子どもが不登校になることは、保護者の仕事にも影響を与えることがあります。
例えば、担任やスクールカウンセラーとの面談は平日の昼間に行うのが基本です。
子どもを一人にするわけにいかず、仕事を休んで一緒に自宅で過ごしたり、付き添い登校をすることもあるでしょう。
そのたびに、仕事を休んだり調整する必要があります。
近年は在宅勤務で仕事をする人も増えましたが、その場合でも仕事中に学校に行くことはできません。
どうしても予定を調整することになります。
その結果、保護者の働き方にも影響が出てくることがあります。
この記事を執筆する吉田は、20年以上にわたり不登校の子を持つ保護者とのカウンセリングをしてきました。
その経験を踏まえ、お子さんの不登校問題と保護者の仕事への影響、そして両立するために必要なことについて考えていきます。
不登校によって経済的負担が重くなる家庭は多い
当サイトでは、2023年の6月に不登校の子どもを持つ保護者へのアンケートを実施しました。その結果によると、およそ4割近い家庭が、お子さんが不登校になって「経済的負担が重くなった/とても重くなった」と回答しています。
くわしいアンケート結果はこちら
▶ 不登校の子どもを持つ保護者へのアンケートで分かる 経済的負担の実情
また、不登校新聞社が行った保護者へのアンケートでは、3割の家庭で「収入減」、4割の家庭で「支出増」という結果が出ています。
共働きだと不登校になりやすい?
不登校は、共働きの家庭に特有の問題とは言えませんが、親の不在時間が長くなることで子どもが孤独を感じやすくなる場合があります。
また、一緒に過ごす時間が少ないため、子どもの不調のサインに気づきにくくなります。
不登校になる前に、多くの子が登校を渋る時期があります。
この時に保護者が共働きの場合、朝の慌ただしい時間帯なので
「いいから行きなさい」
「今日だけは休んでいいから明日から行きなさいよ」
などと、雑に対応してしまうことがあります。
また、子ども側も保護者のスケジュールを理解した上で、朝の行動が決まっています。
お子さんに話を聞くと、
「親はガミガミ言うけれど7:30になれば家を出るから、その時間まで寝たフリしてれば勝ち」
などと、いう話も聞きます。
子どもが不登校になっても会社を辞める必要はない
突然の不登校に焦りを感じることは自然ですが、すぐに会社を辞める必要はありません。子どもが不登校になった原因をきちんと理解し、それに応じたサポートをすることが必要です。
経済的な負担が増える
退職することで収入は減るため、時間に余裕はできますが、経済的な負担は増えます。子どもが不登校になること自体で出費が増える上、仕事を辞めることで収入も減ってしまうのは痛いです。経済的負担については、当サイト独自のアンケート調査を行っております。関連記事からリアルな声を確認してください。
【関連記事】
▶ 不登校アンケート2023夏 保護者の経済的負担
子どもにプレッシャーを与えてしまう
「仕事を辞めて子どもと一緒にいることで、子どもが喜ぶに違いない」と考えがちです。
しかし、子どもにとってはプレッシャーになることも多いのです。
理由は「自分が不登校になったせいで親は仕事を辞めた」と責任を感じてしまうからです。
子ども自身も不登校になり将来の不安でいっぱいの中で、親にも迷惑をかけているという思いがさらに子ども自身を責めてしまいます。
「そんなこと思うくらいなら学校に行けばいいのに」と思うかもしれませんが、頭でいろいろ考えてしまって体が動かない状況になるのが不登校なのです。
むしろ、仕事をすぐに止めずに今まで通りの生活をして「別に親の生活は特に変わらないから気にするな。自分の体調を回復することに集中すればいい。
何か手伝えることがあったらいつでも言ってほしい」というスタンスが大事です。
ずっと一緒にいると息苦しい
それまで、子どもは学校に、親は仕事に行っていた時間を一緒に過ごすことになると、うっとうしくなってしまうことがあります。
「子どもと向き合う時間を作る」という考えは、とてもいいことですし必要です。
