再登校(学校復帰)だけがゴールではない
不登校克服のゴールは、「再登校・学校復帰」だけではありません。
本当のゴールは「子供が将来自立した生活を送ること」です。
むしろ学校に行くかどうかは小さな問題かもしれません。
あなたが、もし「再登校・学校復帰」だけにこだわるなら、他のサイトを探してください。
この記事でお伝えしたいこと
「学校に行くか・行かないか」ではなく「将来の子どもの自立した生活」を考えると、ご家庭によって「自立」のイメージが異なります。
「今何ができているのか」「今後何ができるようになればいいのか」など、お子さんに応じた計画が必要になります。
不登校になった経緯が違うから
文部科学省のデータでは、不登校状態になった理由は以下の通りです。

理由がない不登校も多い
実は「明確な理由がない不登校」がかなり多いのです。
上記の文部科学省の調査では不登校状態になった理由の49.7%が「不安・無気力」でした。
不安とは、「日常生活の中で,漠然とした曖昧な脅威を察知したときに,だれもが経験する心的反応」を指します。
具体的な脅威があれば、それは不安ではありません。
同調査でも、学校・家庭・生活リズムの項目があります。
つまり、学校や家庭で具体的な懸念があれば、そちらで答えたはずです。
つまり、ここでの「不安・無気力」は、「学校・家庭・生活で何が恐怖かわからない状態」なのです。
ここで、不登校の理由探しばかりに意識すると、子どもや学校との関係が悪化するなど、不必要な問題を作り出してしまうことがあります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
▶ 【不登校の理由がわからない】原因は漠然とした不安や生活リズムの乱れ?文部科学省の調査からわかったこと
▶ 不登校の「原因がわからない」ことも多い!その理由と対応策を徹底解説
身体症状がある不登校
メンタルヘルス不調によって身体症状が出ることもあれば、身体症状があったことがきっかけでメンタルヘルス不調になることもあります。
個人によってきっかけも症状もさまざまなので「不登校だから」という大きなまとまりで考えることはできません。
身体症状と不登校の関係についての記事一覧
▶ 朝起きることができない:起立性調節障害
▶ おなかがゆるくてトイレが近い:過敏性腸症候群
▶ 不安でドキドキしてしまう:不安障害
▶ パニック障害:症状・原因・対策を解説
▶ 場面緘黙:家では話せるけれど学校では話せない/原因と対応を解説
人間関係で悩んでいる不登校
家族関係に悩んでいる
先ほどのグラフに書いてある通り、不登校状態になった理由の中で「家庭に係る状況」は12.3%を占めます。
およそ8人に1人が家庭の問題で不登校になっています。
その中には、最近話題になっているヤングケアラーの問題なども含まれます。
家族とのコミュニケーションがうまく取れず不登校につながってしまう場合もあります。
友人関係に悩んでいる
大人になって職場の全員と仲良くできている人はどのくらいいるでしょうか?
また、ご自身がお子さんだった時にクラスの中で苦手だった人や嫌いだった人はいたでしょう。
学校は30~40人のクラスに分けられ、基本的には「みんな仲良く同じことをする」ことを求められます。
そのため、相性の悪いクラスメイトができたり、仲の良かった友達といざこざが起きてしまうことは仕方のないことです。
場合によっては、いじめのターゲットにされたり、仲間外れになったり、孤立することもあるかもしれません。それらが原因で学校に行けなくなることもあります。
教員との関係に悩んでいる
そのように考えれば、先生とうまくいかないことがあるのも自然です。
場合によっては犯罪者のような先生もいるでしょう(実際に毎年、教員の不祥事に関するニュースを目にします)。
うまくいかない時に、どのように対応すれば良いか。以下の記事で解説しています。
▶ 担任との関係が悪く不登校になった場合の適切な対応は?
