「学校に行きたくない」
中学生のお子さんから、そう打ち明けられた時、親としてどうすれば良いか悩みますよね。この記事では、中学生が学校に行きたくないと感じる具体的な理由、親としてできるサポート、子どもが学校に戻れるようにするための具体的な解決策について、スクールカウンセラーとしての経験と専門家の知見を交えて解説します。
中学生が学校に行きたくないと感じる理由
中学生が学校に行きたくないと感じるのには、様々な理由が考えられます。
1. 友人関係の悩み
中学生になると、友人関係が複雑化し、人間関係のストレスが増える傾向にあります。
いじめ
文部科学省の調査によると、令和4年度における中学生の不登校の理由として、「いじめ」が11,413人と報告されています。いじめは、身体的な暴力だけでなく、陰口や仲間はずれなど、見えにくい形で子どもを傷つけることもあります。
友人とのトラブル
友人との些細なトラブルや、グループ内での自分の居場所を見つけられないことなども、学校に行きたくないと感じる原因となります。
2. 学業へのプレッシャー
中学生になると、定期テストや内申点など、成績に対するプレッシャーが大きくなります。
成績の悩み
文部科学省の調査によると、令和4年度における中学生の不登校の理由として、「学業不振」が10,122人と報告されています。勉強についていけない、成績が上がらないといった悩みは、自己肯定感を低下させ、学校への足取りを重くします。
進路への不安
高校受験を控えた中学生は、将来への不安や進路選択のプレッシャーを感じやすい時期です。例えば、進路選択のプレッシャーが強い中学生は、将来のキャリアや進学先について深く考えることが多く、これがストレスの原因となることがあります。
3. 思春期特有の心理的な変化と不安
思春期は、心と体が大きく変化する時期です。
自己肯定感の低下
自分の容姿や能力への自信を失いやすく、周囲との比較や劣等感に悩むことがあります。
孤独感や不安
将来への漠然とした不安や、自分自身への葛藤など、複雑な感情を抱えやすい時期でもあります。
親としてできること
1. 子どもの気持ちに寄り添う
まずは、子どもの気持ちを否定せずに受け止め、共感することが大切です。
「話してくれてありがとう」: 子どもが自分の気持ちを話してくれたことに感謝の気持ちを伝えましょう。
「あなたの気持ち、よくわかるよ」: 子どもの言葉に耳を傾け、共感の言葉を伝えましょう。
「無理に学校に行かなくてもいいよ」: 子どもの気持ちを尊重し、一時的に休むことを許容することも大切です。
具体的なコミュニケーションの取り方
親が子どもと話す際には、まずは『話してくれてありがとう』と感謝の気持ちを伝え、次に『あなたの気持ち、よくわかるよ』と共感の言葉を伝えることが重要です。例えば、以下のような会話の例を参考にしてみましょう。
2. 焦らず、じっくりと見守る
焦って解決策を押し付けたり、無理に学校に行かせようとしたりすることは逆効果になる可能性があります。
子どものペースに合わせて: 子どもが安心して話せるようになるまで、じっくりと待ちましょう。
安心できる環境を作る: 家でくつろげる時間や場所を用意し、子どもが安心して過ごせるように気を配りましょう。
具体的な環境作り
例えば、子どもがリラックスできる時間を作るために、以下のような環境を作ることができます。
3. 専門機関との連携
必要に応じて、学校やカウンセリングなどの専門機関に相談することも考えてみましょう。
学校との連携
担任の先生やスクールカウンセラーに相談し、学校での様子やサポートについて話し合いましょう。
カウンセリングの利用
専門家の力を借りて、子どもの心のケアを行うことも効果的です。
中学生が学校に戻れるようにするための解決策
1. 学校以外の学びの場を提供する
学校に通うことが難しい場合でも、学びを続ける方法はあります。
オンライン学習
自宅で自分のペースで学習を進められるため、学校への抵抗感を和らげることができます。文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」でも、ICTを活用した学習支援の重要性が指摘されています。
フリースクール
学校とは異なる環境で、様々な体験や学びの機会を得ることができます。文部科学省の調査によると、令和4年度にフリースクールに通った不登校児童生徒は30,461人で、その約4割が学校復帰を実現しています。
