ここ数年、HSPやHSCという言葉を耳にする機会が増えてきました。
非常に敏感な人や子どものことを指します。
この記事では敏感さと不登校の関係について解説いたします。
なお、HSP・HSCという用語は病気などではありません。
あくまで、「繊細あるいは敏感すぎて困っている人(子ども)」という大雑把なまとめ方をしています。
HSC(非常に敏感な子)とは
HSC(Highly Sensitive Child:非常に敏感な子)の略称です。
これは、子供の感受性が非常に高いことを指し、子供が環境の変化や刺激に強く反応する特徴があります。
アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱された概念です。
HSP(Highly Sensitive person:非常に敏感な大人)は人口の約15~20%が該当すると言われています。
つまり、5~6人に1人はHSPやHSCと言われています。それだけ、当たり前で珍しくないことです。
HSP・HSCは病気や障害ではありません。
例えるならば「100人いるうちでかけっこをして上位15~20人の人を『足の速い人』とよぶことにする」と同じように、「100人いるうちで敏感さや繊細さにおいて上位15~20人に該当する人・子どもを『HSP・HSC』とよぶことにする」という意味です。
特別に何か大きな問題があるわけでもないですし、誰でも多かれ少なかれ似たような悩みはあるものです。
また、「自分はHSP・HSCなのか、違うのか」と考えるのもあまり意味がありません。
先ほどのかけっこの例でいえば、
「昨日は13番だったから足が速い人だったけれど、今日は21番だったから足が速い人ではない」
などと一喜一憂しても仕方がないでしょう。
「他の人に比べれば足の速い方だけれど、世の中にはもっと足が速い人がいる」というのと同じです。
「自分は敏感な方だけれど、世の中にはもっと敏感な人がいるかもしれない」ということです。
病気ではないということですが、やっぱり気になってしまいます。
「自分はHSP・HSCだから生きにくいんだ」と考えるよりも、
「人よりも敏感だから苦労する時もあるな。楽になるためにはどうすればいいかな」と考えるように意識するといいですね。
HSCとHSPの違いは、大人か子どもか
HSCは、Highly Sensitive Child(非常に敏感な子)、HSPは、Highly Sensitive Person(非常に敏感な人)の略称です。
つまり、HSCは子ども、HSPは大人に使います。
HSPもHSCも医学用語ではないため、「○○歳未満はHSC、○○歳以上はHSP」などの明確な定義はありません。
もともとは、「繊細な人」という意味で”HSP”という言葉が使われ、繊細な子どもについて”HSC”とよばれるようになりました。
HSCの特徴
HSCの特徴は、以下のようなものです:
高い感受性:HSCは、一般の子供よりも刺激に敏感であり、環境の変化によって強く影響を受けます。
深い思考:HSCは、物事を深く考え、繊細な感情を持っています。
強い共感性:HSCは、他人の感情や状況に敏感に共感し、感情的な反応を示すことがあります。
より具体的には、次のような特徴があります。
- 五感の感受性が鋭い
- 人の気持ちや場の雰囲気に敏感
- 騒音や光に敏感
- 疲れやすく、回復に時間がかかる
- 慎重で心配性
- 完璧主義
- 正義感が強い
- 想像力豊かな
- 独創的なアイデアを持っている
HSCと発達障害の違い
HSCと発達障害は、似たような特徴を持つことがありますが、異なる点もあります。
HSCは、発達障害のように脳機能に問題があるわけではなく、感受性が豊かで敏感という特性を持っています。
人間を機械に例えると、発達障害は情報処理の能力に偏りがあり得意な部分と不得意な部分のばらつきが出てしまう状態といえます。
一方で、HSCの場合はセンサーが過敏すぎて些細なことでアラームが鳴り続けるという状態といえます。
また、繰り返しになりますがHSCは「他の人より敏感だ」という意味なので、
発達障害を抱える方でHSCに該当する方ももちろんいます。
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不登校とHSCの関係
なぜ、敏感すぎる子どもが不登校になりやすいのでしょうか。
なぜHSCが不登校になりやすいのか
繰り返しますが、HSCは一般の子供よりも感受性が高く、環境の変化や刺激に敏感です。
そのため、学校生活や人間関係の中で起こるさまざまな刺激によって、大きなストレスを感じることがあります。
このストレスや疲労が不登校の原因となることがあります。