ずっと一緒になると息が詰まってしまいます。
まずは、仕事をしながら有休を上手に使ったり、早めに帰ることなどで少しずつ時間を作っていくことをおすすめします。
会社を辞める判断は一番最後
子どもが不登校になったからといって、すぐに会社を辞めることは考え直してみてください。
子どもは親が自分のために仕事を辞めたと感じることで、逆に責任を感じてしまう場合があるのです。
例えば、Cさんの子どもは、母が仕事を辞めたことで、自分が原因だと思い込み、精神的な負担を感じてしまいました。
もちろん、子どもの生命が一番大事です。
以下のような場合は、子どもの安全確保が最優先です。
仕事を休んででも、子どもの側を離れないようにしましょう。
- ひどいいじめの被害に逢い、一人で過ごすことを極度に怖がっている場合
- 自傷行為を繰り返していて誰かそばにいないと危険な場合
- 非行などに手を出していて、悪い交友関係にはまっている場合
原因探しよりも今後の見通しを重視する
仕事を辞めずに今まで通り過ごせばいいとお伝えしましたが、どうすればいいか困ってしまうでしょう。
これまで多くの保護者さんの相談に乗ってきた経験を踏まえて、対応のヒントを紹介します。
不登校の子を持つ家庭は、しっかりとした見通しを立てることが必要です。
この際、家計や将来の計画、子どもの心のケアなど、多方面からのアプローチが求められます。
自分の状況に近いモデルを探す
見通しを立てるために、具体的なモデルをイメージをすることが役立ちます。
その上で、モデルを自分に置き換えて「○○は良さそうだからうちもやってみよう」「××は無理だから、○○しよう」などと修正していくと良いでしょう。
リアルの生活の中でモデルを探す
大きい職場の場合、実はお子さんが現在不登校だったり、以前不登校だったというご家庭もいらっしゃいます。
普段は特にきっかけがないので職場でわざわざ言わないだけ「実はうちも…」というご家庭も多いものです。
自分の家庭の話じゃなくても、「実のきょうだいの子が不登校になっていて」とか「前の職場の同僚が」などという話も聞けることがあります。
あまり職場で言いたくないかもしれませんが、少し伝えておくのも大事です。
もし学校の面談や子どもの付き添いなどで仕事を休む場合は、自分から「実は最近子どもの調子が悪くて、学校を休みがちなんです」などと伝えた方が良いことが多いです。
「実は…」と他の人から声をかけてくれることもあります。
また、上司や同僚に伝えておくことで休暇などが取りやすくなることもあります。
オンライン上でモデルを探す
最近は、SNSで多くの人が発信しています。
例えば、X(旧Twitter)などでは、「#不登校 #不登校の親」といったハッシュタグをつけて情報発信をしている人が多くいます。
その人たちをフォローしておくことで、子どもが不登校になっている他のご家庭の様子を垣間見ることができます。
ただし、SNSは自由に発信できるため、グチを吐き出す目的で利用している方も多くいます。
その内容も有益なのですが、愚痴ばかりフォローしていると、ユアンが募ってしまうことがあります。
できるだけ、ポジティブなアカウントをフォローしましょう。
保護者がカウンセリングを受ける
不登校の場合、子どもがカウンセリングを受けさせることばかり考えがちです。
しかし、保護者がカウンセリングをする方が有益な場合が多くあります。
カウンセリングは、せいぜい週1回一時間ほどです。
週1時間、カウンセラーが子どもと話しただけで状況が改善するぐらいなら、親や担任の声掛けで良くなっているはずです。
でも、実際はそんなに簡単なことではありません。
子どもへのカウンセリングよりも、保護者と専門家の作戦会議をすることが大事と考えます。
子どもを見ず知らずのカウンセラーにつなげるよりも、カウンセラーと保護者がつながって作戦会議をするのが重要です。
身近な人が毎日の子どもへの働きかけを工夫する。1時間のカウンセリングよりはるかに効率的で効果的です。
平日昼間に相談できるならスクールカウンセリングか自治体の相談機関
