お子さんが朝なかなか起きられない、学校に行くのが辛いと訴えることはありませんか?
それは単なる怠けや甘えではなく、「起立性調節障害(OD)」という症状かもしれません。
この障害は、自律神経の働きに問題が生じることで起こり、特に思春期の子どもに多く見られるものです。
起立性調節障害が原因で学校生活に支障をきたし、不登校になるケースも少なくありません。
本記事では、起立性調節障害の基本的な知識から、具体的な対応策までを詳しくご紹介します。
お子さんの不登校問題に悩む保護者の方に向けて、解決のヒントとなる情報をお届けします。
All aboutニュースで不登校と起立性調節障害についてコメントしました。
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一目でわかる起立性調節障害
この記事では、不登校との関連が深い起立性調節障害について紹介いたします。
まずは、起立性調節障害の特徴をまとめてみました。
症状は? | たちくらみ、失神、朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛など、昼夜逆転になることも |
人数は? | 中学生では、男子の6人に1人、女子は4人に1人、高校生では、男子の5人に1人、女子の3.6人に1人 |
原因は? | 自律神経の乱れ、水分不足、活動量の低下、心理的ストレスなど |
改善方法は? | 本人や家族や教師などの周囲の方々が症状について正しく理解し、環境調整をすること。そして、十分な運動や水分補給。カウンセリングによる心理的ストレスの軽減、など。整体も効果があると言われているが、実際にそれを証明するエビデンス(科学的根拠)はない。 |
起立性調節障害とは?
起立性調節障害は、たちくらみ、失神、朝起き不良(朝起きられない)、倦怠感、動悸、頭痛などの症状を伴う、自律神経機能不全の一つです。
小学校高学年から中学生で発症することがおおいです。
中学生では男子16.9%、女子25.6%、
高校生では男子21.7%、女子27.4%
が起立性調節障害というデータもあります(小児心身医学会 2015)。
つまり、中学生では男子の6人に1人、女子の4人に1人が起立性調節障害で生活に影響が出ていると考えられます。
起立性調節障害は、心理的ストレスによる影響を受けやすいといわれています。
慨日リズム(いわゆる体内時計)が数時間遅れ、午前中は頭痛やだるさが続き、夕方から夜にかけて元気になります。
毎日積み重なることで、どんどん就寝時間が遅くなっていくことがあります。
そのため、そのため朝起きることが出来ず不登校になることも多くあります。
不登校生徒の30~40%が起立性調節障害とも言われています。
起立性調節障害を改善する正しい方法
起立性調節障害の改善方法について、インターネット上などにはさまざまな情報が流れています。
しかしながら、エビデンス(科学的根拠)のない情報も多いため注意が必要です。
本記事では、起立性調節障害についてエビデンス(科学的根拠)のあるアプローチとして日本小児心身医学会が推奨している6つの方法を紹介します。
症状の理解(疾病教育)
中等症や重症の多くは倦怠感や立ちくらみなどの症状が強く、朝に起床困難があり遅刻や欠席をくり返します。
多くの保護者のお子さんの状況を見ると「怠けているだけ」と考えます。
あるいは、ゲームやスマホへの耽溺、夜更かし、学校嫌いなどが原因だと考えて、叱責したり朝に無理やり起こそうとして、親子関係が悪化することが少なくありません。
お子さん自身と保護者さんに対して、
「起立性調節障害は身体疾患である、『根性』や『気の持ちよう』だけでは治らない」
と理解を促すことが重要です。
非薬物療法(日常生活上の工夫)
日常生活の工夫も必要です。例えば、次のようなことが症状の軽減に役立ちます。
- 寝た状態や座った状態から立ち上がる時に、頭を下にしてゆっくり起き上がる。
- 水分不足による血流が悪化しないように、毎日1.5~2リットルの水分を摂取する。
- 筋力低下や自律神経機能の悪化で下半身への過剰な血液移動することにより脳血流低下が起きないよう。毎日30分は歩く習慣をつける。
- 睡眠不足によりさらに朝の目覚めが悪くならないように、眠くなくても就寝時間を一定にする。
学校との連携
登校に対するプレッシャーが心理的ストレスとなり症状を悪化させることがあります。
また、いじめや友人関係のトラブル、教師との関係などが心理的ストレスになっていることもあります。
学校と連携して現在の状況を理解して適切な対応を要請する。
いじめや人間関係トラブルについての改善を図ることも必要です。
薬物療法
末梢血管を収縮する働きのあるミドドリンという薬や漢方を使うことが多いようです。
しかし、基本的には薬物療法だけでなく非薬物療法や心理療法などが有効です。
環境調整
心理的ストレスを軽減させるための環境調整が求められます。
そのためには、家庭と学校の理解は欠かせません。
心理療法(カウンセリング)
ここまで見てきたように起立性調節障害の改善には、家族の協力や学校との連携、症状の理解や環境調整などが必要です。
そのため、家族療法や認知行動療法が有効です。
家族療法では、生活リズムに関する悪循環について本人だけでなく家族のかかわりも含めて見立てて具体的なアドバイスを行います。
