学校でのストレスに悩む子どもたちとその保護者の方へ。

この記事では、学校ストレスの原因、具体的な症状、そして効果的な対処法について解説します。
スクールカウンセラーの視点から、子どもが安心して学校生活を楽しむためのヒントを提供いたします。

 学校ストレスとは?

ストレスとは、体や心に負担がかかる状態のことです。ストレスは、適度な量であればやる気を引き出したり、成長のきっかけになったりしますが、過剰または長期にわたると、心や体に悪影響を及ぼします。

ストレスは「人生のスパイス」と言われます。全くないと味気ないし、適度にあれば美味しくなりますが、強すぎたり自分に合わない場合は苦痛になります。

学校ストレスの特徴

長期間続く

毎日学校に通うため、ストレスが継続的に蓄積されていきます。 

複合的

 のちほど、一つずつくわしく解説しますが、勉強、友達関係、先生との関係など、様々な要因が絡み合って複雑なストレスを生み出します。 

逃れにくい 

義務教育のため、簡単に避けることができず、ストレス状況に向き合わざるを得ない場合が多いです。 
つまり、

ストレスを感じやすい子どもの特徴

完璧主義な性格

高い基準を自分に課すため、それを達成できないとストレスを感じやすくなります。 

学校では、いろいろな教科を勉強します。運動もするし、クラスメイトや担任などの教員との人間関係もある。
当然ながら、「何かがうまくいかない」場合もあります。

その時に、多くの人は「うまくいかなくても仕方がない」と考えます。
しかし、「うまくできなければいけない」と思い込んでしまうと、できない自分が許せなくなります。

また、他の人がいるところで失敗や間違いをすることを極度に恐れ「失敗しそうだからやめておこう」と考えてしまうお子さんもいます。

人の目を気にしやすい

周囲の評価を過度に気にすることで、常に緊張状態にあり、ストレスが溜まりやすくなります。 

完璧主義な性格にもつながりますが、人前で失敗をすることや間違えることを恐れたり、友達ができず一人ぼっちになることを恐れてしまうお子さんもいます。

新しい環境に慣れるのに時間がかかる

環境の変化にストレスを感じ、適応に時間を要する傾向があります。

学校の場合、組替えをしたり担任が変わったり、新しい教科や難しい単元が始まるなど、子供の成長に合わせてどんどん変化していきます。

大人でも、新しい職場や新しい仕事内容が始まると最初の頃はなれずに戸惑います。
まだまだ幼い子どもならなおさら、新しい環境に慣れるために相当な負担がかかります。

感受性が強い

周囲の変化や出来事に敏感に反応するため、ストレスを受けやすい傾向があります。

例えば、次のような”よくある出来事”で、気持ちが苦しくなってしまうことがあります。

感受性が強い子が、影響を受けやすい状況
  • 授業中に他の子が発表で間違えてしまった
  • クラスメイトが宿題を忘れて担任の先生に注意をされていた
  • 休み時間にクラスメイトが、その場にいない子の悪口を言っていた

感受性の強いお子さんは、HSC(Highly Sensitive Child:非常に敏感な子)やHSP(Highly Sensitive Person:非常に敏感な人)とよばれることもあります。

感覚過敏

音や光、匂い、手触りなどさまざまな感覚に敏感なお子さんがいます。

学校は集団生活のため、さまざまな音や匂いに囲まれています。
また、制服や体操服などの肌触りやクラスメイトのスキンシップなどが苦手なお子さんもいます。

また、過敏というほどではない子でも学級崩壊気味で騒々しいクラスなどの場合は勉強に集中するのが難しくなるでしょう。

 学校ストレスの主な原因

学校ストレスのおもな原因は、学業(勉強)面のストレス、対人関係面のストレス、環境面のストレス、その他に分けられます。

学業関連のストレス

テストや成績のプレッシャー

定期テストや成績評価に対する不安や重圧が、大きなストレス要因となります。 

宿題

膨大な量の宿題をこなすことで、自由時間が減少し、ストレスが蓄積されやすくなります。 

授業についていけない不安

学習内容の理解が追いつかないことで、自信を失い、ストレスを感じる原因となります。 

受験勉強の負担

高校受験や大学受験に向けた長期的な勉強が、精神的・身体的なストレスを引き起こします。 

人間関係のストレス

クラスメイトとのトラブル

友人との衝突や誤解が、学校生活における大きなストレス源となることがあります。 

いじめや仲間はずれ

いじめや孤立は、深刻な心の傷とストレスを引き起こす可能性があります。 

先生との関係の難しさ

教師とのコミュニケーションの問題や、叱責への恐れがストレスにつながることがあります。 

担任との関係が悪く不登校になった場合の適切な対応は?

