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5月の連休明けから、子どもが学校に行きたがらない。どうすればいいかなぁ。

連休明けに不調になるお子さんの対応について、紹介します。

五月病とは、春から夏にかけて、新しい環境に適応しようとする際に生じる疲労感やストレスが原因で起こる心身の不調のことを指します。お子さんの場合は、4月に進学・進級などで新しい環境に入り、1か月が過ぎて、状況が変わってくる頃です。

実は、5月の連休明けは、夏休み明け、春休み明けに次いで、子どもの自殺者が多い時期でもあります。

大切な命を守るためにも、5月の連休明けの過ごし方について考えてみましょう。

この記事を書いた人

不登校なんでも相談室管理人の似顔絵

吉田 克彦(公認心理師・精神保健福祉士)

スクールカウンセリング歴25年超、小学校・中学校・高校(全日制・定時制・通信制)でのスクールカウンセラーとしての活動経験あり。東日本大震災の被災地心理支援、業界最大手の化学製品会社の常勤カウンセラーなどを経て、現在は合同会社ぜんと代表。
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5月病の背景:疲労やストレスがたまる時期

そもそもなぜ、1月でも2月でもなく、”5月”病なのでしょうか。それには理由があります。学習面・体力面・人間関係・スケジュールの4つの視点から見ることが大事です。

勉強に関して

4月の初めはガイダンス中心だったのが、授業が本格的に始まりました。その結果、「内容が難しい」「わからない」「つまらない」などと思う教科・科目が出始める時期です。勉強について行けなかったり、毎日の宿題を苦痛に感じる子も多くいます。

体力に関して

進学によって、いままでよりも早起きしなければならない人もいるでしょう。寝る時間が変わらない場合は、早起きする分、睡眠時間が減ります。
さらに部活や宿題などがあることで、それまでよりも寝る時間が遅くなることもあります。そうなれば、睡眠不足が続くことになります。

また、通学(登下校)でもかなりの体力を使いますし、中学や高校の1年生は仮入部(体験入部)を経て、4月後半から部活動が始まります。
特に運動系の部活動は土日祝日も練習試合などがあることが多く、土日にしっかり身体を休ませることが出来ず、疲れがどんどん蓄積していきます。

人間関係に関して

人間関係も最初はお互いに気を使っていたのが、気を使いすぎて疲れたり、お互いに遠慮が無くなってきて相手の嫌な面や苦手な人などがはっきりしてくる頃です。
無理に相手に合わせすぎて疲れてしまったり、相手の嫌な面が見えてしまうことで心を許せる友達がなかなかできなかったり、最初に仲良くなった友達が他の子と仲良くなって自分が置いてけぼりに感じてしまったり、いろいろな経験をすると思います。

これらのことから、対人関係に不安を抱いたり、仲良しだと思っていた友達を信じられなくなることで、学校に行くのが怖くなることがあります。

祝日がしばらくないため憂鬱になることも

みなさんも「6月ごろにもっと祝日があればいいのに」と思ったことありませんか?

例えば、春休み明けは、3週間過ぎるとゴールデンウィークが来ます。夏休み明けも9月・10月に祝日が複数あります。
一方で、ゴールデンウィークを過ぎると次の祝日は2か月以上先の海の日までありません。その事実が、気持ちを重たくさせます。休みの日に楽しむことを目標に生活している人にとっては、五月の連休明けからに絶望を感じることも多いようです。

5月病の実際

ここまで、5月の連休の時期が勉強面・体力面・人間関係面などで負担がたまってくる頃だとお伝えしました。それらの負担によって、あらわれる心身の不調を5月病といいます。5月病は、正式な病名ではありません。症状がひどい場合には、適応障害やうつ病と診断されることもあります。