学校のスクールカウンセリングや自治体の相談機関の場合は、平日の日中だけしか利用できません。
フルタイムで働いている社会人にとっては使いにくいものです。
私もスクールカウンセラーとして活動していしたので、スクールカウンセラーを否定するつもりはありません。
柔軟にシフトを組むことができたり、勤務の調整がしやすい場合はスクールカウンセリングがおススメです。
一方で、正直仕事を頻繁に休んでスクールカウンセラーに相談するのはおすすめしません。
お子さんのことに時間を使うのカウンセリング以外にもいろいろあります。
そのため、限りある有給休暇を慎重に使いましょう。
平日昼間の相談が難しければ民間カウンセリング
平日の昼間に休みがとりにくい場合は、民間のカウンセリングをおすすめします。有料ですのでお金がかかりますが、有給休暇を他に使うことができますし、オンラインカウンセリングの場合は、交通費もかからないため実はそれほど高コストではありません。また、卒業や転校をした場合でも同じカウンセラーに相談することができることも安心です。
職場の福利厚生でカウンセリングを利用する
大きな企業の場合は、健康管理室などにカウンセラーがいたり、EAP(従業員支援プログラム)の一環として、外部のカウンセリングを回数限定ですが無料で受けることができます。
中小企業の場合でも利用できる場合がありますので、探してみてください。
職場のカウンセリングの場合、子どもの不登校について相談しにくいかもしれません。
会社によっては相談を認めていない場合もあるでしょう。
その場合は、「今後の自分自身のキャリアについて」あるいは「ワークライフバランス」などで申込み、具体的な相談の中で子どもの不登校についても触れると良いでしょう。
また、企業内カウンセラーがいなかったり、EAPが利用できない場合でも、あきらめないでください。
例えば、ホテルに安く泊まれたり、飲食店の割引ができるなどの福利厚生サービスはありませんか?
そのようなサービスがあれば、カウンセリングも無料あるいは割引で利用することができる場合もあります。
退職する選択肢も想定しておく
子どもの不登校対応と仕事の両立が難しく、状況によっては「やっぱり仕事を辞める必要がある」という場合もあるでしょう。
「絶対に仕事を辞めるとつもりはない」
という方も、「もし退職するとしたら」と想定しておくことが大事です。
お子さんの不登校に対応する際に重要なことは「想定外」を作らないことです。
例えば、被災するつもりはなくても、災害に対して備えるように、
事故を起こすつもりはなくても、車を運転する時は保険に入りシートベルトをするように、
さまざまな想定をしておくことが大事です。
「備えあれば憂いなし」です。
その場合でも、退職届を出す前に、次のようなことを試みてみましょう。
どちらもすぐに結果が出るわけではないので、退職してから始めるとそれだけ時間がかかってしまいます。
転職エージェントへの登録
まずは、転職エージェントに登録しておくことをおすすめします。
現在の職場では、子育てとの両立が難しい場合でも、違う仕事であれば、仕事を続けられるかもしれません。
例えば、在宅で働ける仕事や、フレックスの仕事などを見つけることもできます。
通勤時間が変わるだけでもだいぶ違いますよね。
通勤に片道1時間以上かかっていた保護者様で、家の近くに転職をされた方がいます。
転職の時点から、エージェントに「(不登校など具体的なことは言わずに)子どもがまだ小さいので、子どもの都合で」
朝もゆっくり家を出られて、昼ごはんも家でお子さんと食べられるようになりました。
担任やスクールカウンセラーとの面談にも、転職前は仕事を半日休む必要がありました。
転職後は1時間の遅刻や早退だけで対応できるので、学校の連携もできるようになりました。
登校する際も朝学校まで送り届け、いざとなったら迎えに行けるのでスムーズに再登校につながりました。
登録するのは、大手のエージェントをおすすめします。
大手の方が、求人件数が多いので選択肢が広がります。