本人の特性の違い
特性とは、「その人が持っている性質や能力、特徴」のことです。
得意な面や苦手な面は人それぞれ異なります。
その中で、苦手な部分が学校生活に影響を与えてしまうことがあります。
【詳細記事】
▶ おちつきがない・集中できない・忘れ物をする:ADHD(注意欠陥多動症)
▶ 聞く、話す、読む、書く、計算、推論のいずれかが著しく困難:LD Learning Disability(学習障害)
▶【不登校と発達障害】ASDについて特徴や改善法などを徹底解説
▶ HSC/HSP「繊細過ぎて不登校になってしまった」その理由と対処法
不登校の回復を3段階に分けて考える
不登校に関する分類はさまざまあります。
例えば、「混乱期」「安定期」「転換期」「回復期」の4段階に分けたり、「前触れ」「停滞期」「相談期」「意欲期」「再登校期」の5段階に分けるなど、いろいろな仮説があります。
しかしながら、不登校になった経緯もお子さんの事情もご家族の状況も、さまざまであり、そんなに細かく分けることができません。
そして、多様な学び方がある現在では「再登校」だけがゴールではありません。したがって、再登校を最終地点とした段階設定は適切ではありません。
私は25年以上、不登校に悩むお子さんやご家族の相談に応じてきました。そこで、さまざまな事情やさまざまなゴールを見てきました。
それらの経験をもとに、ほとんどの不登校事例に共通する3段階を紹介します。

3つの時期がどれだけ続くか、あるいはこの3段階に当てはまらない場合もあるなど、お子さんの状況やご家族の事情などによっても変わってきます。あくまで、一つの参考情報としてご覧ください。
休息期(混乱・消耗の時期)
不登校になった直後の時期です。心身ともに疲弊しきっている状態で、子ども自身も自己嫌悪になったり、学校に行かないことでのさまざまな不安を抱えています。
また、ご家族もお子さんが不登校になったことで、どう対応すればよいのか混乱する時期でもあるでしょう。
子ども自身の消耗
家族はもちろん、本人も混乱している時期です。
「もう学校に行かない!」と本人が宣言することも多いです。その場合、本人は覚悟を決めているので混乱していないように見えることがあります。
しかし、「学校に行く・行かない」について迷いがないだけで、将来に対する不安や周囲の目などが気になり、大なり小なり消耗します。
表面的には、以下のような様子が見られることがあります。
- 一日中寝ている、起きてこない
- 部屋から出てこない
- イライラしている、些細なことで怒る
- 泣いたり、落ち込んだりする
- 体の不調(頭痛、腹痛など)を訴える
→ 毎朝の「学校に行く」「やっぱり行かない」の悩みを乗り越えるための3つのヒント
家族の混乱

子どもの不登校を経験した保護者113人を対象にアンケートを実施しました。
その結果、85.8%の人が、子どもが不登校になって保護者自身の精神的負担が重くなったと回答しています。
→ 不登校の子を持つ保護者は「つらい」 独自アンケートから見えてきた保護者の精神的な負担の重さ
子どもの不登校によって家族に混乱が広がります。家族それぞれが子どもが学校に行かない状況を受け入れられるまでに時間がかかります。
また、子どもへの接し方について両親間や親と祖父母の間で意見が対立することがあります。学校を休むお子さんのために仕事を休まなければならなかったり、学校への連絡をするといったことが、ご家族にとって新たな問題となっていきます。
【関連記事】
▶ 子どもが不登校になって仕事を続けられるか?
▶ 【不登校】気が重い欠席の電話連絡、上手な伝え方と回避方法を解説
休息期の対応:安心・安全を最優先に
休息期に重要なことは、子どもの安心・安全を最優先にすることです。
「早く学校に戻さなければ」と焦って無理に登校させようとしたり、「なぜ行けないの」と原因を問い詰めたりすることは、子どもをさらに追い詰めてしまいます。
まずは「休んでいいんだよ」と伝え、心と体を休ませることが大切です。生活リズムや勉強のことは、この時期は後回しにしましょう。
また、保護者様もお子さんも「一人で考えこまないこと」「一人で突っ走らないこと」が重要です。家族や学校を始めとした周囲の理解や協力を得ることは、その後の対応にとても良い影響があります。
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▶ 親子の会話がなくて子どもの気持ちがわからない
安定期(エネルギーを蓄える時期)
休息期を経て、心身の疲労が回復し、少しずつ落ち着きを取り戻す時期です。
家の中では比較的元気に過ごせるようになりますが、学校に行くエネルギーはまだ十分ではありません。部屋で過ごす時間が増えたり、ゲームや動画に没頭することが多くなります。
