関連しており、睡眠不足は食欲の減退を引き起こすことがあります。
また、睡眠不足は体調を崩しやすく、体調不良はさらに食欲を失わせる要因となります。

消化器系の問題

胃腸が弱い、または消化器系に何らかの問題を抱えていると、朝から食事を摂ることが難しくなることがあります。
胃腸の不調は、食事を摂ることへの抵抗感を生じさせ、食欲を減退させる可能性があります。

下痢や便秘など、おなかの調子が悪くなりがちな子どもは食べることで昼間トイレに行く心配をしてしまい、朝食を食べないこともあります。
特に過敏性腸症候群は、子どもでもよくかかりやすい病気です。

ストレスも大きな要因のため、ストレスにより過敏性腸症候群になり、お腹の調子が悪くなることがさらにストレスになるという悪循環になることがあります。

環境的な要因

家庭内の緊張感

家庭内でのストレスが高い、または朝食時に家族間でのコミュニケーションがうまく取れていないと、食欲がでません。
みなさん自身も、家庭に限らず職場などで「一緒に食べたくないな」「食欲が出ないな」という場面が、一度は経験したはずです。

子どもが自分の思いを共有する機会がない場合、食事時間がストレスフルなものになり、食事そのものを避ける傾向が出てきます。
家庭環境の中での対人関係の問題や、家庭内の不和なども子どもの食欲を減退させる要因となることがあります。

生活リズムの乱れ

生活リズムが乱れがちな不登校の子どもは、朝食を摂る習慣がなくなってしまうことがあります。

日常生活のリズムが乱れることで、体の内部時計も乱れ、食事時間が定まらなくなる結果を生むためです。
特に、不規則な生活は体のリズムを狂わせ、食事時間が定まらなくなると、体は食事を摂ることに対して抵抗感を持つようになります。

その他の要因

食への興味や関心の低下

不登校の子どもの中には、一般的な活動や趣味に対する関心が低下することがあります。
そのため、食事に対する興味や関心の低下にもつながることがあります。

特に、不安やうつ状態にある子どもは、日常生活のさまざまな側面で意欲の低下を経験することがあり、食への関心減少として現れることがあります。
オンラインコンテンツやビデオゲームなどに過度に没頭している場合も、現実世界の活動、特に食事に対する関心が低下することがあります。

感覚過敏や偏食

感覚過敏は、食事の時間を非常に困難なものにし、保護者が適切な栄養を提供することを難しくする可能性があります。
特定の食物の質感や味、匂いに対して強い嫌悪感を持ち、結果として偏食になることがあります。

特に、自閉症スペクトラム障害(ASD)などの発達障害がある子どもは、感覚過敏の問題を持つことがあります。

朝食の準備や食べる時間が不足している

家族が忙しいことによって、朝食が準備されないこともあります。

ある程度の年齢になれば、自分で朝食を準備することも可能でしょうが、子ども自身がまだ食事の準備をできない場合、朝食を食べることができません。

保護者が寝ているから、子どもが朝ご飯の準備をするご家庭もありますが、かなりハードルは高いでしょう。

家庭内の経済的な問題

経済的な困難に直面している家庭では、子どもに十分な栄養を提供することが難しくなる場合があります。

食料の不足や質の低い食事が常態化すると、子どもは朝食を食べない、または栄養価の低い食事を摂ることになりがちです。
経済的な問題は、子どもの健康や発達に長期的な影響を与える可能性があります。

近年では、子ども食堂の取り組みなども全国的に普及してきており、経済的に難しいご家庭への支援も行われています。

朝食を食べない場合の対応方法

1. 原因を理解する

子どもが朝食を食べたがらない背景にある心理的、身体的、環境的要因を理解することが重要です。
ご飯を食べないことについて心配していると伝え、率直に子供が食べない理由を聞いてみることが大事です。

さらに、これまでの変化を振り返ることも大事です。例えば、次のようなことを振り返ってみましょう。

  1. もともとあまり食べないところを保護者の声掛けで無理をして食べていたのか
  2. ある日突然食べなくなったのか
  3. 徐々に食べなくなったのか。
  4. 身体の変化(急激にやせている、トイレによく行くようになった)
  5. 昼食や夕食、間食(おやつや夜食)などは食べているか
  6. メニューによって食べる食べないの違いがあるか(パンの日は食べるが、ごはんの日は食べないなど)

この中で、2・3・4に当てはまる場合は注意が必要です。特に「4.身体の変化」がみられる場合には、まずはかかりつけの小児科で良いので病院受診をおすすめします。

昼夜逆転で実は夜中に夜食を食べているため、朝は食べられないという場合もあります。そのような時は、無理に朝ご飯を食べさせることにこだわらず、生活全体の見直しを計った方が良いでしょう。