ここからは、5月病についてくわしく解説します。

5月病になりやすい人

あくまでも大人の5月病の場合ですが、ストレス耐性が低い人、繊細な人、完璧主義の人が、5月病になりやすい傾向があるといわれています。
子どもの場合でも同様に、「ストレスに弱い」「何事もちゃんとやらないと気がすまない」「細かいことが気になってしまう」といった子どもが5月病になりやすい傾向があります。自分にも周囲にも完璧を求めるもののどうしても完璧にこなすのが難しいことはあります。特に4月から進級や進学をして新しいクラスメイト、担任、学校のルールなどさまざまなものが変わります。そこで、ちょっとしたすれ違いや些細な相手の表情や言葉などが気になってしまう。その結果、人間不信になったり、気にしすぎて疲れてしまうのです。

5月病はどんな症状なのか

五月病の症状としては、倦怠感、不安感、イライラ、食欲不振、睡眠障害などがよくあげられます。これらの症状が長期間続く場合は、うつ病や不眠症などの重い病気に発展することがあります。しかし、早期に発見し、早期の対策を講じることで、症状を軽減することができます。

5月病を予防するために

ここまで見てきた通り、新年度から1か月たち、勉強・体力・人間関係でさまざまな課題が見えてきて、疲れも出てくる頃です。また、ゴールデンウィークを過ぎると海の日まで祝日がないことも、気分を憂鬱にさせてしまいます。これらの背景を踏まえて、予防策を考えることをおすすめします。

あらかじめ5月の疲れを想定しておく

誰でも5月病になることはあります。「自分だけは大丈夫」「うちの子に限って、その心配はない」などと考えず、「5月ごろになると疲れが出てくるだろうな」ということを想定しておきましょう。

その上で、「疲れが出ないように4月はあまり張り切りすぎず、体力を温存しておこう」とか「人間関係とかで疲れそうだから、無理に人に合わせるのはやめて、ほどほどの距離感を保とう」などと心掛けることができればいいですね。もちろん、ついつい力が入ってしまって心掛け通りにはいかないかもしれませんが、それでも構いません。少しでも意識していれば、意識していない時よりはだいぶ違います。

適度な休息を

五月病を予防するためには、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動などが挙げられます。先ほど説明したように4月から睡眠時間が減っているかもしれません。睡眠時間を振り返り、もし睡眠不足気味であれば、就寝時間を早めることなども検討しましょう。連休中ならある程度の朝寝坊をしても多めに見てあげましょう。連休だからといって夜更かしをするようでは睡眠リズムがさらに崩れてしまいますので、連休中も就寝時間は変えないように心がけましょう。

次の楽しみを設定する

趣味や遊びなどはストレス解消につながり、5月病の予防や改善にも役立ちます。楽しいイベントはどうしても「ゴールデンウィークの次は夏休み」となりがちです。

マラソンランナーの君原健二さん(メキシコオリンピック銀メダリスト)は、42.195km先のゴールをだけを考えるのではなく、「次の電柱まで、次の電柱まで」と目の前の目標を設定することで走りぬくことができたそうです。
私たちも夏休みまで完走するためにも、身近な目標が必要です。些細な楽しみでいいので、「今週1週間頑張ったら○○をしよう」などと目標を立てるといいでしょう。

5月病になった場合の対応

実際に5月病のような症状が出た場合はどうすればよいか、これまでのカウンセリング経験を元に紹介します。

まずは休養を

〈5月病になりやすい人〉で紹介した通り、4月からの環境の変化に上手に適応できず疲れてしまった状態が5月病です。したがって、疲れをとるためにまずはしっかりと休養を取りましょう。

何かを考えるためにもしっかりと休まないと頭が充分に働かず、良くないことばかり考えてしまいます。ここで、休養を取らず無理やりに登校したり(登校させたり)すると、疲労やストレスがさらに蓄積されていき、よりつらい状況になっていきます。

メンタルヘルス不調について、「こころの風邪」といった表現をすることがあります。私は、5月病こそまさに「こころの風邪」だと考えます。誰でも、かかる可能性がありますし、無理をしてさらにこじらせてしまうと、回復まで時間がかかってしまいます。しっかり休みましょう。

