【不登校の将来】30年後から考えるGTN(学力・体力・人間関係)

今日も学校へ行かなかった。勉強もしていない。友達にも会っていない。

そんな日が続くと、「このままで将来、自立できるのだろうか」と心配になります。
学校へ行くよう声をかけるのか、今は休ませるのか。どちらを選んでも迷いが残る時があります。

学校に行けないお子さんの将来を考える時は、30年後の暮らしから今を見直してみます。

「学校に行くか、行かないか」だけではなく、学力・体力・人間関係をこれからどう育てていくか。
この3つの軸でとらえると、学校を休んでいる今にもできる支援が見つかります。

この記事では、学力・体力・人間関係を「GTN」と呼び、不登校の子どもの将来と今のかかわり方を考えます。

<吉田コメント・吹き出し>
不登校の相談では、「学校に戻れるか」に気持ちが向きやすくなります。もちろん学校に戻る選択も大切です。ただ、将来を考えるなら、登校だけでなく、その子が生活していくための力をどう育てるかも一緒に見ておきたいところです。
<ここまで>

目次

不登校のゴールを「学校へ戻る」だけにしない

再登校は、不登校支援の大切な選択肢です。本人に合う環境が整い、学校で学んだり、人と関わったりできるなら、学校を利用する意味は大きいでしょう。

学校には、授業、体育、友達や先生との関わり、行事、係活動など、子どもの成長につながる経験がまとまっています。

一方で、登校できた日を前進、休んだ日を後退と数えていると、その間に起きた変化を見落としやすくなります。

学校を休んだ日にも、自分で昼ごはんを作ったかもしれません。久しぶりに外へ出たかもしれません。「今日は無理」と家族に伝えられたかもしれません。

反対に、毎日学校へ通っていても、強いしんどさを抱えている子もいます。

将来を考える時は、登校できたかどうかに加えて、その日の生活の中で何が育っているかも見ていきます。

学校から離れると、授業を受ける、体を動かす、人と関わる、役割を持つ、進路情報に触れるといった機会が減りやすくなります。減っている部分があれば、学校以外で補える方法を探します。

