子どものことを第一に考え続け、自分のことは後回しにし、周囲の理解も得られず、気づけば心身ともに限界に達している。
この記事では、公認心理師として25年以上不登校支援に携わってきた経験から、親が疲れ切った時の具体的な対処法をお伝えします。
この記事は私たちが執筆監修を行っています
執筆・編集責任:吉田克彦(合同会社ぜんと代表 公認心理師、精神保健福祉士)
・家族支援25年以上、3000家庭以上の支援実績
・スクールカウンセラー歴20年以上。小学校、中学校、高校(全日制、定時制、通信制)全ての校種で勤務経験あり。
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不登校で親が疲れるのは当然のこと

当サイトが子どもが不登校になった保護者に独自調査を実施しました。
その結果、保護者の精神的負担が「重くなった」「とても重くなった」と感じるのは合わせて85.8%に達しました。

お子さんの不登校に悩み、あなたが疲れてしまうのは当然です。
決してあなたのこれまでの対応が問題だったわけではなく、自然な反応なのです。
不登校の子どもを支えることは、想像以上に大きな心理的・身体的負担を伴うのです。


「保護者が元気でいること」が最優先
不登校支援において、最も大切なことの一つは「保護者が心身ともに健康でいること」です。
これは決して自己中心的な考えではありません。
保護者が疲弊して余裕がなくなると、無意識のうちに子どもに対してイライラをぶつけたり、焦りから無理な働きかけをしてしまいます。
その結果、子どもとの関係がさらに悪化し、状況が悪循環に陥ることがあります。
一方、保護者が心の余裕を持っていると、子どもの小さな変化に気づき、穏やかに接することがでます。
子どもも保護者の様子を敏感に察知するため、保護者が落ち着いていると子どもも安心して過ごせます。



子どもが不登校になると保護者の心労も増え、疲れるのは自然な反応です。
お子さんの気持ちを安定させるためにも、保護者の気持ちの安定が重要です。
保護者が疲れてしまう心理的な3つの理由
なぜ不登校の親は疲弊しやすいのでしょうか。
その背景にある心理的メカニズムを理解することで、対処法も見えてきます。
ここでは、大きく3つの理由をお伝えします。
疲弊する理由1:過度な責任感や罪悪感
多くの保護者、特に母親は「子どもが不登校になったのは自分の育て方が悪かったからだ」と自分を責めています。
- 「良い母親であるべき」というプレッシャー
- 周囲からの「お母さんが甘やかしたからでは?」という言葉
- 「自分がもっと○○していれば」という後悔
- 社会的な「普通」から外れることへの恐れ
不登校の原因は決して一つではありません。
学校環境、子ども本人の特性、社会的な要因など、様々な要素が複雑に絡み合っています。
保護者だけで抱え込んではいけません。


疲弊する理由2:共依存的になる(子どもとお互いに依存しあう)
◆用語解説:共依存
相手(この場合は子ども)の世話を焼くことで自分の存在意義を見出し、相手なしでは自分の価値を感じられなくなる状態のこと。
不登校になると、お子さんは教師や友人とのつながりが、自然と減ります。
一方で、家庭内で過ごす時間が増えるので、どうしてもお互いに「頼り、頼られる」関係になります。
子どもが不登校になると、多くの保護者が子どもの些細なリアクションに敏感に反応し、一喜一憂します。
一方で、子どもも保護者の機嫌の善し悪しや、ちょっとした表情の変化に敏感に反応する場合があります。不登校の期間中は多くなり、場合によっては一日中、気になることがあります。
次第に、相手(子どもは保護者/保護者は子ども)の反応ばかりを気にして生活するようになることも。
その結果、お互いが相手の機嫌な態度に振り回されてしまいます。
共依存のサイン
- 子どもの機嫌や状態で自分の一日が左右される
- 子どもから離れることに強い不安を感じる
- 子どもの問題を全て自分で解決しようとする
- 自分の感情や欲求を抑え、子ども優先で考える
- 子どもが少しでも元気になると自分も元気になり、落ち込むと自分も落ち込む
共依存の状態では、親自身が疲弊するだけでなく、子どもの自立を妨げます。
適度な距離感を保つことが、長期的には両者にとってプラスになります。
疲弊する理由3:孤独感と理解者が見つからない
不登校の親の多くが、孤立感に苦しみます。
孤立を深める要因
- 相談できる時間や余裕がない
- 周囲に相談できる人がいない
- 配偶者や身内が理解してくれず、一人で対応している
- ママ友に知られたくない、恥ずかしいという気持ち
- 学校の先生との関係がうまくいかない
- 相談したが責められた経験があり、もう話す気にならない
人間は本来、辛い時に誰かに話を聞いてもらうことで心が軽くなります。
しかし、不登校の場合「話しにくい」「どうせ理解されない」と話せず、孤立を深めます。