もし、学校を休むことは難しい場合は、部活をしばらく休んで早く帰ってくる、通院などを理由に午前中遅刻していくなどで少しでも負荷を軽くすることを考えましょう。

なるべく生活リズムを崩さない

休養をさせるからといって、子どもが夜遅くまでゲームをするのを認めたり、昼夜逆転の生活にさせても休養にはなりません。
休養が必要ですが、「子どもの好き勝手にさせる」ということではありません。なるべく起床時間や就寝時間は変えないようにしましょう。

基本的には、部活など「負荷を減らす」ことが大事です。
新たなことを始める、あるいは夜更かしするといった、お子さんの身体に負担の大きいことをするのは避けましょう。

身体的な症状が出たら小児科へ

発熱や不眠、パニック症状、腹痛、頭痛、食欲不振などが生じることがあります。その場合は、かかりつけの小児科に受診をしましょう。児童精神科や心療内科などの受診をすべきか迷うかもしれません。その場合でも、普段からかかりつけの小児科をまずは受診し医師の話を聞きましょう。

また、カウンセリングで改善する場合も多くありますので、医療機関の受診をためらう場合や、本人が病院に行きたがらない場合は、保護者が相談機関でカウンセリングを受けるのも役立ちます。

スクールカウンセリングや自治体のカウンセリングの場合、申込から面接まで時間がかかることがほとんどです。なるべく早く対応したい場合や、土日や夜間しか相談できるタイミングがない場合は、民間カウンセリングルームをおすすめします。

勉強もバリバリやって、部活でも活躍して、人間関係も満喫できれば最高かもしれません。しかし、それらが難しい場合は、できることを確実にやっていきましょう。

また、休養に関しても完璧は目指さないでください。少しぐらいゲームを楽しんだり、お出かけをするのも構いません。「休んでいるんだから、遊んじゃダメ」では、息苦しくなってしまいますし、禁止されると余計に遊びたくなってしまいます。休み方も100点満点でなくていいのです。

保護者と子どものコミュニケーションについても、「何でも話せる」か「全く話さない」といった0か100かではなく、「話したいことは話すけれど、話さないこともある」ぐらいでちょうどいいです。「何でも話してもらいたいから」と根掘り葉掘り聞き出そうとしたり、逆に何も話しかけず「そっとしておくべき」と放置するような両極端の対応は避けましょう。

保護者と子どものコミュニケーションについては、別の記事でくわしく紹介しています。

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落ち着いて対処すれば、休んでも大丈夫

ここでは5月病の概要、予防法、改善法などについて紹介しました。
5月の連休明けは、4月に新年度が始まり、張り切っていたり期待していたものから現実の大変さに直面する時期でもあります。また、7月後半まで祝日がなく、気温や気圧の変化も激しい時期になります。

程度の違いはあっても、誰でも連休明けは憂鬱になります。年度初めのウキウキやワクワク感から、1か月がたちひどく落ち込んでいるかもしれません。1か月でそれだけ変化をしたということは、また1か月経てば大きく変化するかもしれません。

もし、学校をしばらく休むようになったとしても、部活やバイトなどを続けられない状態だとしても、長い人生の中の大事な経験の1つにすぎません。

5月病のような状況になった場合は、これを機会に完璧にこだわらずに力の抜き方を考えてみましょう。大丈夫です、必ずなんとかなります。
もし、お子さんの対応について1人で抱え込んでしまう場合は、専門家に相談して一緒に考えましょう。

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引用文献

18歳以下の日別自殺者数(平成27年版 自殺白書より)

投稿者プロフィール

吉田 克彦
吉田 克彦公認心理師・精神保健福祉士
不登校・引きこもりの家族相談を行って20年超。
スクールカウンセリングから、東日本大震災の被災地心理支援、企業内カウンセラーなどを経て、現在は合同会社ぜんと の代表。