一方で、家庭内暴力や自傷行為などの問題行動が表面化する時期でもあります。この時期の対応方法によって、本人にとって新たにどのような環境が必要なのかがわかってきます。
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安定期の対応:些細な変化を観察し、焦らず見守る
子どもが部屋で過ごす時間が増えていくと、何も動きのない毎日が続くように感じるかもしれません。
しかし、実は毎日微妙に変化しています。例えば一週間を注意深く観察すると、落ち着いている日や荒れている日などが少しずつ見えてきます。1か月も経てばかなりの変化に気づくはずです。
それらの変化を知ることは、新たな提案をする際にタイミングや伝え方を判断する上で非常に役立ちます。
この時期に「そろそろ学校に行ったら?」と急かしたり、勉強や将来の話を持ち出すことは逆効果です。
家の中で元気に見えることと、学校に行けることは別の問題です。
好きなことをする時間を認め、あいさつなどの最低限のコミュニケーションを維持しながら、焦らず見守りましょう。子どもの反応がない場合でも、しつこくない程度にあいさつを続けることは大事です。
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回復期(活動を広げる時期)
エネルギーが十分に蓄えられ、子どもが自分から外の世界に向かって動き出す時期です。
再登校を開始する、ホームスクーリングを充実させる、別の学校へ転校するなど、新たな環境に合うように子ども自身そして家族が変化していきます。就労(就職・アルバイトなど)や進学というかたちで新たな環境へ飛び込むこともあります。
表面的には、以下のような様子が見られることがあります。
- 「〇〇してみたい」と自分から言い出す
- 外出する機会が増える
- 友達と連絡を取る、会いたいと言う
- 将来のことを考え始める
- 学校や進路の話題を避けなくなる
回復期の対応:うまくいっても、うまくいかなくてもよい状況設定を
この時期に重要なことは、失敗した場合のフォローです。
うまくいく場合はあまり考えなくても、何とかなります。一方で失敗した場合に、立ち直れないくらいダメージが大きいと、次の挑戦ができなくなってしまいます。
調子が上向いてくると、どうしても期待が大きくなります。そして「うまくいくに決まっている」と考えがちです。もちろん自信を持つことは大事ですが、重要なことは「うまくいかなくても何とかなる」と考えることです。
「行くと言ったのに行けなかった」という経験は、本人が一番つらく感じています。責めずに、「また次があるよ」「無理しなくていいよ」と声をかけてあげてください。
子どもの「やりたい」を尊重しながら、小さな一歩を応援し、後戻りしても責めない姿勢が大切です。
休息期・安定期は焦らず、回復期は慎重に
ここまで、不登校の初期から回復までを、休息期・安定期・回復期の3つに分けてご説明しました。
もちろんもっと細かく分類することはできますし、休息期と安定期が重複している部分などもあります。
厳密に線引きをすることは重要ではありません。
あくまで不登校理解の一つの参考としてご理解ください。
大切なのは、休息期・安定期では焦らず子どものペースを尊重すること。
そして回復期では、うまくいかなくても大丈夫な状況を整えることです。
個別のロードマップを作り、修正する
不登校の多様性を紹介した上で、対応について基本的な考え方を紹介しました。
「不登校克服のロードマップ」と書きましたが、子どもの人生そのものをドライブに例えて考えてみましょう。
不登校は予想していたルートを一旦それてしまった状況だと言えます。
高速道路で降りる必要のないインターチェンジで降りてしまったような状況です。
その時に重要なことは、元の高速道路に戻ることばかりにこだわらないことです。
無理にこだわることで余計に迷ったり同じところをグルグル回り続けることになります。
また、「お前が落ち着きのないから悪い」「ちゃんと教えてくれないのが悪い」などと、「なぜ間違ってしまったのか」という原因ばかり考えても仕方ありません。
ドライバー(子ども)とナビゲーター(家族)もお互いにイライラして雰囲気が悪くなるでしょう。
「予想外だけれど、せっかくだからこの辺りでおいしいランチ食べようか」とか「慌てて戻らなくても、○○に間に合えばいいや」などと柔軟な修正が出来ると、より良い旅になるでしょう。
不登校の場合に当てはめれば、「予想外だけれど、せっかくだからお家での時間を楽しもうか」とか、「慌てなくても、成人した時に自立してくれればいいや」などと考えることで、より良い人生と家族関係になるでしょう。子どもの教育を受ける権利を保障することも重要です。
自分たちだけで適切なルートがわからない場合は、ぜひサイトを利用して下さい。
お子さんはもちろん、ご家族の人生が少しでも快適になるお手伝いが出来れば幸いです。