友人関係との付き合い方の悩み 

思春期になると、性を意識するようになります。恋愛感情や性的な興味などから、同性との友人関係、異性との友人関係も変化していきます。そのなかで、新たなストレス要因となることがあります。 

環境変化によるストレス

新学期や進級時の環境の変化

 新しいクラスや担任、学習内容の変化に適応する過程でストレスを感じることがあります。 

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学校以外の要因も学校ストレスに影響を与える

転校や引っ越しによる環境の変化

新しい学校や地域への適応は、大きなストレス要因となる可能性があります。 

部活動の開始や引退

部活動の選択や引退時期の決断、競技や練習の厳しさがストレスにつながることがあります。 

家庭環境の問題

両親の不仲や経済的な問題など、家庭の状況が子どものストレスに影響を与えることがあります。

また、転校の多くが子どもの都合ではなく、家庭の事情(離婚・再婚・転勤・転職・経済的理由など)によるものです。
特に離婚や再婚で、転校になった場合、知らない人ばかりの新しい学校に通うのはただでさえストレスがかかる上に、家庭環境も変化がしているので、学校でも家でも緊張状態が続き安らげない場合があります。

身体的な成長や変化への不安

思春期特有の体の変化や成長に対する不安が、ストレスの原因となることがあります。

将来の進路に関する悩み

 進学や職業選択など、将来の進路に関する不安や迷いがストレスにつながることがあります。

 学校ストレスのサイン:早期発見のためのチェックリスト

身体的なサイン

頭痛や腹痛が増える

 ストレスによって、身体的な痛みが頻繁に現れることがあります。特に頭痛や腹痛は要注意です。 

食欲が落ちる、または過度に食べる

ストレスによって食欲が変化し、極端に食べなくなったり、逆に過食になったりすることがあります。 

寝つきが悪くなる、または朝起きられない

 ストレスは睡眠パターンに影響を与え、不眠や過眠の症状として現れることがあります。

体がだるい、疲れやすい

 ストレスが蓄積すると、慢性的な疲労感や倦怠感を感じやすくなります。 

精神的・感情的なサイン

イライラしやすくなる

 些細なことで苛立ちを感じたり、感情の起伏が激しくなったりすることがあります。 

落ち込むことが多くなる

 気分の落ち込みが頻繁に起こり、長引く場合はうつ状態の可能性もあります。

集中力が低下する

 ストレスによって注意力が散漫になり、勉強や日常生活に支障をきたすことがあります。 

不安や心配が増える

 将来や日々の出来事に対して過度な不安や心配を感じるようになります。

行動の変化

学校に行きたがらない

学校に対する強い抵抗感や恐怖心を示し、登校を渋るようになります。

遅刻や欠席が増える

学校を避けるために、遅刻や欠席が増加することがあります。 

成績が急に下がる

 ストレスによって学習意欲や集中力が低下し、成績に影響が出ることがあります。 

趣味や好きなことに興味を失う

 これまで楽しんでいた活動に対する興味や意欲が減退します。

 子ども自身ができるストレス軽減法 

学校でできる対処法

深呼吸やリラックス法を試してみる

 簡単な呼吸法やリラクゼーション技術を習得することで、ストレス状況下でも落ち着きを取り戻せます。 

運動や体を動かす時間を作る

適度な運動は、ストレス解消やメンタルヘルスの改善に効果的です。