不登校の保護者が疲れをいやす対処法3選
保護者が疲れたままでは、子どもに対して充分な対応ができません。
子どもも保護者の顔色をうかがってしまい、「迷惑をかけている」と自己嫌悪になることもあります。
そのため、保護者のメンタルヘルスの安定がとても重要です。



お子さんのメンタルの安定のためにも、保護者の疲労の軽減がとても重要です。
ここでは、不登校の家族支援を25年以上してきた私が、多くの家庭で共通して効果が見られた対処法を3つ紹介します。
【対処法1】自分の感情を認めて吐き出す
なぜ感情を吐き出すことが大切なのか
「弱音を吐いてはいけない」「しっかりしなければ」と感情を抑え込み続けると、心はどんどん疲弊します。
また、感情を抑え込み続けた結果、ある時に爆発してしまい家族が大きなダメージを負うことがあります。
感情は「感じて、認めて、吐き出す」ことで初めて消化されます。
溜め込めば溜め込むほど、心の中で膨れ上がり、いつか爆発してしまいます。
普段から、少しずつ「ガス抜き」をすることが大事です。
具体的な実践方法
1. 一人で声に出す
家で一人になれる時間に、声に出して感情を吐き出すのは効果的です。
「もう疲れた」
「辛い」
「なんでこんなことになったの」
「誰か助けて」
どんな言葉でも構いません。
声に出すことで、抑え込んでいた感情が少しずつ解放されます。
子どもがずっと家にいて、声に出せない場合もあるでしょう。
声が出せないときは、日記などに書くだけでも効果的です。
書くことの効果
話すのが難しい場合は、書くことも有効です。
ジャーナリング(感情の書き出し)の方法:
- 紙とペンを用意する(スマホのメモでも可)
- タイマーを10分セットする
- 頭に浮かぶことを何でも書く
- 文法や論理は無視して、思いつくままに書く
- 誰にも見せないので、どんな内容でもOK
書く内容の例:
- 今日あった辛かったこと
- 子どもに対して感じている正直な気持ち
- 夫や周囲への不満
- 自分の不安や恐れ
- 「本当はこうしたい」という願望
書き終えた紙は、破って捨てても、保管しても、どちらでも構いません。
大切なのは「吐き出す」プロセスです。



SNSなどにつぶやく人もいますが、2つの理由からおすすめしません。
1点目は、フォロアーから否定的なリアクションがあったり、まったくリアクションがないなど、さらに苦しくなる場合があります。
2点目は、家族などに気づかれた時にお互いに傷つくからです。
2. 信頼できる人に話す
家族でなくても、友人でなくても構いません。話を聞いてくれる人を一人でも見つけましょう。
アドバイスを求めるよりもまずは聞いてもらうことが大事です。
ただ「そうなんですね」「大変でしたね」と聞いてもらうと、心が軽くなります。



信頼できる人が見つからない場合、ChatGPTやGeminiといった生成AIに話すのも有効です。ただ、この場合には、アドバイスをもらうのは絶対にやめましょう。
「アドバイスは不要。とにかく、私に寄り添ってねぎらってほしい」などのプロンプトがおすすめです。


信頼できる人が見つからない場合、また、家族や知人ではなくきちんと専門家に相談したい場合、ぜひ、ぜんとの初回無料相談に申し込みください。
丁寧にお話を聞くのはもちろん、具体的な解決策をご提案いたします。
3. 泣く
泣くことは弱さではありません。
涙を流すことで、ストレスホルモンが体外に排出され、実際に心が軽くなることが科学的にも証明されています。
また、お子さんのことで泣く必要はありません。
悲しい涙も嬉しい涙も、脳の「扁桃体(へんとうたい)」という感情を司る領域が刺激されて流れる点では同じです。
泣く方法
- 泣ける映画やドラマを観る
- 小説を読む
- 推しのライブ映像を観る
- 漫才や落語などお笑いを観る
- 好きな曲を聴く
【対処法2】「完璧な親」へのこだわりをやめる
「良い母親でなければ」
「常に子どものそばにいなければ」
「弱音を吐いてはいけない」
―こうした完璧主義が、あなたを追い詰めています。