家で過ごす場合は、家族だけなのでお互いに相手の性格もわかっています。
「これはやらない方がいいな」「これをやると相手が怒るな」と予測がつくので、トラブルにならないように過ごすことができます。
学校の場合はクラスメイトだけでも30人以上いて担任をはじめとした教職員との関係もあります。
仲の良い人ばかりではありません。
なかには、嫌なことを言ってきたり、逆にこちらは悪気のない発言でも相手が傷ついたり文句を言ってくる場合もあります。
そのような生活の中で、相手の反応が気になりすぎたり、誰からも嫌われないようにと全員に気を使いすぎることで、学校にいることが疲れてしまいます。
その結果、学校に行くことがしんどくなってしまうのです。
HSCの子が学校生活にストレスを感じる理由
HSCのお子さんが学校生活にストレスを感じる理由は、以下のようなものがあります。実際によくあるエピソードを交えて紹介します。
集団の中でのプレッシャー
HSCのお子さんは、他の子と比較されたり、集団の中での競争に圧力を感じることがあります。
例えばテストの成績や通知表などを友達と見せ合って、自分より成績がいい子に嫉妬してしまったり、いい点数を取れない自分を恥ずかしく感じてしまいます。
他にも、廊下に張り出されている書初めや絵などが他の子よりも下手だと思い込んでしまって自信を無くしてしまうことがあります。
繊細な感情への刺激
HSCのお子さんは、周囲の感情や状況に敏感に反応し、その刺激によってストレスを感じることがあります。
他の人から見れば「考えすぎ」の内容でも、HSCのお子さんにとってはとても深刻な悩みになってしまうのです。
「慎重で心配性」そして「想像力が豊か」なことで、ネガティブに考えすぎて友達付き合いが難しくなってしまいます。
休み時間に友達と何で遊ぶかでもめたときに自分は鬼ごっこをやりたいと考えました。
けれど、他の子がドッチボールをやりたいとなり、多数決でドッチボールをやることに決まりました。
その時に「残念だけど、ドッチボールでもいいや」と気持ちを切り替えることができればいいですが、
「どうせ、自分の意見なんか誰も聞いてくれないんだ」と考えてしまうことがあります。
さらに、ドッチボールで自分が最初にボールを当てられたり「自分ばかり狙われている」と考えたり、
他の人ばかり狙われて自分にボールが来ないと「自分のことをみんな避けているんだ」などと悪い方に考えてしまい、
友達と遊ぶのが怖くなってしまいました。
環境の変化への適応困難
HSCのお子さんは、環境の変化に敏感であり、新しい環境への適応が難しい場合があります。
そのため、進級進学クラス替えなどによって人間関係が大きく変わってしまう時には注意が必要です。
担任の先生が優しい先生から、怖そうな先生に変わって、怒られないかとドキドキすることがあります。
また、前のクラスで仲の良かった友達のうち、他の友達同士は同じクラスなのに、自分だけが1人別のクラスになったことでさみしく感じてしまうことがあります。
その結果、学校が楽しくなくなってしまったり、学校に行くことが怖くなって休みがちになってしまうことがあります。
HSCは怠けではない
HSCの子供が不登校になる理由は、しばしば誤解されることがあります。
HSCは、単に学校嫌いや怠け者ではなく、繊細な性格や感受性が原因で不登校になることがあります。
この誤解を解き、HSCを適切にサポートすることが重要です。
HSCに関する相談については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ HSCのお子さんの相談ならお任せください!専門家が教えるHSCの理解と対応
HSCの子どもの育て方のポイント
HSCの子どもを育てる上でのポイントをご紹介します。
以下のことに注意しながら、HSCの子供をサポートしていきましょう。
保護者自身が子どもの敏感さを理解する
私は、いわゆるHSP・HSCのお子さんやご家族のカウンセリングを数多くしてきました。
その中には、保護者さん特に母親が現在もHSPだったり、子どもの頃HSCだったという家族が多くいます。
保護者さんがHSPの場合、保護者さんの「完璧主義」や「慎重で心配症」の部分が、お子さんに大きく影響していることがあります。
自分や家族が「敏感すぎるのだ」と分かることで冷静になれる時もあります。
HSP・HSC関連ビジネスにご注意ください
保護者が子どもの敏感さを理解するために、いろいろ調べることは大事です。
しかし、HSPカウンセラーなどと名乗って本を出版したり、相談に応じている詐欺師まがいの人もいます。
それらに相談しても不安だけをあおられて、どんどん高額のサービスを売りつけられることも多いので気をつけましょう。
HSP・HSCは病気ではありません!
