<最終更新日 1週間 執筆者 吉田克彦(公認心理師)

子どもが突然「学校に行きたくない」と言い出すと、親としては大変心配です。特に理由がわからないと、どう対応すれば良いのか悩んでしまいますね。本記事では、学校に行きたくない理由が自分でもわからない子どもに対して、親がどのように対応すれば良いのかを解説します。

学校に行きたくない理由がわからない子どもの心理とは?

子どもが感じているストレスや不安の正体

子どもが学校に行きたくない理由が自分でもわからない場合、背後にはさまざまな心理的ストレスや不安が隠れていることが多いです。たとえば、友達関係がうまくいかないことや、学業のプレッシャー、いじめの可能性などが原因となることがありますが、子ども自身がそのストレスをうまく言葉にできないことがあります。

ポイント

子どもは年齢に関わらず、自分の感情を言葉で表現することが難しい場合があります。ストレスや不安が重なると、理由がよくわからないまま「行きたくない」という感情に至ることがあります。親としては、無理に理由を引き出そうとせず、じっくり子どもの話を聞くことが重要です。

    学校への抵抗感を抱く原因の見えない部分

    子どもが理由をうまく説明できないことがありますが、これは自分の気持ちを整理できていないためです。家庭や友人関係、学業への不安、または身体的な不調などが複雑に絡み合い、「なんとなく学校に行きたくない」という感情が生まれます。

    理由がわからないとき、親ができること

    子どもの気持ちに共感し、焦らず接する

    理由がはっきりしない場合、親としては「どうして?」と問い詰めたくなりますが、ここでは共感的に接することが大切です。子どもにとって、親が理解しようとしていると感じるだけで安心感が生まれます。「話してくれてありがとう」「どんな気持ちか話してみてね」と、優しく声をかけましょう。

    中学生の息子への声掛け

    Aさん(38歳)の中学2年生の息子は、ある日突然「学校に行きたくない」と言い出しました。

    Aさんは焦らず、「そうか、学校に行きたくないんだね。どんな気持ちなのか、話せる範囲で教えてくれる?」と声をかけました。息子は最初は黙っていましたが、数日後に「クラスメイトとの関係がうまくいっていない」と打ち明けました。

    学校や専門家との連携によるサポートの方法

    子どもが「行きたくない」と言った場合、親だけで解決するのは難しいこともあります。このようなときは、学校の先生やスクールカウンセラーに早めに相談することが効果的です。学校の先生からは、クラス内の様子や友人関係についての情報を得ることができます。また、スクールカウンセラーとの対話で、子ども自身が気持ちを整理できることもあります。

    ポイント

    学校や専門家と連携することで、家庭では見えない問題が明らかになることがあります。早期に適切な対応ができるようにしましょう。不登校の状態が長引くことを防ぐためにも、専門家との連携は重要です。

    カウンセリングやメンタルケアの重要性

    理由がわからない場合でも、カウンセリングは非常に有効です。プロのカウンセラーとの対話を通じて、子どもが自分の気持ちを整理する助けとなります。無理に親が解決しようとせず、外部のサポートを利用するのも一つの方法です。

    注意: カウンセリングの効果には個人差があり、即効性を期待するのではなく、長期的な視点で子どものサポートを考えることが大切です。

    具体的な対策とサポート方法

    柔軟な対応と段階的な学校復帰

    子どもが「行きたくない」と言った場合、無理に行かせることは逆効果になることがあります。しかし、長期的な不登校を避けるためにも、柔軟な対応と段階的な学校復帰を目指すことが重要です。

    • まずは子どもの気持ちに寄り添い、一時的な休養を認める
    • 家庭で安心して過ごせる環境を整える
    • スクールカウンセラーや担任教師と連携し、段階的な登校計画を立てる
    • 保健室登校や別室登校など、子どものペースに合わせた復帰方法を検討する
    ポイント

    子どものペースを尊重しつつ、学校とのつながりを完全に切らないようにすることが、スムーズな復帰につながります。

    学校以外での学びの場を検討する

    学校に通うことが一時的に難しい場合、オンライン学習や家庭教師などを利用して学び続けることも選択肢の一つです。ただし、これらはあくまで学校復帰を目指す過程での一時的な措置として考えることが大切です。学校復帰を目標としつつも、子どもの状況に合わせて柔軟に対応しましょう。

    まとめ:子どもが自分の気持ちに気づくためのサポート

    子どもが「理由がわからないけど学校に行きたくない」と感じたとき、親として焦らず、共感的な態度で接することが最も大切です。学校や専門家との早期連携、柔軟な学びの環境の検討などをしながら、子どもが自分の気持ちをゆっくりと整理できる時間を与えることで、再び前向きに学校生活を送れるように支援しましょう。

    不登校は、文部科学省の統計によると、2023年度の小中学校で約29万人の児童生徒が経験しています。決して珍しい問題ではありません。適切なサポートと理解があれば、多くの子どもたちが学校生活に戻ることができています。

    親としての愛情、そして周囲の理解と専門家のサポートがあれば、子どもが再び学校で笑顔を見せる日が必ず来ます。子どもの未来を信じ、一緒に歩んでいきましょう。

    <参考資料>

    文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」