そして、エージェントの担当者もさまざまな人を担当しているため、事情を理解してもらいやすいです。
クラウドソーシングサービスの検討
クラウドソーシングサービスは、自宅での仕事を増やすための選択肢となります。もともと、Web関連の仕事じゃなくても、経理の手伝いなどの募集もあります。これまでの仕事の経験を活かすことができます。自分なら、どんな仕事ができそうか。そしてどのくらいのニーズがあるかなど、調べてみてはいかがでしょうか。
検討の末、会社を辞める場合
それぞれのご家庭の事情や仕事の内容、お子さんの状況などにより退職を判断する場合もあるでしょう。
その場合も、家にずっといるのではなくある程度仕事をしたり習い事をするなどしてアクティブに動いたほうが良いです。
親が外に出ずに、子どもに「あなたは外に出なさい」と言ったところで説得力がありません。
昼間に親が不在でも不登校の子どもが勉強する方法
お子さんが不登校状態の時、平日の昼間に子どもだけで留守番をさせることになります。
ゲームや動画ばかり見ているのでは困ってしまいます。
再登校するかどうかはさておき、勉強をすることはとても重要です。
日中の過ごし方は、こちらの記事でくわしく解説しています。
▶ 不登校の昼間の過ごし方はどうすればいい?スクールカウンセラーが解説
通信教育教材を使う
学校に通わなくても、家での学習を進める方法として、通信教育教材を利用することが挙げられます。
- 一般的な塾や家庭教師と比べて安い
- 塾と違い家から出る必要がなく、家庭教師と違い家に誰かを招き入れる必要もない
- (教材により)自宅学習の時間が学校の出席扱になることもある
- (教材により)アニメーションやゲームなどを取り入れ勉強に苦手意識を持つ子どもでもやりやすい
- (教材により)学年にこだわらず、勉強のわからなくなった部分から取り組める
- (教材により)オンラインで履歴が残るので、学習状況や勉強時間などを把握できる
注:(教材により)と書いてある項目は、できない教材もありますので、ご確認ください。全ての項目をクリアしているのは、すららです。
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▶ 不登校の子どもを持つ保護者におすすめ!家庭学習用オンライン教材
家庭教師をつける
家庭教師を利用することで、一対一での指導を受けることができます。時間が決めて誰かのサポートがあった方が勉強しやすいお子さんもいるでしょう。その場合は、オンラインの家庭教師がおすすめです。
▶ 不登校の子どもとオンライン家庭教師:教育支援の新たな選択
フリースクールに通う
フリースクールは、一般の学校のような厳格なカリキュラムがなく、子どものペースで学びを進めることができる場所です。たとえば、いじめや人間関係トラブルなどで学校に行きにくくなった場合など。お子さんに学校以外で同年代の人間関係を作りたい場合はフリースクールがおススメです。
現在は、オンラインのフリースクールもあるので、家から出られない状態だったり、自宅の近くにフリースクールがない場合にも心配いりません。
個別指導塾に通う
不登校でも、個別指導の塾に通うことで、学習のサポートを受けることができます。
小規模な授業環境の中で、焦りやプレッシャーを感じずに学ぶことができます。
まとめ
子どもが不登校になった時、ご両親が共働きやひとり親家庭で仕事をしていると、仕事と子どもへの対応の両立になやむでしょう。
「いっそのこと仕事を辞めて子どものために…」と思うかもしれません。
しかし、「子どものために…」と思うのであれば、なおさら仕事を辞めることは慎重になるべきです。
ただでさえ忙しい状況の中で大変でしょうが、まずは子どもや学校対応のために有給休暇を使ったり、保護者自身がカウンセリングをうけることで見通しを立ててみましょう。
そうすれば、すんなりと解決することもありますし、時間がかかる場合もあります。
その中で、お子さんや他の家族の意見なども聞きつつワークライフバランスを考えることが大事です。