好きな音楽を聴く、趣味の時間を持つ

 自分の好きな活動に時間を費やすことで、ストレスから一時的に解放されリフレッシュできます。 

十分な睡眠と栄養バランスの良い食事を心がける

 健康的な生活習慣を維持することで、ストレスへの耐性を高めることができます。 

学校から帰宅後に自宅でできること

自分の気持ちを日記に書き出す

感情や思考を整理することで、ストレスの原因を明確にし、対処法を見つけやすくなります。

信頼できる人(友達、家族、先生)に相談する

悩みを一人で抱え込まず、周囲のサポートを求めることが重要です。 

ストレスの原因を特定し、できることから少しずつ改善する

問題を細分化し、小さな目標から達成していくことで、ストレス状況を改善できます。 

「完璧」を目指さず、「できる範囲で頑張る」という考え方を持つ

 自分に対する期待値を適切に設定し、過度なプレッシャーを避けることが大切です。 

 保護者ができるサポート

子どものサインに気づく方法

日々の会話や様子の変化に注意を払う

子どもの言動や態度の変化を敏感に察知し、ストレスのサインを早期に発見します。

子どもの話をじっくり聞く時間を作る

定期的に子どもと1対1で話す時間を設け、悩みや不安を打ち明けやすい環境を作ります。 

子どもの表情や態度の変化に敏感になる 

言葉で表現されない感情の変化にも注意を払い、非言語的なサインを見逃さないようにします。 

学校からの連絡や成績表に注目する

学校生活での変化や問題を把握するため、学校からの情報に常に注意を払います。 

効果的なコミュニケーション方法

批判や否定を避け、共感的な態度で接する

 子どもの気持ちを受け止め、理解しようとする姿勢を示すことで、信頼関係を築きます。

オープンエンドの質問を使い、子どもの本音を引き出す

 「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、子どもが自由に答えられる質問を心がけます。 

子どもの気持ちを言葉で繰り返し、理解を示す

 子どもの話を要約して伝え返すことで、しっかりと聞いていることを示し、理解を深めます。 

解決策を押し付けず、一緒に考える姿勢を持つ

 子ども自身が解決策を見つけられるよう支援し、自己解決能力を育てます。 

家庭環境の整え方

リラックスできる空間を作る

家庭内に子どもがくつろげる場所を確保し、ストレス解消の場を提供します。 

家族で楽しむ時間を定期的に設ける 

家族との楽しい時間を通じて、子どもの心の安定を図ります。 

子どもの努力を認め、褒める機会を増やす

小さな成功や努力を積極的に認め、自己肯定感を高めます。

過度な期待や比較を避ける

子どもの個性を尊重し、他人との不必要な比較を避けることで、プレッシャーを軽減します。 

 専門家のサポートを受ける時期と方法

以下のような状況が続く場合は、専門家のサポートを検討しましょう:

ストレスのサインが2週間以上続く

 一時的なストレス反応を超えて、長期化する症状には注意が必要です。

日常生活に支障が出ている

 学校生活や家庭生活に大きな影響が出ている場合は、専門家の介入が必要かもしれません。

自分や他人を傷つけたいという思いがある

自傷行為や他害行為の思考は深刻なサインであり、即座に専門家のケアが必要です。

専門家のサポートを受ける方法:

学校のカウンセラーに相談する(配置されている場合)