そこで基準になるのが、30年後にどんな生活を送っているかです。

30年後の生活から、今必要な支援を考える

30年後には、子どもも親も30歳年を取っています。

子どもは大人になり、仕事、住む場所、人間関係など、自分の生活を選ぶ場面が増えます。親も年を重ね、今と同じ形で支え続けられるとは限りません。

明日の登校だけで考えていると、「行けた」「行けなかった」に気持ちが引っ張られます。

30年後の生活まで広げると、見たい内容が変わります。

必要な支援を使いながら、自分なりに生活できているか。仕事や家事だけでなく、楽しみや役割、人とのつながりを持てているか。

その生活につながる経験を、今の暮らしの中で少しずつ増やしていきます。

自立には、必要な時に助けを求めて支援を使う力も含まれる

ここでいう自立は、一人暮らしや経済的な独立だけを指しません。

困った時に人へ助けを求める。必要な医療や福祉を使う。自分に合わない場所から離れる。自分に合う暮らし方を選ぶ。

人の力を借りながら、自分なりの生活を続けられる力も、自立を支えます。

30年後に親が今と同じ形で支えられなくなっても、本人が必要な人や制度につながり、自分の生活を続けられる。そのために今どんな経験が必要かを考えます。

将来に必要な学力・体力・人間関係をGTNで考える

この記事では、学力をG、体力をT、人間関係をNとし、3つをまとめてGTNと呼びます。

不登校になると、家族の関心が「明日、学校へ行くか」に集まりやすくなります。GTNで見ると、登校以外の変化にも目を向けやすくなります。

たとえば、

  • 勉強は止まっているが、外には出られている
  • 外出は難しいが、好きな分野なら調べている
  • 友達とは会っていないが、家族には「嫌だ」と言えている

このように分けると、全部止まって見えた生活の中にも、残っている力や次に動かせそうな場所が見つかります。

G 教科の勉強だけでなく、読む・考える・調べる力も見る

Gの学力には、学校の教科学習に加えて、読む、書く、考える、調べる、興味を広げるといった力も含めます。

本を読む。好きな分野を調べる。動画を見てやり方を覚える。欲しい品物の値段を比べる。こうした経験も学びにつながります。

一方、希望する進路によっては、教科学習や基礎学力が必要です。今できている学びと、この先必要になる学びの両方を見ます。

勉強の話をするたびに親子でぶつかる場合は、不登校で勉強が止まっている時の関わり方から組み立て直す方法もあります。

T 睡眠・食事・活動など、生活を支える心身を見る

Tの体力には、運動だけでなく、睡眠、食事、身体活動、休息、体調への気づきなども含めます。

昼まで寝ていた日でも、夕方には少し外へ出られた。食事は取れている。疲れた時に休める。「頭が痛い」と家族に伝えられた。こうした様子も大切な情報です。

生活リズムが崩れると、朝起こす回数を増やしたくなるかもしれません。本人の状態によっては、不登校の昼夜逆転をどこから整えるかを考えた方が動きやすい場合があります。

強いだるさや痛みが続く、眠れない、食べられないなど、体の変化が大きい時は医療への相談も検討します。

N 人と関わる力に加えて、断る・離れる・助けを求める力も見る

Nの人間関係は、友達の人数だけで考えません。

家族と話す。先生に希望を伝える。店員に質問する。オンラインで趣味の合う人とやり取りする。

「嫌だ」と伝える。合わない相手から距離を取る。困った時に助けを求める。こうした力も人との関わりを支えます。

「学校は嫌だ」と言えたのであれば、自分の状態を誰かに伝えられたとも考えられます。

進路や支援先を決める場面では、子どもの意思を尊重しながら、大人が引き受ける部分も残すと、本人に決定を背負わせすぎずに済みます。

学校に行っていない一日にも、GTNにつながる経験はある

たとえば、子どもが自分で昼ごはんを作ったとします。

何を作るか決める。材料や手順を確認する。足りなければ買いに行く。作って食べる。片づける。店員や家族と話す場面もあるでしょう。

一回の料理に、考える、読む、体を動かす、人と関わるといった経験が重なっています。

毎回「今日はGとTとNができた」と評価する必要はありません。

「今日は自分で昼ごはんを作った」

それで終わる日があってもよいでしょう。

GTNで拾いたいのは、学校の外にもすでにある経験です。学校に行かなかった一日を、そのまま空白として数えずに済みます。

<吉田コメント・吹き出し>
GTNは、足りないところを採点するために使うより、「今できているところはどこだろう」と探す時に使う方が役立ちます。できているところまで課題に変えてしまうと、親子とも疲れてしまいます。
<ここまで>

学校はGTNをまとめて得やすく、学校の外にも別の方法がある

学校では、学ぶ、体を動かす、人と関わる経験を一つの場所で得やすくなります。本人に合っているなら、学校はGTNを育てやすい環境です。

学校へ行けない時期に、その全部を家庭で再現する必要はありません。

学ぶ場所には、家庭、オンライン、教育支援センターなどがあります。体を動かす機会は、散歩、買い物、地域の活動でも作れます。人との関わりは、家族、地域、支援機関、趣味のつながりにもあります。

学校へ戻るか、学校以外で過ごすかを先に決めるより、その時の本人が使える場所を組み合わせます。

文部科学省も、不登校支援を登校の結果だけで評価していない

文部科学省は2019年の通知で、不登校支援を「学校に登校する」という結果だけを目標にせず、本人が進路を主体的に捉え、社会的に自立する方向を示しています。

同じ通知では、学校教育が果たす役割の大きさにも触れています。

学校の役割を大切にしながら、登校だけで支援の成否を決めない。この方向は、GTNで将来を考える時にも参考になります。

同じ働きかけで動かない時は、別のGTNから試す

朝起こす。説得する。学校の良さを伝える。しばらく休ませる。学校の話を出さないようにする。

不登校が続く家庭では、すでにいくつもの対応を試している場合があります。
どれも、その時の状況を何とかしようとして選んだ対応です。

方法を変えても状況が動かない時は、同じ方向へ働きかける回数を増やすより、別の場所を試します。

たとえば、方法は違っていても、子どもには毎回「学校へ行ってほしい」という同じメッセージとして届いている場合があります。
そこでさらに働きかけを強めると、親子とも疲れていきます。

そんな時は、登校から少し離れたGTNを見ます。

Gなら、本人が今好きな分野を一緒に調べてみる。

Tなら、夕方に少し外へ出てみる。

Nなら、学校と関係のない話を一つ増やしてみる。

家の中のやり取りが「行く、行かない」以外にも広がると、止まっていた関係が動く場合があります。

結果として学校へ戻る子もいれば、学校以外の場所へ動く子もいます。先に行き先を決めず、生活全体の変化を見ながら次を選びます。

原因がはっきりしない場合でも、今できることを一つ増やすところから始められます。

本人だけを変えようとせず、家族のやり取りを変えて別の流れを作る方法もあります。

大きな変化を一度に狙わず、小さく試します。合わなければ戻す。別の方法へ替える。反応を見ながら調整します。

<吉田コメント・吹き出し>
「もう思いつく対応は全部やりました」と相談で伺うことがあります。よく聞いてみると、方法は変わっていても、同じ方向の働きかけが続いている場合があります。そんな時は、登校をもう一度強く促すより、別のところから動かせないかを一緒に探します。
<ここまで>