家庭教師
一対一で教えてもらえるため、個々の学習ニーズに合わせた指導を受けることができます。
2. リフレッシュや趣味の時間を作る
心の健康を取り戻すために、楽しい時間を作ることも大切です。
好きなことに没頭する時間
何かに集中する時間を作ることは大事です。それは、ゲームや動画でも構いません。
絵を描いたり、音楽を聴いたり、スポーツをしたりなど、子どもが楽しめる時間を作ることは、心の健康を回復するために重要です。
自然に触れる
公園を散歩したり、自然の中で過ごしたりすることで、気持ちがリフレッシュできます。
もし、ご家族が時間があるなら公園に散歩に行くこともいいですし、釣りやキャンプなどに行ってもいいですね。
道具などがなくても、レンタルを利用することもできます。
3. 段階的な学校復帰のプランを立てる
一気に学校に戻るのではなく、少しずつ慣れていく方法を考えましょう。
- 保健室登校から始める
- 好きな授業だけ参加する
- 午前中だけ登校する
- 徐々に時間を延ばしていく
このような段階を踏むことで、子どもの不安を和らげながら、学校生活に戻れる可能性が高まります。
まとめ|焦らず、子どものペースに合わせて
中学生が「学校に行きたくない」と感じる背景には、様々な理由があります。親として大切なのは、子どもの気持ちに寄り添い、焦らずに見守ることです。
そして、必要に応じて専門機関と連携し、子どもが安心して学校に戻れるよう、サポートしていきましょう。一人で抱え込まず、周りの力も借りながら、子どもと一緒に乗り越えていくことが大切です。
子どもの気持ちを理解し、適切なサポートを行うことで、必ず道は開けます。焦らず、子どものペースに合わせて、一緒に前に進んでいきましょう。
よくある質問(FAQ)
- Q子どもが学校に行きたくないと言い出したら、すぐに学校を休ませるべきですか?
- A
一概には言えません。まずは子どもの話をよく聞き、状況を理解することが大切です。
場合によっては、一時的に休むことも選択肢の一つですが、「学校に行きたくない=休む」というのは極端すぎます。大人の場合でも、「仕事に行きたくないな」「朝ご飯準備するの面倒くさいな」と思うことはあるでしょう。だからと言って、毎回仕事を休む、あるいは朝食の準備をせず寝ていることはしないはずです。「仕方ないけど、やるか!」と動く時と「今日は無理してはいけない」という時があるはずです。また、一回休むことで、次の日からやる気が出てくることもあるでしょう。「学校に行きたくない」というからすぐ休ませる、「学校に行きたくない」と言っても力づくで行かせるという判断の前に、会話をすることが大事です。
- Q不登校は長引くとダメでしょうか?
- A
不登校の期間の長さよりも、その間にどのように過ごすかが重要です。家でただ過ごすのではなく、学習を続けたり、趣味を見つけたり、少しずつ社会とつながる機会を持つことが大切です。焦らず、子どものペースに合わせて、前向きに過ごすことを心がけましょう。
不登校は「学校に行かない」というだけの話です。大事なことは学校に行っても行かなくても「何をするか」です。
- Q学校に行けていない間の学習の遅れが心配です。どうすればいいですか?
- A
- Q子どもが理由を話してくれません。どうすればいいですか?
- A
無理に聞き出そうとせず、子どもが話したくなるまで待つことが大切です。「話したくなったら聞くからね」と伝え、安心できる環境を作りましょう。もし、保護者の方がどう動いていいかわからない場合は、スクールカウンセラーなど専門家に相談することも効果的かもしれません。
- Q不登校を経験しても、将来に影響はありませんか?
- A
不登校経験が必ずしも将来にマイナスの影響を与えるわけではありません。むしろ、その経験を通じて自己理解を深めたり、新しい視点を得たりすることもあります。大切なのは、その時期をどう過ごすかです。学びを続け、自分と向き合う時間を大切にすることで、将来につながる成長の機会にもなり得ます。
不登校経験があっても大人になって大活躍している人も多くいます。
むしろ「学校に行くこと」を強制することで、「学校に行けない自分はダメな人間だ」と自己肯定感が下がってしまう方が、長期的にはマイナスとなります。