完璧を目指すと「私がこれだけ必死でやっているのに」と子どもを責めてしまったり、「やっぱり私が悪いのだ」と自分を責めてしまいます。
自分を責めても子どもを責めても、問題の解決にはなりません。
リフレーミングの実践
リフレーミングとは、物事の捉え方を変えることです。
同じ状況でも、捉え方を変えると心の負担が軽くなります。
リフレーミングの例:
| 従来の考え方 | リフレーミング後 |
| 「私の育て方が悪かった」 | 「様々な要因が重なった結果。私だけの責任ではない」 |
| 「良い母親なら子どもを学校に行かせられるはず」 | 「子どもの状態を尊重することも、良い親の在り方」 |
| 「自分が休んでいる場合ではない」 | 「自分が元気でないと、子どもも不安になる」 |
| 「この子の将来はどうなるのか」 | 「今できることを一つずつやっていけばいい」 |
| 「周りに迷惑をかけている」 | 「助けを求めることは、弱さではなく強さ」 |
最初は違和感があるかもしれません。でも、自分に優しい言葉をかけ続けることで、少しずつ心が軽くなっていきます。
【対処法3】意識的に休息時間を確保する
「子どもが苦しんでいるのに、自分だけ休めない」―多くの保護者がこう感じています。
でも、保護者が倒れてしまっては子どもも元気になれません。
休むことは「逃げ」ではなく、「長く走り続けるための給油」です。
具体的な休息方法
休息といっても、何か特別なことをする必要はありません。
心が休まる休息の例:
- ゆっくりお茶を飲む(15分)
- 好きな音楽を聴く(10分)
- 散歩する(20分)
- お風呂にゆっくり浸かる(30分)
- 好きな本を読む(20分)
- ボーっとする(時間自由)
体が休まる休息の例:
- 横になる(15分)
- 昼寝をする(30分)
- ストレッチをする(10分)
- 早めに寝る
1日15分から始める自分時間
いきなり長時間の休息は難しいかもしれません。まずは1日5分の「自分だけの時間」から始めましょう。
5分の自分時間の作り方:
- 時間を決める(例:子どもが寝た後の21時〜21時15分)
- その時間は「自分だけのもの」と決める
- スマホの通知をオフにする
- 好きなことをする(何もしなくてもOK)
「たった15分」でも、毎日積み重ねることで心の余裕が生まれます。
【対処法4】夫や家族に協力を求める
なぜ協力を求められないのか
多くの母親が「夫に頼めない」「言っても理解してくれない」と感じています。
協力を求められない理由:
- 「私が母親なんだから私がやるべき」という思い込み
- 夫が忙しそうで言い出せない
- 以前頼んだ時に「甘やかすな」と言われた
- 「理解してくれないだろう」という諦め
- 自分の辛さを言葉にできない
しかし、一人で抱え込むことは、誰にとってもプラスになりません。夫も家族も、あなたが具体的に何をしてほしいのか分からないだけかもしれません。
夫への具体的な声かけ例
夫に協力を求める際は、感情的にならず、具体的に伝えることがポイントです。
× 伝わりにくい言い方:
「あなたは何もしてくれない!」
「私ばっかり大変なのに、分かってくれない」
○ 伝わりやすい言い方:
パターン1:自分の状態を伝える
「最近、本当に疲れてしまって、体調も良くないんだ。一人で抱え込みすぎていたと思う。あなたにも協力してもらえると助かるんだけど」
パターン2:具体的なお願いをする
「週に1回、日曜の午前中だけ、子どもと一緒に過ごしてもらえないかな。その間、私は少し休ませてほしい」
「夕方、子どもと30分散歩に行ってもらえると、私も夕飯の準備に集中できて助かる」
パターン3:理解を求める
「今、私はかなり限界に近い状態なんだ。あなたにも辛さを分かってほしい。一緒に考えてもらえないかな」
ポイント:
- 「私」を主語にする(「あなたが○○してくれない」ではなく「私は○○で困っている」)
- 具体的な行動を依頼する(「協力して」ではなく「○○をしてほしい」)
- 感謝の気持ちも伝える(「いつもありがとう。でも今は少し助けてほしい」)
祖父母や親戚への伝え方
祖父母世代は「昔は不登校なんてなかった」「甘やかしているからだ」と言うことがあります。これは悪意ではなく、時代背景の違いから来る理解不足です。
祖父母への伝え方:
「今の時代は、昔とは違って学校に行きづらい子どもが増えているんです。文部科学省の調査でも約30万人の子どもが不登校という状況です。○○(子どもの名前)も今、学校に行くことが難しい状態なんです」
「私たちも専門家に相談しながら、子どもに合った方法を探しています。焦らず、ゆっくり見守っていきたいと思っています」