いじめ、暴力、自傷、強い体調不良など、安全や健康に関わる心配がある時は、安全確保や学校・医療への相談を優先します。

本人が動きにくい時は、動ける人から始める

本人が相談を嫌がる。部屋から出られない。何を提案しても断る。

そんな時期に、本人が動くのを待っていると、支援まで止まる場合があります。

母親がスクールカウンセラーへ相談する。父親が接し方を変える。担任が連絡の頻度や方法を変える。医療や地域の支援者に相談する。

本人以外から始められる方法もあります。

誰が動くかは固定しません。母親が疲れ切っているなら、父親や学校が動けるかもしれません。学校とのやり取りが難しいなら、別の支援者を入れた方が進みやすい場合もあります。

大人が何か提案して、「嫌」「今は無理」と返ってきたら、その反応も次を考える材料です。押し切らず、条件や方法を変えます。

安全や健康に関わる心配は、GTNより先に対応する

いじめ、暴力、自傷、強い体調不良などがある時は、安全を守る対応を優先します。

学校へ状況を伝える。医療機関へ相談する。危険な場面から離す。必要に応じて支援機関につなぐ。

強いだるさや痛みが続く。眠れない。食べられない。体の変化が大きい時は、不登校と医療機関の受診をどう考えるかも参考にしてください。

本人が話したがらなくても、命や体に関わる様子があれば、周囲の大人が動く必要があります。

3つ全部ではなく、今動いているGTNから一つ選ぶ

GTNを使う時は、最初にすでに少し動いている場所を探します。

Gなら、最近よく見ている動画や、調べている話題があるか。

Tなら、食事、睡眠、外出の中で比較的保てている部分はどこか。

Nなら、家族でもオンラインでも、安心して話せる相手がいるか。

一つ見つかれば、そこから始めます。

今うまくいっている部分は、そのまま残します。以前うまくいった方法があれば、もう一度試します。続けても動かないなら、別のやり方へ替えます。

休ませるか、少し促すかで迷う時は、不登校で「見守る」とは何を見るのかを決めておくと、待つだけになりにくくなります。

年齢や進路によって、先に考えたい部分は変わります。小学生と高校生で同じ順番にはなりません。

30年後につながる道は一つではない

今日、学校へ行けなかった。

それでも、ごはんは食べた。嫌なことを嫌と言えた。好きな分野を調べた。家族と穏やかに話せた。

学校に行かなかった一日にも、将来につながる経験はあります。

学校に戻る子もいます。別の場所で学ぶ子もいます。しばらく休んでから戻る子も、いくつかの場所を行き来しながら育つ子もいます。

再登校も、学校以外で学ぶ道も、その子の30年後につながる選択肢です。

30年後に、必要な助けを使いながら、自分なりの生活を送っている。楽しみや役割、人とのつながりもある。

その生活につながる経験を、今日の暮らしの中で少しずつ増やしていきます。

家族だけでは決めにくい時は

GTNのどこから動かすかは、子どもの状態、年齢、家庭でのやり取り、学校との関係によって変わります。

本人が相談を望まない段階では、保護者だけで状況を整理する方法もあります。

家庭で今何が起きているか。家族から動かせる部分はどこか。学校や他の支援者に頼んだ方がよい部分はどこか。状況を分けて考えると、次の一手を決めやすくなります。

ただし、保護者から伺った情報だけで、本人の状態を直接評価することはできません。医療、安全、学校との調整などを先に考えた方がよい場合もあります。

相談先そのものを迷っているなら、不登校の相談先を学校・教育機関・医療・民間支援から選ぶ考え方も参考になります。

ぜんと 家族なんでも相談室では、初回相談を無料でお受けしています。

家族の悩みを、専門家と一緒に整理しませんか?

不登校、親子関係、子どもの特性、学校との関わり方など、一人で抱え込みやすい悩みを整理します。

まずは無料で相談する

この記事は役に立ちましたか?

家族なんでも相談室 おすすめ記事はこちら

引用・参考資料

文部科学省「不登校対策(COCOLOプラン等)について」
吉田克彦『「できる」ブリーフセラピー』金子書房、2025年.
文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日

目次