 学校内で専門的なサポートを受けられる場合があります。 

地域の教育相談センターを利用する

 地域によっては、無料または低料金で専門家に相談できる施設があります。

小児科医や心療内科医に相談する

 医療機関では、身体面と心理面の両方からサポートを受けられます。

学校ストレスは多くの子どもたちが経験するものです。早めに気づいて対処することが大切です。一人で抱え込まず、周りの人に相談してください。

 学校と家庭の連携によるストレス対策

担任や学校のカウンセラーとの効果的な連絡方法

定期的な面談や連絡を心がける

学校と家庭で情報を共有し、子どもの状況を総合的に把握するために、定期的なコミュニケーションを取ります。 

子どもの様子を具体的に伝える 

家庭での子どもの様子や変化を、具体的なエピソードを交えて伝えることで、より正確な情報共有ができます。 

学校での対応策を一緒に考える 

子どものストレス軽減のために、学校でできるサポートについて協力して検討します。 

家庭での取り組みを共有する

 家庭で実践しているストレス対策や工夫を学校側と共有し、一貫したサポートを行います。 

学校環境の調整を依頼する際のポイント

子どもの状況を客観的に説明する 

感情的にならず、事実に基づいて子どもの状況を説明することで、適切な支援を受けやすくなります。 

具体的な支援や配慮を提案する

子どもにとって必要な支援や配慮を具体的に提案し、実現可能な対策を一緒に考えます。 

学校の方針や制約を理解し、柔軟な対応を心がける 

学校側の立場や制約を理解した上で、双方が納得できる解決策を模索します。

定期的にフォローアップを行う

対策の効果を確認し、必要に応じて修正を加えるため、定期的な見直しを行います。 

 長期的なストレス耐性を高める取り組み

自己肯定感を育む関わり方

子どもの長所や努力を具体的に褒める

子どもの良い点や頑張りを具体的に言語化して伝えることで、自己肯定感を高めます。

失敗を恐れず、チャレンジすることを応援する 

失敗を成長の機会と捉え、新しいことに挑戦する勇気を持つよう励まします。 

子どもの意見や感情を尊重する

子どもの考えや感情を否定せず、尊重することで、自己表現力と自信を育てます。 

無条件の愛情を示す

 成績や行動に関わらず、常に子どもを受け入れ、愛情を示すことで、安心感を与えます。 

ストレス対処スキルの教育

ストレスの正体を理解させる 

ストレスとは何か、どのように影響するのかを子どもに分かりやすく説明し、理解を深めます。 

ポジティブな考え方を身につけさせる

 物事を前向きに捉える思考法を教え、ストレス状況でも希望を持てるようサポートします。

問題解決スキルを教える

問題を分析し、解決策を考え、実行する能力を育成し、ストレス状況に対処する力を養います。 

子どもに合ったリラックス法を一緒に探す

呼吸法やヨガ、瞑想など、子どもに適したリラックス法を見つけ、実践を支援します。 

趣味や特技の発見と育成

様々な体験の機会を提供する

多様な活動を経験させることで、子どもの興味や才能を発見するきっかけを作ります。

子どもの興味を大切にし、支援する

 子どもが熱中できる活動を見つけたら、それを積極的に支援し、才能や興味を伸ばす機会を提供します。 

成功体験を積み重ねる場を作る

子どもが得意とする分野で小さな成功を重ねられるよう、適切な挑戦の機会を設けます。これにより自信とストレス耐性を高めます。

長期的な目標設定をサポートする

 子どもの興味や才能に基づいた長期的な目標を一緒に考え、その達成に向けて段階的に取り組むことをサポートします。

まとめ

学校ストレスへの総合的なアプローチ

学校ストレスは、子ども自身、家庭、学校が協力して取り組むことが大切です。ストレスの原因を理解し、早期に対処することで、子どもたちの心身の健康を守り、健やかな成長を支援できます。

子ども自身がストレス対処法を学び、実践することはもちろん、保護者や教育者も子どものサインに敏感になり、適切なサポートを提供することが重要です。また、学校と家庭が密接に連携し、子どもを取り巻く環境全体でストレス軽減に取り組むことが効果的です。

継続的なサポートの重要性

学校ストレスへの対応は一時的なものではなく、長期的な視点が必要です。子どもの成長に合わせて、適切なサポートを続けていくことが、ストレスに強い子どもを育てる鍵となります。

自己肯定感を高め、ストレス対処スキルを身につけ、興味や才能を伸ばす機会を提供することで、子どもたちは将来直面するであろう様々なストレス状況にも適切に対処できる力を養うことができます。

最後に、学校ストレスは多くの子どもたちが経験するものです。一人で抱え込まず、周りの人に相談し、必要に応じて専門家のサポートを受けることが大切です。子どもたちが笑顔で学校生活を送れるよう、家庭、学校、地域社会が一体となって支えていきましょう。

学校ストレスへの対応は、子どもの個性や状況に合わせて柔軟に行うことが重要です。一つの方法にこだわらず、様々なアプローチを試してみてください。また、子どもの変化に気づいたら、早めに対応することが大切です。子どもたちの健やかな成長のために、周囲の大人たちが協力し、温かく見守り、支援していくことが何より重要です。

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