「お父さん(お母さん)には、私たちのやり方を信じて見守ってもらえると嬉しいです」
ポイント:
- 社会的な背景を説明する
- 専門家に相談していることを伝える(安心材料)
- 批判せず、理解を求める姿勢で
【対処法5】専門家の力を借りる
カウンセリングを受けるべきタイミング
以下のような状態が2週間以上続いている場合は、専門家への相談を検討しましょう。
カウンセリングを受けるべきサイン:
- 不眠や過眠が続いている
- 食欲がない、または過食してしまう
- 何をしても楽しいと思えない
- 常に不安や焦りに襲われる
- イライラが止まらない
- 涙が止まらない、または全く泣けない
- 「消えてしまいたい」と思うことがある
これらは心の SOS サインです。放置すると、うつ病などに発展する可能性もあります。
カウンセリングのメリット:
- 誰にも話せない気持ちを安心して吐き出せる
- 専門家の視点から客観的なアドバイスがもらえる
- 自分の思考パターンに気づける
- 心の整理ができる
- 具体的な対処法を学べる
親の会・ピアサポートの活用
同じ経験をしている保護者同士のつながりも、大きな支えになります。
親の会のメリット:
- 「自分だけじゃない」と思える
- 経験談を聞ける
- 理解し合える仲間ができる
- 情報交換ができる
- 孤立感が和らぐ
親の会の探し方:
- 地域の教育委員会に問い合わせる
- NPO法人や支援団体のウェブサイトを確認
- オンラインの親の会に参加する
- フリースクールが主催する親の会に参加
最初は勇気がいるかもしれませんが、一度参加してみると「来てよかった」と感じる方がほとんどです。
医療機関受診の目安
以下の症状がある場合は、精神科・心療内科の受診を検討しましょう。
医療機関受診を考えるべき症状:
- 2週間以上、ほぼ毎日気分が落ち込んでいる
- 何にも興味が持てず、楽しめない
- 体重が大きく増減した(1ヶ月で5kg以上)
- 眠れない日が続いている(または寝すぎてしまう)
- 疲れやすく、やる気が出ない
- 自分には価値がないと思う
- 集中力が著しく低下している
- 死にたいと思うことがある
受診は恥ずかしいことでも弱いことでもありません。早めに受診することで、早期回復につながります。
やってはいけない3つのこと
疲れている時こそ、以下のような対応は避けましょう。かえって状況を悪化させる可能性があります。
無理に明るく振る舞う
「子どもの前では明るくしなければ」と無理をしていませんか。
辛い時に無理に明るく振る舞うと、感情と行動のギャップが大きくなり、余計に疲弊します。また、子どもは親の本当の気持ちを敏感に感じ取ります。無理に明るくしても、子どもは「お母さん、無理してるな」と気づき、かえって不安になることがあります。
代わりにできること:
「お母さんも今、ちょっと疲れているんだ」と正直に伝えることも大切です。完璧な親でなくていいのです。
子どもの前で自分を犠牲にし続ける
「自分のことは後回しでいい」「子どものためなら我慢できる」―こうした自己犠牲は、短期的には子どものためになるように見えますが、長期的には両者にとってマイナスです。
親が自分を犠牲にし続けると、無意識のうちに「こんなに頑張っているのに」という思いが募り、子どもに対して否定的な感情を抱きやすくなります。また、子どもも「自分のせいでお母さんが苦しんでいる」という罪悪感を抱き、さらに状況が悪化することがあります。
大切なこと:
自分を大切にする姿勢を見せることは、子どもにとっても良いモデルになります。
一人で抱え込む
「誰にも相談できない」「理解してもらえない」と孤立していませんか。
一人で抱え込むことは、疲弊を加速させます。人間は本来、辛い時に誰かに支えてもらうことで回復する生き物です。
今日からできること:
まずは誰か一人でいいので、話を聞いてくれる人を見つけましょう。専門家でなくても、友人でも、オンラインの相談窓口でも構いません。
よくある質問(FAQ)
まとめ:まずは保護者ご自身を大切にすることから
不登校の子どもを支える保護者、特に母親の多くが、深刻な疲弊状態に陥っています。
でも、それはあなたが弱いからではありません。誰でも同じ状況になれば疲れます。
この記事でお伝えした5つの対処法を、すべて完璧にやる必要はありません。
まずは一つだけ、今日からできることを始めてみてください。



完璧を目指すと「私がこれだけ必死でやっているのに」と子どもを責めてしまったり、「やっぱり私が悪いのだ」と自分を責めてしまいます。
自分を責めても子どもを責めても、問題の解決にはなりません。