病院で診断はできませんし、脳波でわかるものでもありません。充分に気を付けてください。
子どもの独特の受け止め方を否定しない
HSCのお子さんはは、繊細な感受性を持っています。お子さんがネガティブな発言をするとつい
「そんなことないよ。もっと前向きに考えなさい」
などと声をかけたくなります。
しかし、お子さんの受け止め方を否定してしまうと、
「やっぱり自分はダメなんだ」
と自信を無くしてしまい、さらにネガティブに考えてしまいます。
お子さんが感じることや表現する感情を否定せず、まずはいったん受け入れることが重要です。
お子さんの感じ方を尊重し、サポートすることで、お子さんの自己肯定感や心の安定を促しましょう。
ポジティブな環境調整やフィードバックを大切にする
先ほど、「前向きに考えなさい」と伝えることでお子さんを否定してしまうことがあるとお伝えしました。
しかし、お子さんの状況をポジティブに受け止めることは大事です。
お子さんにポジティブな考えをするように強制するのではなく、ネガティブな考えをしてしまう今のお子さんを肯定してあげるのです。
HSCのお子さんは、ポジティブな環境によって安定感を得ることができます。
家庭や学校の環境を調整し、子供が自信を持って取り組めるようなサポートをしましょう。
また、子供の努力や成果に対して、具体的でポジティブなフィードバックを行うことも重要です。
味方であることを伝え、無理をしていないか見守る
HSCのお子さんは、自分自身への過度のプレッシャーや無理をする傾向があります。
保護者は、子供に対して「味方である」というメッセージを伝え、無理をしていないか見守ることが必要です。
子供が自分自身を大切にし、無理な負荷をかけずに自己成長できるようにサポートしましょう。
親子のコミュニケーションについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 親子の会話がなくて子どもの気持ちがわからない|解決のコツを家族専門のカウンセラーが徹底解説
HSCの子が不登校になった時、親ができる対応
HSCが原因で不登校になった場合、保護者は以下のような対応をすることが重要です。
無理に登校させない
HSCのお子さんにとって、無理に登校させることはストレスを増やす原因となります。
保護者は、ついつい学校に行かせることばかり考えてしまうでしょうが、お子さんのペースや感受性に配慮し、無理に登校させることは避けましょう。
だからといって、家で遊ばせるだけでは行けません。お子さんが安心して学べる場所や教材を提供するなどのサポートを行いましょう。
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保護者自身が不安やストレスを募らせない
HSCのお子さんが不登校になると、保護者さん自身も不安やストレスを感じることがあります。
特に保護者さんにもHSPの傾向がある場合は、将来を悲観しすぎてしまったり、子どもが学校に行かないことをひどく気にしてしまうことがあります。
それらは、保護者さんのストレスをさらに強めてしまうだけでなく、お子さんにも悪影響を与えてしまいます。
不安やストレスが出ないようにコントロールするのは難しいです。
コントロールするというよりも溜まった不安やストレスを解消する方法を考えましょう。
例えば、何かストレス解消できる楽しみを見つけたり、意図的に子どもと離れる時間を作ることも有効です。
また、誰かに話を聞いてもらうことも役立つでしょう。
ただ、「ちょっと愚痴りたいだけ」で家族などにはなしても余計なアドバイスなどで余計にストレスが溜まってしまうことがありますので、話す相手は選びましょう。
カウンセラーであれば、秘密も守りますしより良いアドバイスも得られますよ。
学校と相談して環境を整える
HSCのお子さんが学校生活でストレスを感じる場合、保護者さんは学校とのコミュニケーションを大切にしましょう。
学校と相談して、お子さんが安心して学べる環境を整えることが重要です。
担任と直接話しにくい場合は、管理職やスクールカウンセラーと話すことも役立ちます。
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▶【不登校の相談先①】スクールカウンセリング
HSCの子供が不登校を乗り越える3つの柱
HSCの子供が不登校を乗り越えるためには、自己肯定感・比較しない・生活習慣の安定が大事です。
自己肯定感を育てる
HSCの子供は、自己肯定感を高めることが重要です。
保護者は、子供の取り組みや努力を認め、具体的なフィードバックを行うことで、自己肯定感を育てましょう。
また、子供の興味や得意な分野に関心を持ち、積極的にサポートすることも大切です。
くわしくはこちらの記事をご覧ください
▶ 子どもの自己肯定感を高めるための親のアプローチ
周りの子供と比較しない
HSCの子供は、周りの子供と比較されることで自己評価が低下することがあります。
保護者は、子供を他の子供と比較せず、個々の成長や進歩を重視することが大切です。
子供自身のペースを尊重し、自分自身と向き合うことを促しましょう。
健康的な生活習慣を整える
HSCの子供が不登校を乗り越えるためには、健康的な生活習慣を整えることも重要です。
十分な睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動など、身体的な健康を保つことが大切です。
保護者は、子供の生活習慣をサポートし、健康な体と心を促進しましょう。
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まとめ
HSCと不登校の関係や、HSCの子供を育てる上でのポイント、不登校に対する保護者の対応、そしてHSCの子供が不登校を乗り越えるためのサポートについて、ご紹介しました。
HSC/HSPは高い感受性・深い思考・強い共感性が特徴的です。
そのため、他の人は気にしないことでも気になったり(高い感受性)、いろいろ考えすぎたり(深い思考)、相手の辛さに共感しすぎてしまう(強い共感性)。
そのため、学校での集団活動に疲れてしまい、学校に行けなくなってしまうのです。
子どもがHSC/HSPの場合に、
保護者が「そんなこと気にするな」「考えすぎ」「人のことは放っとけ」などといってしまうと、
子どもは否定されたと思ってしまい、(高い感受性と深く考えすぎて)相談ができなくなってしまいます。
子どもの気持ちを否定せずに耳を傾けてあげましょう。
もちろん、保護者の方もHSPの場合もあります。
そうすると、話を聞いているだけで子どもに強く共感しすぎて保護者の方がつらくなってしまいます。
保護者の方のメンタルヘルスを維持するためにも、スクールカウンセラーなど専門家への相談をすることをおすすめいたします。
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