「6.メニューによって食べる」場合は、食べられるメニューを積極的に出すことも一つの方法です。
汁物なら飲めるという場合もありますので、その場合にはスープ系のメニューを多めにすることもいいでしょう。
「好き嫌いは良くない」「いろいろなメニューをまんべんなく食べた方がいい」という考えもあるでしょう。しかし、元プロ野球選手のイチロー選手が一時期朝は毎日カレーだけを食べていたという話もあります。他にも毎朝同じメニューを食べて活躍している人はたくさんいます。

他の家族から「毎日同じメニューじゃ嫌だ」と言われて、子ども用と他の家族用で2種類作らなければいけない

 

確かに、2種類を準備するのは大変ですよね。
子どものメニューを週末に大量に作り冷凍保存して、毎朝レンジで温めるだけにするできるかもしれません。中学生以降であれば自分で作らせるなどメニューによっては工夫ができます。
今日、明日で解決する問題ではありませんが、準備が楽になる工夫を考えてみましょう。

2. 環境を整える

家族が慌ただしくしていたり、急いでイライラしているところで、ご飯は食べにくいですよね。他の家族も少し早く起きて朝の慌ただしさを緩和させたり、それが難しければ、朝準備するスペースとゆっくり食事をするスペースを分けてみるだけでも有効です。別の部屋にすることができなくても、例えば、食べている人の前でバタバタするのではなく、食べている人の背後で準備をすることもいいでしょう。

3. 朝のルーティンを決める

起きてすぐに食欲は出ません。個人の生活リズムや健康状態、朝の時間帯の活動レベルなどによって最適なタイミングは異なるため、一概には言えません。

時間栄養学の観点からは、起床後1時間以内に食べることが良いと言われています。朝食を食べることで体内時計がリセットされるからです。
体内時計がリセットされないと、ズレ続けてしまい、不眠、倦怠感、食欲低下、集中力の低下などにつながりやすくなります。

どうしても食欲がない場合は、朝起きてすぐにコップ一杯の水を飲み、カーテンを開けて太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされます。

4. 柔軟に対応をする

「絶対にこれを食べなければいけない」「家族全員が同じ時間にテーブルにそろわないといけない」などの家族のルールがあるかもしれませんが、重要なことは、子どもの健康と健全な発達です。そのための食事なので、他のこだわりは少し目をつぶることも大事です。

こだわった結果何も食べなくなるよりは、

  • 少しだけ食べる。
  • 同じものだけ食べる。
  • 朝はほとんど食べないけれど、昼と夜の食事で1日に必要な栄養素を確保する。
  • インスタントでも食べればOK

といったように、柔軟な対応をすることで徐々に朝食の習慣がついてくることがあります。
「3.朝のルーティンを決める」で、体内時計の話をしましたが、体内時計が乱れると食欲不振にもつながります。
反対に、体内時計が安定すると、食欲が戻ってきます。そのため、理想の朝食ではなくてもまずは食べる習慣をつけることで、食欲が出てきてさらに食べられるようになることもあるのです。

5. 専門家の助けを借りる

あまりにも食べない場合や、体調不良につながっている場合は小児科に受診することをおすすめします。
食欲不振や朝の家族コミュニケーションに関するカウンセリングは、家族療法がとても効果的です。家族が全員揃う必要はなく、誰か一人で相談することができますので、まずは状況を変えたい人が申し込まれることが大事です。

朝のメニューなどに困った場合には、ネットや書籍で子ども向けの朝食レシピが紹介されていますので、それらを参考にするのも良いでしょう。
毎日準備するのが難しくても、休みの日に作り置きができたり、前日の夕飯のリメイクレシピなどもあります。あるいは、子ども自身が準備できるレシピなどもありますので、子どもに任せることもできるかもしれません。

朝食は生活リズム安定の大事なカギ

子どもが朝食を食べるようになるまでには、時間がかかります。保護者としては、忍耐強くサポートを続け、ポジティブな食事体験を積み重ねることが重要です。

朝食を摂らないことで生活や発達に必要な栄養が不足してしまいます。体内時計が乱れ、集中力の低下や不眠、食欲不振になってさらに食べなくなるという悪循環になる危険性もあります。

朝の忙しい時間帯に食事を準備することはとても大変でしょうが、それぞれのご家庭の事情にあった方法を考えていきましょう。
もし、家族だけでの解決が難しい場合は、専門家への相談をおすすめします。