お子さんが突然「小学校に行きたくない」と言ったら驚きますよね。戸惑ったり、不安になるかもしれません。
この記事を見ている保護者さんは、ここ最近、もしくは今さっき、お子さんに「小学校に行きたくない」と言われたのではないでしょうか。
お子さんから「学校に行きたくない」と言われたならば、何かの反応をしたはずです。
例えば…
「そんなこと言っちゃダメ」
「それは、大変だ。無理しないで休んでいいよ」
「なに言ってるの!早く学校に行く準備をしなさい」
オロオロしていた(何も言うことができなかった)
他にも、さまざまな反応をする保護者さんがいらっしゃいます。
突然、言われることなのでびっくりするのは当たり前です。
「これからどうしよう」
「さっきの声かけは正しかったのだろうか」
などと、いろいろ考えてしまうでしょう。
私はスクールカウンセラーとして25年以上、小学生の不登校に向き合ってきました。
その経験を踏まえて、小学生のお子さんが「学校に行きたくない」といった際の対応について解説します。
子どもが「小学校に行きたくない」というのは珍しいことではない
まず、初めにお伝えしたいことがあります。
それは、お子さんが「学校に行きたくない」と言っても、珍しいことではありません。
とてもよくあることです。
「学校に行きたくない」と言われても、絶望する必要はありません。
よくあることだからこそ、いつ言われてもいいように想定しておくことも大事です。
また「学校に行きたくない」と二度と言わせないようにすることを目的にしてはいけません。
珍しいことではない理由を2つの視点から解説します。
珍しくない理由1:小学生児童の不登校は年々増加している
文部科学省のデータによると、小学校における不登校児童数は10万5112人となっています。
全児童数の1.7%にあたります。およそ59人に1人の割合です。
この人数は、すでに年間30日以上休んだ児童数です。
そのため、休み始める前に「学校に行きたくない」というお子さんは、もっと多いでしょう。
珍しくない理由、その2:大人も仕事に行きたくない
私たち大人でも、「あ~、今日は会社に行きたくないな」「朝ご飯準備するの面倒くさいな。まだ寝てたい」などと思うこともありますよね。
特に、月曜日の朝だったり、連休明けの日などは「あ~、このままのんびりしていたい」と思うのは自然な反応です。
大人が「会社に行きたくない」理由もさまざまです。
大人が「会社に行きたくない」理由
- 上司が怖い
- 仕事が疲れる
- 同僚との仲が悪い
- 吐き気がする
- 体がだるい
- 家でのんびりしていたい
- 雨が降っているから通勤が面倒くさい
- 特に理由はないけど何となく
…など
「会社に行きたくない」と思っても、多くの場合は「仕方がないから、仕事に行くか」と家を出るでしょう。
一方で「今日は無理、休む」という日があってもいいのです。
子どもだって学校に行きたくないと思うことはあります。
そして、それを口に出すのも悪いことではありません。
むしろ、家庭の中で本音を話せることはいいことです。
親の前で本音を出さずに我慢しすぎると将来に悪影響が出ることもあります。
「学校に行きたくない」と子どもが言うことは悪いことではなく、むしろ当然の反応なのです。
「小学校に行きたくない」というのは悪いことではない
このように「学校に行きたくない」ということはとても自然なことで、家で家族に言えるということは家族を信頼している証拠でもあります。
強引に「学校に行きたくない」と言わせないようにすると、子どもは弱音を吐けなくなります。
その結果、学校で無理をするだけではなく、家の中でも無理や過度の我慢をするようになってしまいます。
学校に行く・行かないよりも大事なこと
お子さんが「学校に行きたくない」と言ってきたときに大事なことは、学校に行くか行かないかではありません。
誤解を恐れずに言えば、学校に行くか行かないかなんて重要ではありません。
大事なことは、児童期のお子さんにふさわしい経験・学び・知識・発達ができるかどうかです。
学校とは、年齢にふさわしい経験・学び・知識・発達に広く対応した”場所”なのです。
したがって、小学校という”場所”に行くか行かないかではなく、お子さんにふさわしいものを「周囲が与えられるか」「本人が受け止めることができるか」が大事なのです。
このとらえ方について、こちらの記事でくわしく解説しています。
▶ 不登校のゴールは再登校ではなく子どもの自立(自律) カウンセラーが提案するGTNとは?
