- どのようないじめがあるかがわかる
- いじめに対して、学校に期待できること、保護者がやるべきことがわかる
- 子どもがいじめを訴えてきたときに、保護者がどう受け止めればよいかがわかる
この記事では、不登校との関連が深い「いじめ」についてご紹介します。
一言でいじめと表現しても、さまざまな形のいじめがあります。いじめが解決しないうちに無理に登校させることは危険です。一方でいじめた加害側や学校を責めるだけでもようとするといじめとは?もしいじめられたらどうするか。よくある誤解。学校にできること。親にできること。いじめに悩むこどもをどうサポートできるかについて取り上げています。
さまざまないじめ
いじめとは、直接的であっても間接的であっても、わざと相手が傷つくことを言ったり、したりすることです。
ちょっといたずらしたつもりだけだったとしても、された側が「嫌だな」と感じたり、悲しい気持ちになると、それはいじめていることと同じです。
いじめには色々な種類がありますが、共通しているのは、「自分がされたら嫌なことを、誰かにすること」です。いじめにはこんな種類があります。
暴力
たたいたり、蹴ったり、わざとぶつかったり、相手に不快な思いをさせて傷つける行為です。
無視
話かけられてもわざと聞こえないふりをしたり、仲間はずれにしたり、こっそり物を隠したりして、相手のこころを傷つけます。
インターネットでの嫌がらせ
はっきりと分かるように、またはそれとなく匂わせるようにして、相手の評判が傷つくようなメッセージや写真を送ったり、SNSに載せたりします。
噂を流す
本当か嘘かは別にして、相手が傷つくような話を、本人以外に広めることです。
子どもがいじめられたら
子どもから、いじめられていると告白されたら、びっくりしますよね。
本当にいじめられているのか、ともだちと喧嘩してそう言っているのか、よくわからないと感じることもあるでしょう。
しばらく様子を見てみようと思うかもしれませんが、最初から「いじめ」はどんな形であっても良くないことなんだということを、はっきりこどもに伝えることは、いじめを長引かせないためにとても大切だと言われています。
よくある誤解
いじめはこども同士の遊びだ。
悪ふざけする遊びの中で、こどもたち自身が良いことと良くないことを学んでいくという風に考える人もいますが、「いじめ」は命に関わる問題です。残念ながらいじめによって自殺してしまうこどもは後を絶ちません。大人の間でもいじめに遭ってどうしたらいいのか悩んでいる人は少なくありません。子どもならなおさらですよね。
いじめに意義はありません。いじめはただただ良くないことです。
いじめられる方にも問題がある
中には、いじめられる側にも問題があるので、多少は仕方ないと考える人もいるようです。
しかし、それは間違いです。いじめられてよい子どもなど存在しません。でも、大抵問題を抱えているのは、いじめている側です。健全とはとてもいえない家庭環境で育っているケースも少なくありません。その中で抱えたストレスを、だれかをいじめることで発散している場合もあります。
生活していると、他の人にイライラすることって誰でもありますよね。でも、イライラしたからといって、暴力はふるいません。
いじめは暴力です。なので、たとえ相手にイライラしたとしても、いじめてもいい理由にはならないのです。
学校にできること
いじめが起きる前に、いじめは絶対にダメだという意識を、先生や生徒に指導することで予防できるかもしれません。もしいじめが起きてしまったら、一刻も早く、いじめられた側といじめた側に適切な対応をします。
【関連記事】
担任との関係が悪く不登校になった場合の適切な対応は?カウンセラーが解説
保護者にできること
いじめられているこどもの多くは、そのことを隠したがります。
多くの場合、恥ずかしく思ったり、保護者に心配をかけたくない、保護者に伝えたことがばれて更にいじめられたりするのを怖がっているのかもしれません。
普段からお子さんと自由な会話をするようにしているなら、問題を打ち明けやすくなるでしょう。
その際に重要なことは、絶対に結論を言わないこと
「いじめっ子にはやり返せばいい」
「もうすぐに止めるはずだから我慢してなさい」
「お父さん(お母さん)が代わりに、相手の親に言ってくるから」
このような対応は、大体の場合が失敗します。なぜなら保護者側が感情的になっていて冷静な判断ができていないからです。
子どもからいじめを打ち明けられた時のステップ
まずは、打ち明けてくれたことについて感謝を伝える
子どもが保護者にいじめについて打ち明けるのはとても勇気が要ることです。何日も前から自分一人で抱えていたのかもしれません。
その時に「なんでもっと早く言わないんだ」「その程度のこと気にするな」「自分が強くなって、いじめっ子にはやり返してやれ」などとアドバイスをするのは逆効果です。
なぜなら、「もっと早く言うこと」も「気にしないこと」も「やり返すこと」もできないから悩んでいるのです。それにもかかわらず、親からできないことをやれと言われるだけでは、「相談するだけ無駄だ」と考えて親に話すことを止めてしまいます。
学校でいじめられてつらい思いをしているのに、さらに家で親から頭ごなしのアドバイスをされるなら、親には相談せずいじめに耐えることしか考えなくなってしまいます。