また、家族や学校など関係者が連携する際に円滑に進むようにシステムへの介入も行います。
認知行動療法では、睡眠に関する心理教育や好ましい行動の強化、不合理な認知の修正などを行います。
より詳しい内容については、後半の「カウンセリングでは、どんなことをするか」で紹介します。
注意!整体やサプリメントの起立性調節障害への治療的効果はハッキリしていない
整骨・整体、サプリメントなどの代替治療により起立性調節障害が本質的に改善するという科学的根拠は現在のところハッキリしていません。むしろ、起立性調節障害の患者団体や学会から「いずれも起立性調節障害に対するエビデンスはないので、注意が必要である」と注意喚起がなされています。
起立性調節障害(OD)に対する整骨や整体などの代替療法の効果についての声明
起立性調節障害(OD)に対する各種サプリメントの効果について
「早く良くなりたい」「できるだけ病院にはいきたくない」などの理由から、藁にもすがる思いで、整体やサプリメントを利用されるご家族もいらっしゃいます。その結果、時間やお金など多くのコストをかけて改善が見られないこともあります。
また、整骨院・整体院にすすめられるままに回数券を買ったものの、本人(子ども)が通えず期限切れで使えなくなったという話も聞いたことがあります。
他の重篤な病気が隠れていないかの鑑別も必要です。早期改善を図るためにも、信頼できる医療機関や相談機関を受診しましょう。
カウンセリングでは、どんなことをするのか
心理カウンセリングではどのようなことを行うのでしょうか。
カウンセラーによってさまざまなやり方がありますが、スクールカウンセラーとして20年以上活動し、現在カウンセリングルームを運営している筆者が実践していて効果の高いアプローチを紹介いたします。
あまり効果の無いもの
まず、最初に私たちのカウンセリングルームに相談に来るご家族の中には、すでに何人かのカウンセラーに相談をしたがうまくいかず、私たちのところへ相談に来られる方も多くいらっしゃいます。
その方々の話を伺うと、以下のようなアプローチはうまくいかなかったという話が聞かれます。
- 具体的な方針などは示されず「じっくり待ちましょう」などと、現状維持が続いた。
- 親御さんの子どもの頃の問題を取り上げて、そればかり話していた。
- 箱庭を毎回作るだけで終わった。子どものプレイセラピーをずっと続けていた。
- タロットや風水に基づいて助言された。
また、先に書いたように整骨や整体、サプリメントなどは効果がはっきりしません。
日本小児心身医学会なども警鐘を鳴らしています。
根拠がなく治療効果がはっきりしないものにずっと頼るのは危険なのでやめましょう。
悪循環を断ち切る
ここまで見ていただいたように、本人の心理的ストレスが起立性調節障害の症状を悪化させます。
その結果、症状が悪化することによりさらに本人の心理的ストレスが増加し、症状が悪化しさらに心理的ストレスが増加…という悪循環に陥ることが多くあります。
ぜんとのカウンセリングでは、この悪循環を断ち切り、心理的ストレスを軽減することを目指します。
例えば、家族から「なまけているだけ」「根性が足りない」などと言われていたら、その家族とのやり取りがストレスになってしまいます。
本人が夜遅くまでゲームやスマホで楽しんでいたら、家族も黙ってみているだけとはいかないでしょう。
では、どのような接し方が良いのか、家族療法の視点からより良いコミュニケーションや家庭での過ごし方について、ご本人やご家庭の事情に合わせて具体的に考えていきます。
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心理的ストレスの軽減
心理的ストレスについて、例えば以下のような訴えが見られます。(日本小児心身医学会のガイドライン改訂第2版より、一部を抜粋)
- 小学校から中学校への環境の変化についていけなかった
- 苦手な学校行事がある
- 友人関係のトラブル
- 先生からの叱責
- 対人関係の不安
これらに関して、問題の解決方法や不安の軽減法を考えていきます。
私たちのカウンセリングは長年スクールカウンセラーとして勤務したり、小児科や精神科でのカウンセリング経験が豊富なカウンセラーが担当しております。
「様子を見ましょう」「見守りましょう」などという漠然とした内容ではなく、具体的で実行しやすい対策をご提案いたします。
さいごに
起立性調節障害は、薬物療法だけでは十分な効果が発揮できず、サプリメントや整体などの代替治療も改善の効果は見られません。
病院で診断を受けた上で、病院や相談機関のカウンセリングに通って心理的ストレスの改善を図りましょう。
病院や相談機関にかかることで、時間的にも経済的にもコストがかかります。
しかし、お子さんのより良い成長を目指して、積極的に対応をすることが大事です。
参考文献
小児心身医学会(1)起立性調節障害
日本小児心身医学会 2015 小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン改訂第2版
より詳しく知りたい方へのオススメ
OD(起立性調節障害)になった娘:こころの病 克服体験記|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp)
【朝起きられない病気】“起立性調節障害”とは 症状と治し方 – 記事 | NHKハートネット