最初にすべきこと:まずは落ち着こう
この記事を読んでいるあなたは、お子さんに「学校に行きたくない」と言われた後かもしれません。
お子さんと「学校に行きたくない」という話題をしている最中ではない、という前提でお話をします。
まず親の動ける時間を確認する
お子さんのサポートを始める前に、まずは親自身の状況を把握することが大切です。仕事や他の家族の予定なども考慮しながら、どれだけの時間と労力を割けるか確認しましょう。
例えば、次のようなそれぞれの事情があります。
- 仕事の休みが自由にとりやすい
- 在宅勤務や専業主婦(主夫)、二世帯住宅などで常に在宅の家族がいる
- 平日休みの仕事なので、家にいる人いない日がある
- ひとり親家庭や単身赴任などで普段からワンオペ子育てでフルタイムの仕事についている
- 仕事がちょうど忙しい時期だが、来月になると休みがとりやすい
- (上記と反対に)今はかなり時間に都合がつけやすいが、もうすぐ繁忙期に入り、帰りが遅くなる
…など
このようにご家庭によって事情はさまざまです。
ご家庭の事情を無視して「こうすれば不登校は解決する」といった万能薬はありません。
それぞれの家庭に合わせた、対応を考えていく必要があります。
そのため、あなたがいま一番最初にやるべきことは、自分を含めて家族がどれだけ動けるかを確認することです。
具体的には次のようなことを考えています。
年間予定の中で現在どういう状況か
仕事の都合や学校の状況などで動き方は変わります。例えば、以下について考えてみましょう。
保護者側の見通し
- 一年間の中で今は忙しい時期か余裕がある時期か
- 今の(忙しいor余裕のある)状況はいつまで続くか
- 配偶者など、他の家族の忙しさはどうか
飲食店や小売店で働いている方にとっては、年末年始は大忙しでしょう。
年末年始はしっかり休めるけれど、2月3月は決算や人事異動の引継ぎなどで忙しい職場もあるでしょう。それぞれの職場によって繁忙期が異なりますので、ご自身だけでなくご家族の予定なども把握しておきましょう。
「余裕があるのが今だけで、来週あたりから忙しくなる」と分かれば、すぐに対応した方がいいでしょう。
友人関係でのトラブルで学校を休みがちになったAさんについて、ご両親から相談を受けました。
相談の中で「つい先日、夫に転勤の辞令が出て、来月から単身赴任」ということがわかりました。Aさんを交えてご家族で話し合った結果、単身赴任ではなく家族全員が一緒に転居することとなりました。
カウンセリングでは、転校先でのAさんの心の準備などを話し合い、転校後は元気に登校することができました。
配偶者や祖父母、兄弟姉妹など、家族全体でどのようにサポートできるか話し合いましょう。家族で協力することで、より効果的な支援ができます。
子ども側の見通し
- 学校の行事予定はこの後どうなっているか
- きょうだいの状況はどうか
- 自分以外の家族はどういう状況か
新年度当初なのか年度後半なのかによって動きも変わってきます。
例えば、2月ごろであれば、新年度のクラス替えなどで学校に協力してもらうことも可能でしょう。
5月の連休明けに学校に行けなくなったのであれば、「まずは夏休みまでをどう過ごすか」と考えていきます。
登校が難しいのであれば適応指導教室の利用なども検討することも大事です。
勉強について行けない場合など、特別支援級への措置替えなどを考えるのであれば、なるべく早く動く必要があります。
きょうだいがつられて「学校に行きたくない」と言い出すこともあります。受験を控えているきょうだいがいる場合は、受験生中心の生活になるご家庭もあります。
平日の朝はどのぐらい対応できるか
朝の準備や登校時の付き添いなど、朝の時間帯にどれだけ関われるか確認します。
平日の日中はどれだけ対応できるか
仕事の状況や在宅勤務の可能性など、日中の対応可能な時間を把握します。
平日の夜はどれだけ対応できるか