それでは、保護者が子どもの味方になって助けるどころか、子どもを家庭の中でも孤立させてしまうことになりかねません。
子どもを孤立させないように、
「そうなんだ。本当に大変だったね。そんなつらい中でちゃんと打ち明けてくれてありがとう。これからも、何かあればすぐに教えてほしい。お父さんやお母さんは君の味方だから」
ということを伝えましょう。あくまで、このセリフは一つの例です。
表現はどんな形でもいいです。勇気を出して打ち明けてくれたことを肯定して、これからも何でも話してほしいと伝えるのです。
情報を整理する
話を聞いてすぐに動くことはおすすめしません。まずは、数日間情報収集をしましょう。
必ずやるべきことは、被害に関する確認です。
- けがをしていないか:外見で、アザやキズがないか、急に隠したりごまかしたりすることがないか
- 壊されたり無くなったものはないか:持ち物のキズができたり、「無くした」「新しいのを買って」ということがあるか。
- 何かモノやお金を取られたり貢いだりしていないか:親のお金を持ち出したり、お小遣いの使い方が荒くなっていないか。
- 友人関係の変化はないか:前に話していた友達と疎遠になった、突然新しい友達とばかり付き合うようになった
※これらのことが当てはまったから、すぐ「いじめだ」と判断するのは間違いです。本人と話す機会を増やして慎重に確認をしていきましょう。
何日間か学校から帰ってきたら子どもにその日の様子を聞いていきます。
元々は仲の良い友達同士で少し行き違いがあって「意地悪をされている」と思った場合などは、この情報収集の間に落ち着く場合もあります。
同じ学校にきょうだいなど身近な人が通っていれば、その人から話を聞くこともできます。
担任や養護教諭などに気軽に話せる場合は、話を聞いてみることも大事です。
話をよく聞くと、友人同士のトラブルがあり、最初に意地悪をしてしまったのが自分の子どもの場合もあります。
それで、立場が逆転して今度は意地悪をされているということもあります。その場合、相手に「謝罪しろ」とだけ言っても「お互い様」「元々はそっちが悪い」などとさらにこじれてしまう場合があります。
解決に向けて動く
情報を集めて、いじめられていることが間違いなければ解決に向けて動きましょう。
一番最初には、学校に相談することが大事です。クラス全体から無視をされているなど、大人数の場合は管理職に最初に相談するのが良いでしょう。
また、管理職への相談が難しい場合や信頼できない場合は、教育委員会に相談することが有効です。
よくあるお悩み
- Q子どもが「いじめられている」というので情報収集をしています。元々は友達だったので、相手は「ふざけて遊んでいるだけ」と思っているようです。確かに、自分が子どもの頃のことを振り返ると、この程度のことはいじめではなく「よくあること」でした。もちろん時代が違うので、昔と今では別のとらえ方をすべきだと思いますが、どのように見極めればいいでしょうか?
- A
いじめと「ふざけて遊んでただけ」との違いを見分けるのは、確かに難しい場合があります。この違いを理解するには、いくつかのポイントを考慮する必要があります。
- 意図:「ふざけて遊んでいる」行動は、基本的には双方にとって楽しいものであり、悪意はありません。一方、いじめにはしばしば悪意があり、対象者を傷つける、恥をかかせる、または孤立させる意図が含まれます。
- 反応:遊びの中でのふざけあいは、関わっている全員が笑い合って楽しんでいます。しかし、いじめの場合、被害者は明らかに不快であったり、傷ついていたり、反応が一方的に負のものです。
- 繰り返し:いじめは繰り返し行われる傾向があります。同じ子どもが何度も標的にされる場合、それは単なるふざけ合いではなく、いじめの可能性が高まります。
- 力の不均衡:いじめの状況では、加害者と被害者の間に力の不均衡が存在します。これは身体的な力、社会的な地位、数の上での優位性など、さまざまな形を取り得ます。ふざけあいは通常、対等な関係性の中で行われます。
- 影響:いじめは被害者に深刻な心理的、肉体的影響を及ぼすことがありますが、ふざけ合いは通常、後味の悪い感情を残さないものです。
これらのポイントを考慮することで、いじめとただのふざけ合いとの違いを見極めることができます。しかし、状況によってはこれらの区別が曖昧になることもあり、子ども自身が「ただ遊んでいただけ」と感じていても、他方が傷ついている場合には、その行為はいじめに該当する可能性があります。このような場合、大人が介入して状況を明確にし、適切な対応を取る必要があります。
さいごに
この記事では、不登校の原因となるひとつ、いじめについて取り上げました。
いじめは、とても深くこころを傷つけるひどい行為です。
いじめられるこどもはもちろん、いじめるこどもにとっても、何もよいことはありません。
「いじめ」についての正しい対処方法をよく学んで、いじめからこどもを守るために出来る限りのことをしていきましょう。
文献
https://www.mext.go.jp/content/20201015-mext_jidou02-100002753_01.pdf
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00155.html
https://kyoin.co.jp/column/about-the-problem-of-bullying/