夕食後の団らんや宿題のサポートなど、夜の時間をどのように使えるか考えます。
土日祝日はどれだけ対応できるか
休日を利用して、家族で過ごす時間や外出の機会をどれだけ作れるか検討します。
これらの時間を確認することで、無理のない範囲で子供のサポート計画を立てることができます。
子ども本人への対応
落ち着いて話を聞く
お子さんが「学校に行きたくない」と言い出したら、まずは落ち着いて話を聞くことが大切です。この時、以下のポイントに気をつけましょう。
- 静かな場所を選ぶ:テレビやスマートフォンなど、気が散るものがない環境で話をします。
- 時間に余裕を持つ:急いでいるときは避け、ゆっくり話せる時間を作ります。
- 目線を合わせる:子供と同じ目線の高さで話すことで、安心感を与えられます。
- うなずきや相づちを打つ:子供の話を真剣に聞いていることを示します。
安心感を与える言葉かけ
子供に安心感を与える言葉かけは、信頼関係を築く上で重要です。以下のような言葉を使うと良いでしょう。
「話してくれてありがとう。勇気がいったよね」
「あなたの気持ちをちゃんと聞くよ」
「一緒に考えていこうね」
「あなたのペースでいいんだよ」
これらの言葉は、子供に「理解されている」「大切にされている」という感覚を与えます。
無理に学校へ行かせることの危険性
子供が学校に行きたがらない時、親は焦って無理に登校させようとしがちです。しかし、とても危険です。
- 心理的なストレスの増加:無理に登校させることで、子供の不安やストレスが高まる可能性があります。
- 身体症状の出現:ストレスから、頭痛や腹痛、吐き気などの身体症状が現れることがあります。
- 自尊心の低下:「学校に行けない自分はダメだ」という思いが強まり、自信を失うことがあります。
- 親子関係の悪化:無理強いすることで、親子の信頼関係が損なわれる可能性があります。
無理やり学校へ行かせようとすると、子どもは学校にも家庭にも居場所がなくなってしまいます。
その結果、「生きていてはいけないんだ」「消えてしまいたい」などと考えてしまう危険性があります。
子供の気持ちに寄り添う重要性
お子さんが「学校に行きたくない」と言ったとき、まず大切なのは、その気持ちを受け止めることです。
親が子供の気持ちを理解しようとする姿勢を示すことで、子供は安心感を得られます。
子供の気持ちを受け止める方法
じっくり話を聞く:急かさずに、子供のペースで話を聞きましょう。
- 共感を示す:「そう感じているんだね」など、気持ちを認める言葉をかけます。
- 非難しない:「なぜ」「どうして」といった質問は避け、子供の気持ちを否定しないようにします。
具体的な支援方法
家庭でのサポート
家庭は子供にとって最も安心できる場所です。適切なサポートを行うことで、子供の自信を取り戻し、学校復帰への準備を整えることができます。
日常生活のリズムを整える
規則正しい生活リズムを保つことは、心身の健康を維持するために重要です。以下のポイントに注意しましょう。
- 起床時間の設定:学校に行く日と同じ時間に起きるようにします。
- 食事の時間:朝・昼・晩の食事時間を決めて、栄養バランスの良い食事を取ります。
- 適度な運動:散歩や軽い運動を日課に取り入れます。
- 就寝時間の管理:十分な睡眠時間を確保し、夜更かしを避けます。
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
▶ 不登校の昼間の過ごし方はどうすればいい?スクールカウンセラーが解説
趣味や好きなことを通じた自信回復
子供が楽しみを感じられる活動を見つけ、それを通じて自信を回復させることが大切です。
- 得意なことを見つける:絵を描くこと、料理、スポーツなど、子供の興味や才能を探ります。
- 新しい挑戦:習い事や家庭菜園など、新しい経験を通じて達成感を味わえるようにします。
- 家族での活動:家族で一緒に楽しめる活動を通じて、絆を深めます。
- 成功体験の積み重ね:小さな目標を設定し、それを達成することで自信を築いていきます。
学校との連携
学校と良好な関係を保ち、情報を共有することは、子供のサポートに不可欠です。
担任の先生との情報共有
担任の先生とは定期的に連絡を取り、以下の点について情報を共有しましょう。
- 子供の家での様子:生活リズム、体調、心の状態などを伝えます。
- 学校での様子:クラスの雰囲気、友人関係、授業の進度などを確認します。
- 今後の方針:学校復帰に向けたステップや、学習のフォローアップについて相談します。
- 支援の要請:必要に応じて、別室登校や短時間登校などの配慮を依頼します。
スクールカウンセラーの活用
多くの学校には、スクールカウンセラーが配置されています。専門的な立場から子供のサポートを行ってくれます。
- カウンセリングの利用:定期的なカウンセリングを通じて、子供の心のケアを行います。
- 保護者相談:親自身の不安や悩みについても相談できます。
- 教職員との連携:カウンセラーを介して、より効果的な学校との連携が可能になります。
スクールカウンセラーに関してくわしくはこちらの記事をご覧ください。
▶ スクールカウンセラーへの相談は必要?意味ない?効果的な活用法を解説
地域の専門家への相談
状況に応じて、地域の専門家に相談することも検討しましょう。
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
▶ 不登校の相談はどこにすればいい?選び方を徹底解説
長期的な視点での対応
不登校の問題は、すぐに解決できるものではありません。長期的な視点を持って対応することが大切です。
子供の成長に合わせた柔軟な対応
子供は日々成長しています。その成長に合わせて、柔軟に対応方法を変えていく必要があります。
- 定期的な見直し:月に1回程度、現在の対応方法が適切かどうか見直します。
- 子供との対話:子供の気持ちの変化を常に確認し、対応に反映させます。
- 段階的なアプローチ:完全な学校復帰を急がず、短時間登校や別室登校など、段階を踏んで進めます。
- 新しい選択肢の検討:フリースクールや適応指導教室など、従来の学校以外の選択肢も視野に入れます。
親自身のメンタルケア
子供のサポートを続けるには、親自身の心の健康を保つことが重要です。
- 自分の時間の確保:趣味や運動など、リフレッシュできる時間を作ります。
- 睡眠と食事の管理:十分な睡眠と栄養バランスの良い食事を心がけます。
- 同じ経験をした親との交流:不登校の子を持つ親の会などに参加し、情報交換や心の支えを得ます。
- 専門家への相談:必要に応じてカウンセリングを受けるなど、自身のストレスケアを行います。
子どもの「学校に行きたくない」というメッセージをどう活かすか
焦らず、寄り添い続けることの大切さ
不登校の問題を解決するには時間がかかります。焦らずに子供に寄り添い続けることが大切です。
- 子供のペースを尊重:無理に学校に行かせようとせず、子供の気持ちに寄り添います。
- 小さな変化を褒める:少しでも前向きな変化があれば、それを認め、褒めます。
- 長期的な視点を持つ:今の状況は一時的なものであり、必ず変化することを信じます。
- 愛情を示し続ける:どんな状況でも、子供を愛し、支え続けることを言葉と行動で示します。
一人で抱え込まず、サポートを受ける勇気
不登校の問題は、親だけで解決しようとするのではなく、周囲のサポートを積極的に受けることが大切です。
- 学校との連携:担任の先生やスクールカウンセラーと定期的に情報交換します。
- 専門家の活用:必要に応じて、心理の専門家や医療機関の助言を受けます。
- 地域の支援サービス:教育支援センターやフリースクールなど、地域のリソースを活用します。
- 親の会への参加:同じ経験をしている親との交流を通じて、情報や心の支えを得ます。